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キャリア決済で身に覚えの無い高額請求、国民生活センターの紛争解決委員会の報告

 国民生活センターは、国民生活センター紛争解決委員会によるADR(裁判外紛争解決手続)の実施状況および結果概要に関する、令和3年度第1回分の報告を行った。

 ADRは、柔軟な解決を図るために原則として手続きが非公開ではあるが、紛争解決委員会で扱う重要消費者紛争の背後には、同種の紛争が多数存在する可能性があるため、類似する紛争解決に繋がる指針を提示するなどの目的で、結果概要を公表している。

 令和3年度第1回分の報告には、携帯電話サービスのキャリア決済関連事案として、2件の概要が公表されている。

キャリア決済で身に覚えの無い高額請求事案

ゲームアプリで身に覚えの無い7万円のキャリア決済

 1件目(報告書中の事案16)では、申請人がキャリア決済の認証通知SMSを受信したが、これまでキャリア決済を使っておらず、認証コードも入力しなかった。しかし、後に決済サービスの利用内容を知らせるEメールで、アプリストアで1万円の決済が計7回行われたことが通知された。

 申請人が、決済に関する詳細をアプリストアに尋ねたところ、ゲームアプリの課金にキャリア決済が利用されたことが確認できたが、申請人には身に覚えが無かったため、アプリストアと警察に調査を依頼したところ、ゲームアプリのIDが不正利用されている可能性があると言われた。

 消費生活センターに相談し、不正利用であるため、ゲーム会社に対して補償の適用を求めたが、ゲーム会社からアプリストアでの利用については補償の対象外と回答された。不正利用額の7万円については、自らが利用したものではないため、返金を求めた。

 申請人がアプリストアに問い合わせたところ、第三者のアプリストアIDで不正利用にかかる購入がされたことが確認できるが、申請人が第三者に許可を与えている可能性が否定できないため、補償できないと回答された。

 ゲーム会社は、決済サービスの利用規約では、ゲーム会社のIDが不正利用された場合についてはゲーム会社が補償するが、アプリストアのIDを使った決済については、ゲーム会社による補償対象外であると規定しているため、本事案については補償の対象外で、申請人がアプリストアへ問い合わせをするべきと主張した。

 調査の結果、アプリストアより第三者のアプリストアIDの存在が確認できた旨の回答があり、問題の早期解決のためにアプリストアより申請人に全額の支払が提案された。申請人は、アプリストアからの返金を希望し、同手続きを取り下げた。

ゲームアプリで7万8000円の決済、和解不成立

 2件目(報告書中の事案17)では、自身が利用していないと主張する、キャリア決済でゲームアプリのアイテム購入決済が9回、合計7万8000円分の決済がされた。

 申請人はこれらの決済は身に覚えが無く、ゲームのアイテム購入決済が行われた日は、家族など申請人以外が申請人のスマートフォンを利用していなかったため、ゲーム会社のID不正利用であるとして、警察に届け出を行った。

 申請人がアプリストアおよびゲーム会社に不正利用として申し出を行ったが、子どもが利用しているのではないかと言われたという。

 不正利用額については、不払いが継続すると信用情報に登録される恐れがあるため、携帯電話サービスの月額料金などと共に支払をしたが、申請人が利用していない7万8000円分の返金を求めた。

 後日の調査により、申請人のゲームIDでアイテムを購入し申請人のゲームIDに同アイテムが付与されたことが確認された。ゲーム会社は、付与されたアイテムが確認できない理由として、既にアイテムが使用済みであると回答した。一方、申請人およびその家族は購入したアイテムを使用した覚えが無いと回答した。

 本事案は、和解が成立する見込みが無いと判断されたため、仲介委員によって和解手続きが終了となった。