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まずは仙台から国内展開する米国発デリバリーサービス「ドアダッシュ」、そのビジョンとは

 ソフトバンクグループが出資する米ドアダッシュ(DoorDash)は9日、仙台市を皮切りに、日本で正式にサービスを開始することを発表した。

 オンラインで開催された記者発表会には、ドアダッシュジャパン(DoorDash Japan)の代表兼カントリーマネージャー 山本竜馬氏が登壇し、今後のビジョンなどを語った。

ドアダッシュジャパン 代表兼カントリーマネージャー 山本竜馬氏

冒頭では、CEO兼共同創業者からのビデオメッセージも

 発表会の冒頭では、ドアダッシュのCEO(最高経営責任者)兼共同創業者であるトニー・シュー氏からのビデオメッセージが上映された。

ドアダッシュ CEO兼共同創業者 トニー・シュー氏

 同氏は、自身の生い立ちを振り返り、地域で行われているビジネスが幼少期の大きな支えとなったとした上で、「ドアダッシュが構築しているオンデマンドなデリバリープラットフォームは、より多くの地域ビジネスを成長させることができ、さらなる発展を促進できるものです。本日から、日本でも地域経済の成長に貢献するという私たちのミッションに挑戦できることを、非常に嬉しく思います」とコメントした。

 また、「絆(Bonding)」という言葉が日本にあることを知った同氏は、「絆エコノミー」をドアダッシュの新たなモットーにすることを明らかにした。同社は、加盟店や「ダッシャー(Dasher)」と呼ばれる配達員などと連携し、地域経済の成長に貢献していく。

非英語圏の市場への進出は、日本が初めて

 ビデオメッセージの後に山本氏が登壇し、最初にドアダッシュの沿革について説明した。

 2013年に米国でデリバリーのプラットフォームとして設立されたドアダッシュは、2015年にカナダ、2019年にオーストラリアへ進出し、グローバル展開を進めてきた。2020年には米国市場でのシェアが50%を突破し、同12月9日にはニューヨーク証券取引所にIPO(新規上場)を果たしている。

 そして今回、日本への進出が決定した。これは同社にとって、英語圏以外では初めての市場となる。

ミッションは「地域経済の成長に貢献する」

 ドアダッシュのミッションは、「地域経済の成長に貢献する」というもの。

 山本氏は、「販売者としての加盟店、買い手としての消費者、商品の運び手としての配達者、3者それぞれに大きなメリットをもたらすプラットフォームを構築し、地域経済への成長への貢献を目指す」と語った。

サービス展開は仙台市から

 続いて山本氏は、サービスの開始地域を宮城県仙台市に設定した理由について説明した。同氏は、主な理由として3つのポイントを挙げている。

 ひとつ目は、仙台市が人口100万人以上の大都市であること。

 次に挙げられたのは、デリバリー普及率の低さ。デリバリーのプラットフォームがそれほど浸透しておらず、大きな事業機会があるとした。

 最後の理由として、「『都会の顔』と『郊外の顔』のバランス」という言葉が紹介された。仙台市では都会型のマーケットと、郊外型のマーケットを同時に研究していくことが可能で、これが大きな決め手になったという。

サービス開始時の加盟店は「牛角」や「丸亀製麺」など

 ドアダッシュが仙台市でサービスを開始するにあたり、全国チェーンの飲食店や地元の飲食店が、初期加盟店として発表された。

 全国チェーンの飲食店は、「牛角」「丸亀製麺」「かっぱ寿司」「ケンタッキーフライドチキン」「ガスト」「ピザハット」など。

 地元の飲食店の例としては、「びすとろぼんてん」「DUCCA」「焼肉レストランひがしやま」などが挙げられる。

ドアダッシュならではのユニークさとは

 ドアダッシュが主なプロダクトとして展開するのは、「マーケットプレイス(Market Place)」「ストアフロント(Storefront)」の2つ。

 「マーケットプレイス」はドアダッシュのWebアプリ。山本氏は、同Webアプリに関して、「すでに世の中には同様のサービスが存在するため、より洗練されたものを作っていく」とコメントした。

 「ドアダッシュならではのユニークさ」として同氏が強調するのは、ふたつ目の「ストアフロント」。これは、加盟店の既存のWebサイトやアプリに対し、デリバリーの予約システムをドアダッシュが導入するというもの。

 「ストアフロント」は手軽に導入可能で、ブランドイメージやメニューなど、柔軟なカスタマイズにも対応する。また、注文履歴に基づく顧客データの分析もできる。同プロダクトを実際に導入した米国の加盟店では、売上が58%増加した店もあったという。

今後の展開

 山本氏は今後の展開について、「目下のところは宮城県の地域経済への貢献を最大の目標とする」とした上で、「米国のコピー&ペーストではなく、日本に合ったプロダクトをきっちり考えていく」と語った。

 さらに、配達員への交通マナー講習として、宮城県警察と協力し、「Dasher Safety Program」を6月15日に開催する見込み。

 そのほか、日本への展開が検討されているプログラムとして、加盟店向けの勉強会「Restaurant Advisory Council(RAC)」や、フードロスなどの削減を目指す地域貢献活動「Project DASH(DoorDash Acts for Sustainability and Hunger)」などが紹介された。

キャンペーンの紹介や、パンサー尾形とのトークセッションも

 最後に、サービスのローンチを記念したキャンペーンに関する紹介があった。

 キャンペーンでは、アプリ登録時から30日間、配送料が無料になる。また、最初の2回の注文に関しては、1回の注文につき25%オフ(最大1000円まで)となる。

お笑いトリオ「パンサー」の尾形貴弘も登場

質疑応答

――仙台市を皮切りに、順次エリアを拡大していく方針なのか。拡大対象として、次はどのエリアを考えているか。

山本氏
 最終的には、広範なエリアに展開したいと考えている。ただし現時点では、仙台市でのサービス展開と、そこからの学びによるサービスの改善を最優先している。拡大対象のエリアを現時点で精緻に決めているわけではないが、より多くの人にサービスを提供することを目指す上で、東京や大阪もいずれ視野に入ってくると考えている。

――「ストアフロント」は年末まで手数料無料で提供されるが、その後は他社と同じような手数料になるのか。

山本氏
 無料期間後は、何らかの形で手数料が発生する。ただ、加盟店と話をしながら手数料を決めていくという方針で考えている。

――なぜこのタイミングで日本への進出を決めたのか。

山本氏
 ドアダッシュとしては、より多くの人を自社のテクノロジーで幸せにしたいと考えている。これまでの実績と、新たな市場へ進出するためのリソースなどを踏まえて検討した結果、日本への進出が決まった。

――日本法人は、米国本社の100%子会社なのか、それとも他社との合併事業なのか。

山本氏
 現時点では、ドアダッシュの米国本社から直接マネージメントをしている。今後について、現時点で特に具体的なプランがあるわけではない。

――交通マナーの問題や、配達する料理の扱いが雑になる問題など、すでに顕在化しているギグワーカーの問題についてどう考えるか。

山本氏
 ドアダッシュは後発ゆえ、すでに顕在化している問題から学べることが大きなアドバンテージになる。サービスの初期段階から宮城県警察と連携して交通マナー講習を実施できるのは、そのひとつの成果だと考えている。

――競合他社がひしめく、ここ1~2年の市場概況についてどう思うか。

山本氏
 他国と比べると、日本におけるデリバリーサービスの普及率は依然として低い。あるデータでは、人口の50%くらいしかサービスを受けられないというデータもある。

 大都市圏だけを見ると競争が激しいように見えるかもしれないが、日本全体に視野を広げると、特に郊外を含めた地域など、ホワイトスペースは多いと考える。

――現段階での加盟店の具体的な数や、今後の目標などについて教えてほしい。

山本氏
 現段階では、公表できる数字はない。今後はフィードバックに真摯に耳を傾け、より良いサービスを作っていければと考えている。

【追記 2021/06/14 17:30】
 ソフトバンクグループとの関係を追記しました。