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教育向け「Surface Laptop SE」は30日提供開始、ソフトとハードの両面でマイクロソフトが挑む教育ICT

 マイクロソフトは、教育分野における最新の取り組みや製品について、メディア向けに説明会を実施した。

 同社では、新しい教育用デバイスとして「Surface Laptop SE」を発表しており、11月30日から日本でも展開される。

新たな教育分野向けデバイス

 Surface Laptop SEは、教育機関向けのノートパソコン。教育用途に特化したOS「Windows 11 SE」がプリインストールされている。価格は、2万7800円~。

 オンラインやハイブリッド学習に最適なものや予算に合わせた選択肢、セキュリティ管理などが容易なデバイスがほしいという声に合わせてデザインされた。

 720p対応のWebカメラやUSB Type-C・Type-Aを備えており、バッテリー駆動時間は最大で16時間としている。修理のしやすさにも配慮されており、背面のビス7本を外すと分解できるようになっている。

 スペックに差異がある2モデルを用意。インテル製の「Celeron N4020」を備え、4GB/64GBのメモリーとストレージを備えるモデルは2万7800円。同じく「Celeron N4120」、8GB/128GBのモデルが3万6800円となっている。

教育用OSも用意

 Surface Laptop SEに搭載される「Windows 11 SE」は、教育分野に向けた機能を備えるOS。製品へのプリインストールのみで提供され、OS単体での購入はできない。

 特に小学校~中学校の生徒や教職員に向けた機能を備える。クラウドファーストなOSでスペックの低いパソコンでも快適にアプリが動作するように設計されている。学習から気が散る要素を最小限に抑えられているという。

 一方、これまで提供されてきた「Windows 10/11 Pro Education/ Education」も継続して提供される。今回発表のWindows 11 SEを初等教育用のITへ慣れ親しむ段階として、Windows 10/11 Pro Education/Educationを高校・大学に向けた製品と位置づける。

最長6年間のライセンスを新設

 新たに提供される「Microsoft 365 A1 for Devices」では、端末に紐付いた買い切り型のライセンスが適用され、最長で6年間利用できる。料金はデバイス1台につき4128円。

 GIGAスクール構想のもとで「GIGA Promo」が提供されてきたが、そのフィードバックも含めてグローバルで新しく提供されるサービスとなる。自治体などから一括前払いといった要望にも応えているとしている。

 ライセンスの中には、Microsoft Office 365 Educationに加えて、特に力を入れたというMinecraft: Education Editionも含まれる。プログラミング授業で利用したいという需要が根強かったためという。

 マイクロソフトが用意する教育向けライセンスとしては、4つ目の製品となり、無償で利用できる「Office 365 A1」から、より上位の位置付けとなる「A3」、「A5」も続けて提供される。A3とA5では、教職員がライセンスを購入することで生徒へ無償でライセンス提供ができる特典が用意される。

生徒の感情を可視化

 コミュニケーションツールの「Microsoft Teams」においても、生徒の感情のアンケートや分析といった新たな機能「リフレクト」が提供される。

 リフレクトでは、Teams for Educationのユーザーに無償で提供されるもので、生徒が今日の気分を入力することで、クラス全体から個々の生徒の感情をデータ化して可視化する。生徒への声掛けや円滑な学級運営に活用できる。

 アイコン形式で簡単に投票できるため、漢字が読めない低学年の生徒でもかんたんに利用できるという。

 民間企業においても、従業員のウェルビーイングに関心が集まる中、学校においても生徒の変化を感じ取ることを手助けする。

 加えて、音読の練習をサポートする「Reading Progress」も提供される。AIにより、読み間違いを認識しどれくらい正しく読めているかをスコア算出するもの。

 教員が忙しく、読み間違いのチェックなどが難しい場合でも、この機能を使えば教員は採点結果を確認して、生徒それぞれに最適化された指導を行えるという。

教育分野でのICT活用事例

 日本マイクロソフト 業務執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部 統括本部長の中井陽子氏は、同社の教育への取組事例を紹介。

 GIGAスクール構想で、全国の学校で新たな学習の取り組みなどを実施してきたマイクロソフト。この半年間は、学校が導入したデバイスの活用支援に注力してきたという中井氏。

 日本市場においては、まだまだ紙ベースでデジタル化が発展途上な部分があったことからMicrosoft 365で教員の「働き方改革」の必要があったという。それにより生み出された時間でもっと生徒と向き合うというサイクルはこれからも今後も必要になってくると語る。

 2021年5月に文部科学省の「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」が改定され、教務・校務ともにいつでもどこからでもアクセスできるクラウド環境の整備が求められた。

 埼玉県鴻巣市では、1台の教員用パソコンで校務・教務に対応を図った。この動きにより、生徒のICT活用も大幅に進歩したと中井氏は紹介する。加えて、大阪府堺市では、外国籍の生徒の言語障壁の解消にICTを用いている。授業の中で、Officeのリアルタイム翻訳や遠隔授業での日本語教育を行っているという。

 また、山梨県甲府市の高校でも、グループ学習にICTを取り入れたことにより、従来のように紙に調べた内容をまとめるといった準備にとられる時間が少なくなり、考えるための時間に費やすことができ、自発的な探求を深めることができたという。

 鹿児島県では、小中高12年間共通のアカウントを作成。長期的な学習ログを取得でき、小学校から高校までの学習履歴を蓄積し、分析するプラットフォームを構築した。

 中井氏によれば、新型コロナウイルスの影響により、世界中でオンライン教育のニーズが増加。Microsoft Educationのユーザーは1億5000万人以上。今までなかった教育のニーズも出現しており、それを活かして教員と生徒がつながれるプラットフォームをつくれないか、そうした開発の原動力が生まれている。