ニュース

楽天モバイルは「ポイントで実質無料」も視野、三木谷氏が語る楽天モバイルへの期待

 5月13日、楽天は2020年度の第1四半期決算を発表した。4月に本格サービスが始まった携帯電話事業(楽天モバイル)について、楽天代表取締役会長兼社長(楽天モバイル代表取締役会長兼CEO)の三木谷浩史氏が今後の見通しを語った。

三木谷氏

仮想ネットワークの柔軟性・拡張性に自信

 第4の携帯電話会社として参入した楽天モバイルについて、三木谷浩史氏は、同社の特徴である「完全仮想化」について、「仮想マシンを増やせばいくらでも能力をアップできる」と説明。爆発的な通信量増にも耐えられるとした。

 顧客獲得も楽天市場との連携でオンラインでも十分獲得できると説明。また投資についても効率的に実施しているとのことだが、予定よりも基地局の設置が前倒しされているとコメント。

 楽天モバイルのもうひとつの特徴として、RCSという規格に基づいた通話サービスを実現しており、「飛行機でもSMSを利用でき、メッセンジャーとしてもSMSとしても使える。これが夏以降、UCC(ユニバーサルコミュニケーション)へさらに拡張する」と説明する。

300万人獲得「予定通り」

 1年間、300万人に無料で提供する楽天モバイルだが、これまでどの程度の契約数になったのか、三木谷氏は具体的な数字は開示しなかったが、現時点について「予定通りかなと思っている」とした。

 300万人についてはもともと年末までを目標としていたとのことで、楽天モバイルそのものの認知度は高まっているものの、「300万人は1年間無料」「ローミングエリアでのサービス品質の変更」などはまだ知られていないと三木谷氏。

 5月1日には、楽天モバイルのMVNOサービスのユーザーがMNOサービスへ切り替えられるようになったが、開始初日に障害が発生した。決算会見ではそうした障害について触れることがなかった三木谷氏は「まずはプラットフォームを安定的に運用できることを確認する必要があるということで進めてきた。1カ月やってみて、安定性、拡張性、柔軟性はおそらく他社には真似できない。この事業への感触が高まっている。UN-LIMIT 2.0が2.1、3.0へとどんどんバージョンアップしていく。ますます加速させたい」と意気込みを示す。

楽天のMVNOユーザー、1年以内にMNOへ

 そのMVNOサービスからの移行については、1年以内に70%のユーザーが乗り換えるとの見通しが示された。

 三木谷氏は楽天市場のIDがあれば、ワンクリックでMNOサービスへサインアップする仕組みを開発中と説明。簡単に乗り換えられるようにすることで移行を推し進める。MVNOサービスそのものの終了時期は、ユーザーの動向を見て判断する。

 同氏は、一般ユーザーからYouTubeへ投稿された動画のなかには、楽天モバイルのMVNOとMNOの通信速度を比べたものがあると紹介。その比較によれば10倍ほどMNOのほうが速いという結果になったことを紹介し、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、「今後、オンラインが中心となる社会では優位性があると思っている」とした。

iPhoneの導入については回答せず

 質疑では、iPhoneを導入するかどうか問う声があった。

 しかし、ほかの質問への回答はあったものの、iPhone導入についての回答はなく、スルーされた格好となった。

次の課題は5Gの展開

 今後の課題として5Gが挙げられた。詳細は触れられなかったが三木谷氏は「ハードウェアについては、他社に比べものにならないくらいのコストで実現できている」と述べ、5G対応機種についてコストパフォーマンスに優れた機種の投入を示唆した。

投資フェーズの今、損失は許容

 ゼロからのスタートとなった楽天モバイルでは、自社サービスエリアの電波が届かない場所では、auのローミングサービスが利用できるようになっている。その分、楽天がKDDIへコストを支払う構造だ。

 楽天副社長執行役員CFOの廣瀬研二氏によれば、現在の楽天モバイルが顧客獲得フェーズであり、損失が出ることは許容済。設備投資については、もともとの計画が前倒しで進行しているものの、同氏は「コストはおおむねコントロールされている。償却も全体稼働が増えて少し増えていく」と語る。

 廣瀬氏は「数年で見ると、ローミングエリアをいかに縮小できるか、顧客獲得数が変数になって利益が変わってくる構造」とも述べた。

将来的にプラットフォームは海外展開へ

 世界の携帯各社と話している中で、2年間で現状まで達していることに驚かれているとアピールした三木谷氏は「ファーウェイやエリクソン、ノキアなどの使用を最小限に抑えて、全て仮想で動くネットワークを組んだ。これは、日本だけにとどめるのではなく、いかにプラットフォーム化して海外へ展開していくのか」とコメント。

 ベンダー依存の仕掛けを減らし、仮想マシン上で動作するネットワークにしてコストを抑え、なおかつ拡張性・柔軟性に特徴を持たせた。楽天モバイル自身がいわばショールームのような格好となり、海外の携帯電話事業者への売り込みを目論む。三木谷氏は、楽天モバイルのプラットフォームを、アマゾンにおけるクラウドサービスのAWSのような存在とたとえる。

 AWSとは、携帯電話サービスには基地局設置が必要という違いはある、としたものの、三木谷氏は「これをどう見るかで(楽天モバイルの事業の将来性が)変わってくる。コスト構造が圧倒的に安い。20%~30%のマイナスが今あるかもしれないが、大きな問題ではない。日本の事業者が通信分野における世界のメインプレイヤーになる可能性が出てきた」と述べ、将来、大きな果実を収穫できるという未来を描いた。

 楽天モバイルCTOのタレック・アミン氏は「我々はもうひとつのベンダーになりたいのではなくプラットフォームになりたい。次世代のオペレーションプラットフォームとして、一緒にオープンな形で作り上げたい」と説明する。

楽天カード会員と同規模が「最低限」

 楽天モバイルの契約獲得の満足度は? という感想を求められた三木谷氏は、自身の思いを述べる前に、「ゼロからスタートだったので、フルスロットルでマーケティングやるわけにはいかない。一定数に実際に使っていただいて、しっかりと問題を確認する。全国でCMも打っていない。キャンペーンも展開していない。しかしここへきて安定している。顧客獲得システムのスケーラビリティとして1日10万人20万人の申し込みがあっても大丈夫かなど確認している。第2第3のロケットがある」と楽天モバイルの状況をあらためて紹介。その上で「こんなものかなと思っている」とシンプルなコメントにまとめた。

 さらに同氏は「(楽天モバイルのユーザーは)他社のデータ量の2倍、3倍。このボリュームは他社では受けきれないのではないかと思っている。スケーラビリティという意味で大きな差別化ができていると思う」と、再び完全仮想化ネットワークをアピール。

 その上で三木谷氏は、楽天カード有効会員が1964万人、楽天証券は410万口座という既存事業の規模感を示す。同氏は「楽天カードはスタート当初、1日だいたい50件の獲得だった。今は1万前後の会員数が毎日増えている。楽天モバイルは同等のレベルが最低限実現できると思っている。出港したばかりだが、楽天モバイル丸は順調な門出になったと思う」と表現した。

 楽天モバイル代表取締役社長の山田善久氏は「Twitterで、ポジティブな内容、ニュートラルな内容、ネガティブな内容を見ている。ネガティブの比率がだいぶ下がってきた。当初の何分の一になってきた。今後より積極的なマーケティングもある。まだやらなければならないことは多いが、すべきことはできている」とした。

楽天とのサービスのシナジー、ポイントで料金充当も

 新規ユーザーの多くは楽天のほかのサービスを利用しておらず、今後の広がりに期待感を示す三木谷氏は、楽天モバイルと楽天の他のサービスとのシナジーは、楽天モバイル自身のサービスがまだ始まって1カ月程度であるため「まだ早い」と具体的な内容への言及は避けた。

 一方で期待できる内容として、楽天スーパーポイントにより、「実質的に無料で携帯電話が使える、ということが実現する」と三木谷氏。さらには楽天モバイルユーザー向けの特典も考えたいと意欲を見せた。

 そうしたシナジー効果を拡大する上で、「重要なツールがRakuten Link」(三木谷氏)だという。同氏は、「自分たちのソーシャルコミュニティに、楽天グループのサービスがうまく溶け込んでいければ効果が出せるのではないか」とした。

楽天モバイルオンラインショップ
最新機種の情報をチェック