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Google、4万5000円以下で生徒1人にPC1台の「GIGAスクール構想」を実現する「Google GIGA School Package」

 Googleは17日、文部科学省の「GIGAスクール構想」に準拠した「Google GIGA School Package」を発表した。

「Google GIGA School Package」

 Google GIGA School Packageでは、Chrome OSを搭載する「Chromebook」と、クラウド型学習プラットフォーム「G Suite for Education」、運用管理や導入を支援する研修プログラム「Kickstart Program」を提供する。G Suite for EducationとKickstart Programは無償で提供する。

 なお、GIGAスクール構想は、義務教育を受ける児童生徒に、児童生徒向けの1人1台の学習用端末の整備や、校内の通信ネットワークを一体的に整備する5年間の構想。生徒用の個人端末については、1人あたり最大4万5000円の補助金を支給し、校内ネットワーク整備については、整備費用の最大半額を補助する。初年度となる令和元年度の補正予算案には2318億円が盛り込まれた。「GIGA」はGlobal and Innovation Gateway for Allの略。

「Google GIGA School Package」の概要

 Google for Educationのグローバル ディレクターを務めるジョン・ヴァンヴァキティス(John Vamvakitis)氏は、「Google GIGA School Packageは、GIGAスクール構想の持続的な実現にぴったりのパッケージである。また、教育現場にICTを使用するという選択肢の浸透といった、教育の変革という使命を実現させたい」と語った。

Google for Education ディレクターのジョン・ヴァンヴァキティス(John Vamvakitis)氏

 ChromebookはGIGAスクール構想で示された4万5000円以下の価格で整備でき、G Suite for Educationは無償で提供。3年間の全体コストは57%も削減できるという。日本では、日本エイサー、ASUS、デル、日本HP、レノボ・ジャパン、NECの6社から、14製品が投入されている。

 Google GIGA School Packageでは、Chromebookの導入に伴い端末の一括管理コンソール「Chrome Education Upgrade」を付与。Chrome Education Upgradeは、1つの端末から同じドメインのすべてのChromebookを設定・管理するための管理コンソール。管理者はネットワーク上のすべての端末に対し、アプリやソフトウェアの管理や拡張機能の追加が容易に行え、Wi-Fi設定や承認済みユーザーへのアクセス制限など、250以上のポリシーの設定を管理できる。

 また、「G Suite for Education」を無償で提供する。Classroomを含むG Suiteのサービスを通じて、場所を問わずに共同学習や遠隔教育が可能となり、教員と児童生徒との円滑なコミュニケーションや生徒の主体的な学習を支援する。また、教員についても公務の効率化に貢献できるという。

 Kickstart Programでは、Google for Educationを導入するすべての都道府県や市町村において、パートナー企業と協力し無償で現地研修を提供する。研修ではChromebookの設定やGoogle for Educationの使い方から、授業での活用方法といった一人一台の授業に必要な教員のスキルアップにつながるコンテンツを提供する。

 同社によると、2019年4月時点で、教育現場でChromebookは全世界で4000万台が利用され、G Suite for Educationは9000万人が利用しているという。日本についても、ここ数年間で多くの学校でGoogle for Educationが利用されるようになっているという。

 スウェーデンでは「Google for Educationを通常の授業で利用した小学3年生が、全世界の児童と比べて国語と算数の成績が20%高くなったという学力テストの結果が出た」といい、Google for Educationの学習効果を示した。日本では、埼玉県や神奈川県、町田市、姫路市などでGoogle for Educationが導入されていることも紹介した。

教育現場にChromebookを整備した町田市の導入事例

町田市教育委員会 学校教育部 指導室長の金木圭一氏

 オンラインで行われた記者説明会では、教育現場にChromebookを2017年度から導入し、小中学校のICT化を推進している町田市教育委員会の事例が紹介された。

 町田市教育委員会 指導室長の金木圭一氏によると、「今年度には、町田市の小中学校全62校に対して、児童生徒用が40台、教員用に1台のChromebook環境が整った」という。学習用端末にChromebookを選択したのは、子供たちには将来キーボードが必ず必要であること、低学年の児童が使うにはタブレットを兼ねることが必要であることを挙げた。教員にも1人1台を配布することで、場所を問わずクラウド上で校務を管理でき、利用できることから教員の働き方改革にもつながるとし、HDD上に情報が残らないことから保守費用がかからない点も評価した。

 G Suite for EducationはGIGAスクール構想の実現に効果的とし、「無償で提供される学習用のクラウドプラットフォームで、時間や場所を問わず学校全体で共同利用できるツールを備える。児童生徒は一斉に共同で作業を行えるようになり、教員は習熟状況の可視化や学習履歴を生かした個別指導が可能となる」と語った。

 文部科学省初等中等教育局情報教育・外国語教育課長の高谷博樹氏は、「現状の日本の学校教育は、ICT化からかけ離れており、自治体の理解も進んでいない。整備や活用の地域間格差も現れている。OECDの調査でも、日本の子供の情報活用能力は、世界的に見ても遅れが出ており、ゲームやチャットには使っているが、学びの場には使っていないという危機感がある。そこで、政府として、大きな予算措置をしたのがGIGAスクール構想である」とした。

 また、「学習塾におけるデジタル教材の利活用の浸透についても触れ、学習塾ができるのであれば、学校教育に導入することも不可能ではない」と語った。しかし、「整備にコストがかかる」というイメージが自治体および教育現場には広がっており、これに対し、国が補助する4万5000円で十分整備できるということを知ってもらう機会を内閣官房IT総合戦略室主催で実施しているという。

文部科学省 初等中等教育局 情報教育・外国語教育課長の高谷浩樹氏
経済産業省 サービス政策課長ならびに教員産業室長の浅野大介氏