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ソフトバンクが第35回株主総会、2020年度の売上高や純利益は過去最高を更新
2021年6月23日 00:00
業績紹介を含むビデオの上映
冒頭ではビデオが上映され、まずはソフトバンクの2020年度の連結業績が紹介された。
1株当たりの配当金は、前期比1円増配に
2020年度の売上高は、全体で前期比7%増の5兆2055億円となり、上場以来3期連続で過去最高を更新した。セグメント別の売上高も、全事業で増収となった。
営業利益も全体で前期比6%増の9708億円となり、上場以来3期連続で過去最高を更新した。セグメント別の営業利益もすべての事業で増益となった。特に法人事業は前期比29%増と急成長を遂げ、増益の大きな要因となっている。
純利益は前期比4%増の4913億円となり、上場以来3期連続で過去最高を更新した。1株当たりの配当金は、前期比1円増配の年間86円となった。
モバイル事業を含むコンシューマ事業の実績
続いて、ソフトバンクの成長戦略を表す言葉として「Beyond Carrier」が紹介された。また、通信事業の拡大に加え、新領域を伸ばしていく2020年度のさまざまな取り組みも紹介された。
モバイル事業を含むコンシューマ事業の売上高は、契約数の伸びなどを背景として前期比3%増の2兆7704億円となり、上場以来3期連続で過去最高を更新した。
また、営業利益は前期比2%増の6586億円となり、こちらも上場以来3期連続で過去最高を更新している。
モバイル事業について
ソフトバンクは、モバイルサービスの分野で、顧客のニーズに合わせて「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO(ラインモ)」の3ブランドを提供するマルチブランド戦略を展開した。
また、これらのブランドのユーザーであれば決済サービス「PayPay」などの各種サービスをお得に使えるなど、グループ企業との連携も強化した。その結果、スマートフォンの累計契約数は前期比7%増の2593万件となっている。
「(ソフトバンクは)世界の通信事業者で最高レベルの評価を獲得」という実績が紹介された。ソフトバンクは、2022年春時点での5Gネットワークの人口カバー率90%達成を目指す。
法人事業の実績
法人事業の売上高は前期比8%増の6916億円となり、上場以来3期連続で過去最高を更新した。主な要因は、「ソリューション等」事業およびモバイル事業の成長となっている。
また、営業利益は前期比29%増の1077億円となり、こちらも上場以来3期連続で過去最高を更新した。
新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及し、IoT商材などの売上が好調だったという。ソフトバンクは2020年度に本社を港区の竹芝に移転しており、この新本社ビルをモデルケースとして、スマートビルビジネスの拡大を目指していく。
「ヤフー」事業の成長
「ヤフー」事業の売上高は、コマース事業が伸びたことにより、前期比15%増の1兆2058億円となった。また、営業利益も前期比6%増の1621億円となっている。
いわゆる「巣ごもり」需要の取り込みや、PayPayのキャンペーン連携などが功を奏し、eコマースの取扱高は前期比24%増の3.2兆円となった。
PayPayの登録ユーザー数は累計4000万人を突破
PayPayの登録ユーザー数は、サービス開始から2年8カ月で4000万人を突破した。また、同サービスにおける決済取扱高は、前期比260%の3.2兆円となっている。
宮川氏の説明
ビデオ上映の後、宮川氏は、株主に対して株主還元の方針などを説明した。
「総還元性向85%程度」の目標を継続
2021年度も1株あたり86円の配当を予定しており、減配はない。利益が上振れた場合は自社株買いも実施する。2020年度から2022年度の総還元性向85%程度という目標の達成を、引き続き目指していくとした。
携帯料金値下げの影響
MVNOや楽天モバイルの新規参入により、2021年の春に実施した携帯料金値下げの影響については、「2021年度の営業利益に対して700億円のマイナス影響」と説明した。
しかし、コスト削減の努力や新規事業などにより、2021年度は過去最高益となる見込み。
増益を見込める理由とは
宮川氏は増益を見込める理由として、「ソフトバンクはもはや『ただの通信会社ではない』から」と説明した。
これまでソフトバンクがターゲットとしてきた国内通信市場の規模は19兆円。しかし、今後は「デジタルがあらゆる市場を塗り替える」ことが予想され、「デジタルを社会実装する会社」を目指す同社のターゲットは、日本のすべての市場(1000兆円)になる。
宮川氏は「日本におけるIT投資の額は売上高の約1%とされている一方、欧米は約3.6%と言われている。日本がデジタル先進国を目指す上で、IT投資は5%が必要だと思っており、ここに大きなビジネスチャンスがあると考えている」と述べた。
ソフトバンクの強み
「ソフトバンクがデジタル市場をけん引できる理由」というテーマに対し、宮川氏が挙げたのは3つ。
まずは「圧倒的な顧客接点(ユーザータッチポイント)」として、ソフトバンクの契約数(約5500万件)やPayPayのユーザー数(約4000万人)、「LINE」のユーザー数(国内約8800万人)などが紹介された。
続いて「強力な営業力」として、約1万5000人の営業部隊や全国6000店以上の店舗ネットワークが紹介されている。
最後の「高い技術力」では、ソフトバンクの技術者が約1万人であること、そしてそのうちAI・IT技術者が占める割合の高さ(約8000人)が強調された。
「PayPay×セブン-イレブン」「LINE×ヤマト運輸」の取り組み
ソフトバンクの「企業や自治体と、個人ユーザーを結ぶ」取り組みの例が2つ紹介された。
PayPayが「セブン-イレブン」アプリに組み込まれたことにより、同アプリとPayPayの連携ユーザー数は、連携からわずか1カ月で350万人超となった。
また、ヤマト運輸の再配達をLINEで依頼できるサービスは大きな支持を受けている。ヤマト運輸のLINE公式アカウントの「友だち」登録数は大きく伸び、2021年6月14日時点で約4740万件となっている。
決議事項は3つ
今回の株主総会における決議事項は、「定款一部変更の件(第1号議案)」「取締役13名選任の件(第2号議案)」「取締役に対する報酬等の決定の件(第3号議案)」の3つ。なお、すべての議案が原案通り承認可決された。
「定款一部変更の件(第1号議案)」は、感染症拡大などの理由で、場所の定めのある株主総会の開催が適切でない場合、オンラインのみの株主総会を開催できるよう、定款第11条第2項を追加するもの。
「取締役13名選任の件(第2号議案)」では、コーポレートガバナンスの強化を図るために社外取締役を2名増員し、取締役13名を選任した。新たな取締役として、菱山玲子氏と越直美氏が紹介されている。
「取締役に対する報酬等の決定の件(第3号議案)」では、取締役の報酬に占める株式報酬の比率を高めることなどを目的として、現金報酬と株式報酬の額や内容を改定した。
質疑応答(一部)
――以前のロシアの件に引き続き、楽天モバイルへの情報漏えいが発生したが、情報セキュリティを軽視しているのではないか。セキュリティの課題や事件発生の責任について、どう考えているのか。
宮川氏
まず本件については、責任を痛感している。ソフトバンクは以前から情報セキュリティを重要な課題として認識しており、セキュリティ対策には注力してきた。
本件を受け、情報資産管理の再強化や、業務用パソコンの利用ログ監視システムの導入などにより、再発防止に取り組んでいる。セキュリティ対策には終わりがないと考えており、今後も対策を強化していく。
――スマートフォンの料金は今後どうなっていくのか。
宮川氏
携帯電話の料金は、世の中の注目度が高いトピックのひとつだと認識している。「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO」の3ブランドで、多様なニーズに対応できるプランを提供していきたい。
そして「通信」は、電気や水道、ガスに並ぶ4つ目の社会インフラとして重要度を増しつつある。特に5Gのインフラは産業基盤となり、より一層重要になっている。
そうしたことを踏まえつつ、バランスの良い最適な価格設定をしていきたいと考えている。
――今後の新型コロナウイルス対策について教えてほしい。
宮川氏
まずは事態の収束を心の底から願っている。そのためにはワクチン接種の拡大が今やるべき重要なことだと思っており、国の職域接種の声掛けにも、いの一番に手を挙げさせていただいた。
まず、ソフトバンクグループ全体の社員や家族、近隣の一般の人を含めて25万人規模で集団接種を実施すると発表した。
そして昨日から、ワクチンの職域接種を開始した。販売店などの人と接する業務、クラスターのリスクが高いとされるコールセンターなどに勤務する人を対象として、接種を開始している。
今後は、全国15カ所で25万人への接種を予定している。職域接種完了後も、構築したノウハウをフル活用し、会場を開放して多くの人に利用していただけるようにしたい。
――トヨタ自動車との共同出資会社「MONET」の事業の見通しを知りたい。
宮川氏
MONETは、都市一極集中や少子高齢化など、日本の重要課題を「MaaS(マース)」で解決するために設立された。
現在の日本の法律では、完全自動運転車が公道を走ることはできない。そのため、現在はドライバー付きの自動車で、実証実験を行っている。具体的な内容としては、移動クリニックや移動コンビニなど、自動運転社会での機能を試している最中。
そのプラットフォームはすでに完成している。今後に期待していただきたい。
――PayPayと「LINE Pay」の統合予定は。
宮川氏
国内のQR・バーコード決済については、2022年4月をめどにPayPayへ統合することを目指している。海外については、LINE Payを継続していく予定。