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新型コロナ禍でも学習を止めない――Google for Educationを活用する学校の今
2020年6月12日 06:00
グーグルは、同社が提供する学習ツール「Google for Education」を活用した遠隔学習における事例を発表した。
Google for Educationは、Googleが提供する教育プログラム。Chromebookは世界中の多くの教員や生徒に利用されており、米国やカナダではトップシェアという。「G Suite for Education」や「Google Classroom」では、生徒に一括でメールを送り、コミュニケーションを取ったり、宿題の提出、回収、採点などをしたりできる。新型コロナウイルスの影響による緊急事態宣言下にあっては、同社が提供する教育ツール群はオンライン授業などでも幅広く活用された。
Google for Education APAC 統括のコリン・マーソン氏によると、2020年3月初旬でツールの1つである「Google Classroom」ユーザーは世界全体で5000万人だった。ところが、3月末には1億人と2倍の伸びを見せたという。
日本でも、3月末からの全国的な教育機関の休校措置に伴い、日本の学校でもGoogle for Educationを取り入れる動きが見られた。
埼玉県立越谷南高等学校の場合
埼玉県立越谷南高等学校の勝部武氏によると、同校では生徒の主体性を重視し、自立心の養成を促進できるような教育を目標としているという。
しかし、現実的にはカリキュラムの進行などさまざまな問題が立ちふさがり、従来型の効率を重視した指導方法を取らざるを得ないという課題を抱えていたという。
Google for Educationを導入することになったきっかけは、新型コロナウイルスによる休校措置だった。もとより、教育のICT化を積極的に行っていた越谷南高校では、「Google Classroom」も迅速に導入。
5月末時点で、300以上の授業動画を配信。教員の業務も効率化されるとともに、生徒も自分のペースで学習でき、学びの姿が変わったという。
同じく埼玉県県立越谷南高等学校の教員、平原雄太氏は、同校での取り組みを次のように語る。
平原氏
「新学期とほぼ同時期が休校措置が始まり、新クラスの生徒同士が顔を合わせる機会がありませんでした。そのため、『自己紹介動画』を撮影してGoogle Classroom上にアップするという課題を生徒に与えたんです。自分の姿を撮影する生徒、スライドを用いる生徒、中にはアニメーションを活用する生徒もいました」。
また3年生に対しての進路希望調査表を行ったり、Meetを使用した個人面談なども行った。
さらに、動画を授業に取り入れる試みも実施しており、数学IIIの指導領域に含まれる「双曲線」の描き方を動画で見せたり、一人では理解の難しい課題は音声付きで動画解説したりするなど、新しい指導方法を実践している。
普段の授業では、進度の関係で難しいことも、Google Classroomを活用して取り入れられた。生徒には問題を解いたものを撮影しGoogle Classroomから提出してもらったという。
Google Formから授業でわかったこと、わからなかったことのアンケートも取ることで生徒に理解度を客観視させることにもつながっている。
関西学院千里国際中等部・高等部の場合
関西学院千里国際中等部・高等部の岡本竜平氏によると、同校では、3月の休校期間中にもオンライン学習を「Distance Learning」を実施。今学期中は現在の体制を取り入れる予定という。
同校では、「オンライン授業参観」という新たな取り組みを実施した。オンライン学習プラットフォームの「Kahoot!」や「Quizlet」などを用い、保護者も子どもの様子を見るだけではなく、授業に参加する試みで実際に反応も上々だったという。
理科担当という岡本氏。本来ならば実験などを行いたいがそれは難しい。代わりに少人数のグループを編成し、スライドを利用して絵本を作り学ぶということを思いついた。生徒同士はチャットで相談し、岡本氏は見回り、何かあったら連絡させるという生徒主体の取り組み。
動画形式でYouTubeにアップロード。絵も生徒たちが自分で書き、文章は生徒たちが実際に声に出して読むという形だ。
生徒たちからは、グループワークの授業は好印象。自分たちで絵本をつくることでより理解度が深まったという声も聞かれたという。さらに、保護者からも肯定的な評価が大多数を占めていた。
岡本氏によると同校では、理科のみならず全教科でGoogle for Educationに含まれるソリューションを活用した学習を進めている一方、生徒のスクリーンタイムが長時間になりすぎないような配慮もしているという。
生徒、保護者、学校がお互いを尊重するとともに、それぞれの学校で最適な方法を実践することが大事だと岡本氏は語った。