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こまめな節電でお小遣い稼ぎも、「エコ電気アプリ」で目指すソフトバンクのエネルギーへの挑戦

 電力自由化にともない、さまざまな企業から電気販売へと参入した。

 2016年に開始したこの制度は従来、各地域の電力会社のみの販売に限られていた、電気の小売を全面自由化。これにより競争が活性化し、より低廉な電気料金を選べたり、新たなサービスが期待できたりといった側面がある。

 ソフトバンクの電力サービスは、ソフトバンクグループ傘下であるSBパワーが展開。主にソフトバンクの通信サービスを利用しているユーザーに向けて電気料金のサービスを提供。

 その一方、おうちでんきのほかにも、再生可能エネルギー指定の非化石証書を活用した実質的に再生可能エネルギー比率100%かつCO2排出量ゼロの「自然でんき」や非ソフトバンク回線ユーザーにもお得とする「くらしでんき」といったサービスも手がけ、新電力会社の中では家庭向けの販売電力量で2位につけている(2021年9月時点)

 また、ボルボ・カー・ジャパンと自然でんきの料金が2カ月無料になるキャンペーンやソフトバンクの基地局へ供給する電力の実質再エネ化のサポート、電力販売へ新規参入する事業者へのノウハウ提供といったサービスを実施している。

ソフトバンクの電力サービスの広がり

 ソフトバンクの電力サービスは、2015年12月に発表され、電力小売全面自由化が施行された、2016年4月からサービスを開始した。

発表時の様子(2016年)

 ソフトバンクの携帯電話サービスを利用していれば、電気料金と携帯電話料金を合算して支払えるなど、通信会社ならではのメリットがある。さらに、現在はスマートフォンやインターネットと合わせて契約することで、通信料金が割引になるといった特典も用意されている。

 2021年9月時点で契約数は200万件を突破。徐々に浸透しつつあるようだ。エナジー事業推進本部 事業開発部 部長の須永康弘氏は、東日本大震災などの経験から「エネルギーを整備できないとモバイルも含めて成り立たない」という点から取り組みが始まったと、同社のエネルギー事業の出発点を語る。

 多くの場合、電気代についての意識は「高いか、安いか」という点に限られる。「再生可能エネルギーなどに意識が高い方もいらっしゃるが、大多数は『安いのがいい』となってしまっているのでは」と現状の認識を示す。

ユーザーも事業者もお得になる仕組み?

 ソフトバンクの電力サービスが他社と決定的に違うのは、「エコ電気アプリ」の存在だ。

 ソフトバンクでは「より電気を効率よく使う」仕組みを提案。これによりユーザーはもちろん、電気代を抑えられ、サービス事業者側も無駄な発電・供給によるコストを抑えられるというメリットを生み出せる。

 そうした循環を生み出すためのアイデアがスマートフォンのアプリだった。「他社に先行して、チャレンジングなリリースだった」と語る須永氏。

 これまで、節約になるからといっても、「今、電気を使わないでください」とメッセージを出す手段もなく、さらにそれを聞き入れてもらえる可能性も薄かった。しかし、それをスマホアプリに落とし込むことで「誰もがハッピーになれる仕組み」の実現を狙う。

 果たして、エコ電気アプリはどのような利益をもたらしてくれるのか。

エコ電気アプリとは

 エコ電気アプリは、スマートフォンのアプリを通じて「節電を依頼する」という日本では初となるサービス。2021年度省エネ大賞の「製品・ビジネスモデル部門」において、最高位である経済産業大臣賞を受賞している。

 具体的には、SBパワー側で節電してほしい時間が設定される。ユーザー側はいつ節電したらいいのかを、エコ電気アプリで確認。対象の時間にエアコンの設定温度を上げたり、不要な家電のスイッチを切ったりといった操作を行う。

 季節やその日の気温などに影響され、電力需要のピーク時間帯は一定ではない。伝統的な電力会社であれば、メールで知らせるといった手段を採ってきたこともあったが、必ずしもメールが確認されているとは限らない。さらに、各家庭ごとの電力使用状況が異なるため、個々のユーザーに合わせた「この家庭には節電してほしい、この家庭はお願いしなくてもいい」といったきめ細やかな対応が可能になった。

 アプリを通じて節電のお願いが届いたユーザーは、節電に協力する意思をアプリ側で示すことで、節電に参加できる。規定の値まで電力使用量を抑えられれば、「節電チャレンジ成功」ということで、ポイントが貯まり、一定量を獲得するとPayPayギフトカードがもらえるという仕組みだ。

 ユーザーとしては、節電に参加するボタンを押しておけば、家電のスイッチを切るなどのステップがあるものの、ほとんど手間なくPayPayボーナスを獲得できるチャンスとも言えそうだ。さまざまな店舗で使える汎用性が高いPayPayと組み合わせられているのも嬉しい。

 もちろん、失敗したところでペナルティがあるわけではない。とりあえず参加ボタンを押すだけ押しておいて何もしないというのもありだし、そのまま出かけてしまってもいい。

 このように、ゲームのようなユニークなシステムを取り入れていることで、明確に目標を持ちながら電気の節約につなげられるという仕組みを作りあげている。

 須永氏は、エコ電気アプリでの仕組みについて「自分も含めて、電気料金は月に一度、どのくらい使ったかを気にする程度の方も多いのでは」と電力事業に携わる前の自らを振り返り「興味がないユーザーに振り向いてもらうにはどうしたらいいか」という視点で検討した結果だと語る。

 ちなみに、アプリ内では節電するためのヒントや日ごとの電力使用量をkwh表記で確認すると言った機能のほか、個別に電力使用量の目標を設定できる。

さらなる発展の施策も

 今後の課題としては、ユーザーの関心度の向上という須永氏。エコ電気アプリは、アプリストアでも高い評価を得ているというが、フィナンシャルやゲーム、ペイメント系と比較すると、まだまだ認知度には向上の余地が残されているという。

 「エネルギー系のアプリでもっとユーザーに『便利だね』といってもらえるところを目指したい。同業他社もこの分野に参加し始めているが、我々も負けないように次のステップへ進めていかなくては」という須永氏。

 伝統的な電力会社は、こうしたスマートフォン用アプリなどを活用している例がまだ少ない。他方で、ソフトバンクのような通信会社はスマートフォンを通じたサービスに一日の長がある。生活に密着したスマートフォンとエネルギーの掛け合わせで、日々の電気代をより身近なものにしてもらう、という戦略でさらなるサービス発展を目指す構えだ。

 「この分野を盛り上げるには、『通信事業者とエネルギーの掛け合わせ』で何ができるか。そこを突き詰めていけば、この分野を変えられると考えて頑張っていきたい」。そう語る須永氏によれば、ライバル企業の参入やエコ電気アプリを使っていたけど、離れてしまった人に向けて新たな仕掛けが用意されているという。詳細は今後発表される見込み。これからも進化していくエコ電気アプリと「ソフトバンクでんき」のチャレンジに注目したい。