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「趣味はPokémon GO」と胸を張って言えるサービスにしたい――ナイアンティック村井氏とスポーツ庁の鈴木長官が対談
2019年7月30日 14:34
ナイアンティックとポケモンのスマートフォンゲーム「Pokémon GO」が、スポーツ庁「Sport in life」プロジェクトの認定第1号となった。
Sport in lifeは、ライフスタイルの一部としてスポーツを取り入れることを奨励するもので、プロジェクトの趣旨に沿った取り組みに対してロゴマークを付与する。
今回の認定を受けて、ナイアンティック日本法人の村井説人社長がスポーツ庁の鈴木大地長官を訪ね、対談の場が設けられた。
総歩行距離は230億km、幅広い層がプレイ
村井氏
今回はこのような素晴らしい認定をいただき、誇りに思います。今日は我々の活動を少し紹介させていただきたいのですが、まず、長官はPokémon GOなど我々のゲームをプレイされたことはありますか?
鈴木氏
実は今日インストールしたんです(笑)。なんとなく入りづらいところがあったんですけれども、今日を機にこれでガンガン歩きたいという気持ちになりました。
村井氏
我々が「Sport in life」の取り組みにご一緒させていただくことで、(スポーツに対して)入りづらいと思ってしまうハードルを下げていけるのではないかと思っています。
ナイアンティックには“Adventures on foot with others”というスローガンがあり、これは「ともに歩き、冒険に出よう」という我々の会社のミッションです。
鈴木氏
素晴らしいミッションですね。
村井氏
Pokémon GOだけでなく、「Ingress」や「ハリー・ポッター:魔法同盟」もすべて、同じミッションの中で作られています。ナイアンティックのプロダクトには2つの大きな特徴があります。ひとつは、外に出て自分から動き出さないとゲームが進行しないことです。
もうひとつは、とても幅広い層の方がこれを使って歩き始めているということ。子供だけでなくお父さんとお母さん、おじいちゃんおばあちゃんまで含めた3世代で遊んでいただけています。我々が提供している3つのゲームのユーザーが歩いた距離を足すと、およそ230億kmになります。
鈴木氏
230億km! 地球何周分でしょうね、月まで何往復……。
村井氏
太陽から冥王星までが約50億kmなので、2往復分以上も歩かれています。ナイアンティックのゲームで一歩でも家から外に出てもらう、太陽の光を浴びてもらう、風を感じてもらう。そして、自分が住んでいる場所の素晴らしさをもう一度思い返していただく。そういう思いで作ってきた結果がこれだけ大きな数字になりました。
230億kmという距離を考えると、(ユーザー1人あたりの歩数も)スポーツ庁が推奨する1日8000歩という目標歩数を大きく超えているのではないでしょうか。
まずは1歩外に出てもらう。交流・商流も生み出す
鈴木氏
ナイアンティックのみなさんにとっても、ここまで歩いてもらえるというのは予想外でしたか。
村井氏
まずは1歩踏み出してもらうことを目標にしつつ、1歩が2歩になり、10歩になり、100歩になり……という期待はしていました。外に出ることで、太陽を浴びる、風を感じるといったことだけではなく「交流」が生まれます。ゲームを通じてコミュニケーションができるような土台も提供しています。
外に出て色々なことに気付いて、交流が生まれると、今度は「商流」ができるんですね。毎日たくさん歩くと靴が減るので新しい靴を買う。最近は暑いのでジュースを買う、歩けばお腹が空くので食事をする。我々のサービスに直接お金が落ちてくるわけではないのですが、地域経済だとか観光だとか、さまざまなものに影響を与えることができます。
我々は自治体ともさまざまな取り組みをしています。たとえば横浜のイベントでは200万人ものプレイヤーが集まりました。鳥取砂丘では100万人。ゲームをきっかけに県をまたいで、国をまたいで色々な人と交流しながら色々なことを感じられる、これが特徴です。
鈴木氏
ゲームというと部屋にこもってしまうようなイメージ、先入観としてはスポーツとは真逆のように感じていました。IOCでも「画面がスポーツの機会を奪っている」なんて言う人もいるんですよ。ナイアンティックさんの取り組みを知ってゲームの幅広さ、多様性のようなものを感じましたし、1歩でも歩いてもらう、外に出てもらうというのは、我々としてもこれこそがスポーツの第一歩だと思っています。
スポーツと通じる部分、誇れる趣味に
村井氏
我々は、このようなゲームを「リアルワールドゲーム」と呼んでいます。ちょっとお聞きしたいのですが、長官のご趣味はなんですか。
鈴木氏
色々あるのですが、趣味と実益を兼ねてジョギングです。
村井氏
たとえばジョギングが趣味と言うと、きっと「ジョギングですか。いい趣味をお持ちですね」となると思う。でも、私が「趣味はPokémon GOです」と言うと、みなさん僕のことをゲーマーだと思ってしまうんですよ。我々が提供しているものがゲームという括りで捉えられてしまうことのは残念なことだと思っています。
実際には我々がやっていることはスポーツと通じる部分があって、歩くことがメイン。歩くことを楽しむためにゲーム性を付加しているのです。ゲームを遂行する結果として、健康にもなっていく。
私のチャレンジは、プレイヤーのみなさんに「私の趣味はPokémon GOです」と胸を張って言っていただけるようにしていくこと。その上で、今回認定していただいた「Sport in life」は我々にとってとても価値のあるものです。
鈴木氏
競技としてのスポーツはストイックな世界ですが、スポーツも元は遊びから始まったものです。今は、若者に受け入れてもらうためにはどうしたらいいか、エンターテインメント性が必要なんじゃないかといった議論もあります。まさにそういった、楽しく体を動かす、楽しいから体を動かしてしまうという世界をみなさんの業界と取り組むことは非常に重要だと考えています。
村井氏
我々もご一緒できることを楽しみにしています。一緒にこういった世界をさらに盛り上げられたらと私たちも思っています。