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「S.RIDE」のみんなのタクシー、ドコモやKDDIと資本業務提携
ソニーとの連携強化やJR東との連携も
2019年11月5日 17:28
「S.RIDE」とは
みんなのタクシーは、都内のタクシー会社5社(グリーンキャブ、国際自動車亜、寿交通、大和自動車交通、チェッカーキャブ)とソニー、ソニーペイメントサービスによる合弁会社。同社が提供するタクシー配車アプリ「S.RIDE」は、ワンスライドするだけでタクシーを呼び出せるシンプルさによる使い勝手の良いUI/UXを実現した。
S.RIDEの特長として、乗車前にどれだけの料金がかかるか把握できる「事前運賃確定サービス」や英what3words社との連携による、住所の代わりに3つの単語を入力するだけで目的地を設定できる機能などがある。
みんなのタクシー 代表取締役社長の西浦賢治氏によると、2019年4月のサービス開始以来、配車件数は18倍、平均利用単価が2755円と好調な実績を挙げている。
KDDI、ドコモと資本業務提携を締結
今回の、KDDIとの資本業務提携により、MaaSの普及に向けたプラットフォームの共同構築やタクシーの新たなサービスの共同開発と商用化。また、KDDIの持つビッグデータを活用した新たなビジネスの検討などを推進していくとした。
KDDI 経営戦略本部 次世代基盤整備室 室長の前田大輔氏は「車は所有から利用へ移り変わっていく」と指摘。より重要な交通手段となっていくタクシーのデジタルトランスフォーメーションを支援していくと語る。
また、ドコモとはdアカウントや、dポイントクラブの会員基盤とS.RIDEの連携による移動支援やd払いでのQRコード決済による運賃の支払いなどの協業を推進するとしている。加えて、モバイル空間統計による配車の需要予測などを用いて、売上の向上や、ユーザーの待ち時間の削減を目指す。
NTTドコモ 法人ビジネス本部 コネクテッドカービジネス推進室長の深井秀一氏はドメスティック企業のドコモとしての社会課題解決の重要性を強調。モビリティの課題解決は喫緊の課題とした。深井氏は「このような連携を通じて、わくわくする世界をつくっていく」と語る。
このほか、ゼンリンデータコムと帝都自動車交通との連携によりタクシー走行データを活用した3Dリアルタイムマッピングでの可視化とデータベース化による利活用を目的としたR&Dを推し進めていく。
西浦氏は、今回のKDDIとドコモとの連携について「両社ともに数千万人規模の顧客を抱えており、顧客データをベースにS.RIDEの集客につなげられる。みんなのタクシーとして大きな期待をもっている」とした。
ソニーのセンサーやAIを用いた取り組みも
ソニーとの連携強化により、5日から大和自動車交通のタクシーに備えられているドライバー用タブレットにソニーのAI技術が搭載された需要予測アプリを導入した。ほかの4社が保有する車両についても順次導入される。
タクシー車両から取得したデータとエリア特性や天気など外部情報をもとにソニーの機械学習で分析し、10分後~半日先のタクシー需要を予測する。
これにより、単なる需要予測ではなく、乗車地点予測、長時間乗車率、空車動態表示、ほかのエリアへ向かう際に需要が高いスポットを通過するおすすめルート表示、電車の運行情報やイベントの終了情報などを基にした特需発生表示などの機能を搭載する。需要がある場所は通常のナビ画面にヒートマップ式で表示される。
これにより、ドライバーの熟練度に関わらず効率的な営業が可能とした。
また、もうひとつの取り組みとして、安全への施策が紹介された。タクシー車両に用いられる車両にソニーが開発したLiDARを含むセンサーを8つ搭載。センシングデータの収集や運転操作記録を収集、解析し危険予測データベースを構築する。また今後、安心・安全スコアの算出、熟練ドライバーとの差分評価やドライバーへの警告や注意喚起を行う安全運転支援ツールを実際のタクシーへ搭載して検証を行うとした。
ソニー 執行役員 AIロボティクスビジネス担当の川西泉氏によると、AIやセンシングなどを用いたモビリティへの取り組みを「Future Mobility Project」として推し進めていくとした。データ分析や画像認識などの機械学習、センシング技術などソニーの技術を用いて、移動の効率化や安心安全快適につながるサービス構築を目指すという。
JR東日本の「Ringo Pass」と連携
JR東日本が構築する交通系スマートフォンアプリ「Ringo Pass(リンゴパス)」とS.RIDEの連携も発表された。国際自動車、大和自動車交通、チェッカーキャブの9000台の後部座席タブレットを用いて2019年度中に対応予定という。
タクシー乗車時にQRコードを読み込むことでRingo Passでの決済が予約される。目的地到着時には、ドライバー側の操作で決済が完了するため、現金やカードが不要で、スムーズに降車できる。
JR東日本 執行役員 技術イノベーション推進本部 統括の得永諭一郎氏は同社がかかげるグループ戦略「変革 2027」に触れ、出発地から最寄りの駅や目的駅から目的地までの二次交通三次交通の検索や決済などの構築を目指していることを紹介。
一部地域を除いて二次交通を持たないJR東日本は、さまざまな輸送サービス企業や自動車メーカー、決済サービス企業との連携により、ストレスフリーな移動の実現を目指していると語った。
西浦氏は「今日が新しい第一歩を踏み出した日。パートナーの持つ資産やノウハウを通じ、事業の幅を拡大していく。我々が掲げる移動交通の最適化を標榜しており、こういった連携より今後、具現化していく」とした。