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クアルコム・アモン社長が5Gの取り組みをアピール【IFA2020】

5G対応Snapdragon 4シリーズや第2世代の8cxを発表

コロナ禍でIFAはイベント内容を大きく変更。現地に少数のメディアを招きつつ、オンラインでの参加も可能にした

 コロナ禍で大規模なイベントが軒並みに中止に追い込まれる中、ドイツ・ベルリンで9月3日に、世界最大規模の家電見本市IFAが開幕した。来場者や展示の数を大幅に絞りつつ、オンラインを併用する「特別編」としてイベントを続行させた格好だ。会期初日にあたる3日には、クアルコムのクリスティアーノ・アモン社長がバーチャル基調講演に登壇。5Gの広がりをアピールするとともに、同社の最新チップセットを紹介した。

基調講演には、クアルコムのアモン社長が登壇……と言っても、あくまでバーチャル参加。現地にもオンライン参加組と同じ映像が流れたとみられる

 アモン氏は、2019年9月に開催されたIFAでも、基調講演を行っている。冒頭、同氏は昨年紹介した、5G端末を開発するメーカーや、5Gを導入するキャリアの数を挙げつつ、「現実はすべて、予想を超えていた」と語る。現時点までに、すでに80のキャリアが5Gを導入しており、国や地域も40カ国に広がった。

5Gの商用サービスを開始したキャリアは、1年で80以上に広がった

 アモン氏によると、2年後の22年に、7億5000万台の5Gスマートフォンが出荷され、その1年後には接続数は10億を超えるという。アモン氏は、4Gのときより、そのペースは2年早いとしながら、「驚くべきペースでの商用化」と語る。これを支えるのがクアルコムのチップセットというわけだ。

22年には7億5000万台のスマートフォンが出荷される予想。23年には接続数が1億を超え、25年には2.8億を超える見込みだという

 5G対応デバイスの拡大に備え、クアルコムは徐々にチップセットのレンジを拡大している。昨年のIFAでは、Snapdragon 7シリーズとSnapdragon 6シリーズが5Gに対応することを発表。Xiaomiの「Mi 10 Lite 5G」など、7シリーズを搭載したスマートフォンはすでに日本でも発売されている。Snapdragon 6シリーズのミドルレンジモデルも、近々登場する可能性が高い。

 その約1年後となる本講演で発表されたのが、「5Gのグローバルな商用化を加速させる」というSnapdragon 4シリーズだ。アモン氏によると、Snapdragon 4シリーズは21年に出荷されるという。アモン氏によると、Snapdragon 4シリーズによって、約35億人のスマートフォンユーザーを抱える地域での5G対応が期待できるという。ゲストとして、OPPOの創業者兼CEOのトニー・チェン氏や、Xiaomiの創業者兼会長兼CEOのレイ・ジュン氏がメッセージを寄せており、早期の端末投入が期待できそうだ。

5G対応のSnapdragon 4シリーズが登場することが発表された
Snapdragon 4シリーズに期待を寄せる、Xiaomiのレイ・ジュン氏

 スマートフォン向けの5G対応Snapdragon 4シリーズに続き、アモン氏は7月に発表された「Snapdragon Wear 4100/4100+」を紹介。さらに、完全ワイヤレスイヤホンの音質や快適性を向上させる「Adaptive Active Noise Cancellation」を発表した。アモン氏によると、Adaptive Active Noise Cancellationは、歩行やランニング中などにイヤホンの装着位置がズレてしまった場合でも、環境に応じて動的にノイズキャンセルが調整され、一貫した体験を提供できるという。

ワイヤレスイヤホンでのノイズキャンセリング性能を向上させるAdaptive Active Noise Cancellationを披露

 5G対応のチップセットとして、PC向けの「Snapdragon 8cx」のアップデートも発表された。「Snapdragon 8cx Gen 2 5G Compute Platform」がそれで、第1世代と比べ、パフォーマンスは最大18%、バッテリー駆動時間は最大50%改善されている。クアルコムがスマートフォン向けのチップセットで培ったISP(Image Signal Processor)の「Spectra ISP」も備え、最大3200万画素のカメラをサポート。ビデオ会議などに利用する際の、画質向上が期待できる。

PC向けのSnapdragon 8cxは、第2世代のものが登場する

 5Gは、モバイル機器だけでなく、固定網の代替としても利用される。こうした用途をFWA(Fixed Wireless Access)と呼ぶが、ここでもクアルコムのチップセットが採用されるケースが多い。アモン氏によると、80以上のFWA製品に「Snapdragon X55 5G modem-RF system」が採用されているという。アモン氏は、クアルコムが「Wi-Fi 6」や「Wi-Fi Mesh」などのWi-Fi技術にも注力していることをアピール。5Gを屋外で受信しつつ、屋内はWi-Fiでカバーするといったユースケースが紹介された。

「CPE」と呼ばれる宅内用のルーターにも、クアルコムのモデムが採用されている。その数は80を超えるという

 5Gネットワークの世界では、仕様を統一し、複数ベンダーの機器やソフトウェアを組み合わせることを可能にする「オープンRAN」や、仮想化技術を活用した「vRAN」がトレンドになりつつある。クアルコムは、こうした技術にも取り組んでおり、スモールセル基地局などにも、同社のチップが採用されている。

オープンRANやvRANへの取り組みもアピールした

 アモン氏は、「当社の5G RANソリューションは、通信事業者のパブリックおよびプライベートネットワークにサービスを提供し、最新のオープンなvRANネットワークへの移行を可能にする」と述べ、代表例として、楽天モバイルや富士通、NECを紹介。富士通のモバイルシステム事業本部長 谷口正樹氏や、NEC執行役員常務の河村厚男氏が、ビデオメッセージでその取り組みの一端を解説した。

オープンRANやvRANを使った大規模な商用ネットワークを展開している国として、日本を紹介。富士通の谷口氏や、NECの河村氏がメッセージを寄せた