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アプリのアクティビティや位置履歴の自動削除、Google Mapsにシークレットモード追加――グーグルのチーフプライバシーオフィサーが語る新たな取り組み

 5月7日~9日に開催された米グーグルの開発者向けイベント「Google I/O」では、新たなハードウェアの発表とともに、プライバシーに関わる新機能や取り組みもいくつか案内された。今回、来日中の米グーグル チーフプライバシーオフィサー(CPO)のキース・エンライト(Keigh Enright)氏に、新機能の狙いや、その背景を聞いた。

キース・エンライト氏

利用履歴を自動削除

 5月から取り入れられた新機能のひとつは、WebブラウジングやAndroidデバイスでのアプリの利用履歴で、その保存期間を3カ月、あるいは18カ月のどちらかで選べるようになったこと。

 これまでは、履歴を消す場合、手動で操作する必要があった。しかし新機能により、一定期間後、自動削除される形となった。この自動削除設定は、6月からロケーション(位置)履歴にも適用されるようになる。

 エンライト氏は「ユーザーが決め、コントロールすべきものであり、今回、自動的に削除できる設定を選べるようにした」と解説する。こうした取り組みは、今後、グーグルの他のサービスや製品にも拡げていく方針だという。

Googleマップにシークレットモード

 10年以上にわたり、Webブラウザの「Chrome」で提供されているシークレットモード(英語ではIncognitoモード)。Chromeだけには留まらず、およそ1年前、YouTubeにも取り入れられた。

 シークレットモードで利用すると、デバイス側では利用履歴が記録されずCookieも保存されない。たとえば1つのデバイスを他の人と共用する場合などで活用すると、他の人に自分の利用したコンテンツを知られずに済む。「漏れないことが魅力」(エンライト氏)とユーザーから根強く支持されてきた機能だ。

 今回、グーグルでは、シークレットモードをGoogleマップと検索アプリへ近日中に導入すると発表。たとえばGoogleマップでは、シークレットモードを使うと、検索した場所、目的地までのルートといった履歴がGoogleアカウントに保存されない。

機械学習の進展にあわせたプライバシーの保護を

 エンライト氏がグーグルでCPO職に就いて2年ほどになる中、グーグルでは矢継ぎ早にユーザーの個人的なデータをいかに保護するかという活動に取り組んでいる。

 たとえば、フェデレーションラーニングと呼ばれる機械学習の手法もそのひとつ。端末にダウンロードされた機械学習モデル(AI)は、ユーザーがスマートフォンを使った際にフィードバックを得てトレーニングする。その改善点を抽出した情報がクラウドへ送られる。

 そうした改善情報は、多くのスマートフォンから寄せられ、機械学習モデルを改善していくことになる。既にAndroid版の「Gboard」で試験的に持ちいられており、新たなネット用語が発生した際にはこれまでよりスピーディに予測変換の候補として表示できるようにしている。

フェデレーションラーニングの概念図

 フェデレーションラーニングは、一見するとプライバシーに関わらないように思えるかもしれない。しかし実は、フェデレーションラーニングでは、ユーザー個人にに関わる情報(トレーニングデータ)はデバイス内で保存され、クラウドには送られない。

 これはプライバシー保護に懸念を持つユーザーを納得させる仕組みでもある。エンライト氏は「プライバシーはトップコミットメントで、ユーザーから信頼を勝ち得る際に重要」と指摘する。

プライバシー保護は今や最優先課題

 検索エンジンからスタートしたグーグルは、今やありとあらゆる場面で、さまざまなサービスが提供され、その存在感を発揮している。裏返せば、個人情報がどう扱われているのか、と常にユーザーから懸念を抱かれる状況にある。

 エンライト氏は、日本メディアに対して、「プライバシー保護は、贅沢品であってはならず、誰にも提供されるものであるべき」「現在のグーグルにとってプライバシー保護は最優先課題と社内でも徹底されている」「グーグルだけのメリットを追求し、ユーザーの信頼を裏切る、あるいは失うのは失敗になる」などと説明。グーグルが、ユーザーのプライバシーの保護に対して、強くコミットしている姿勢を印象づける。

 一方、同社が手がけてきたSNS「Google+」ではユーザー情報が、サードパーティからアクセスできる状態になっていた。これを受けて、Google+は3月待つで閉鎖されたが、エンライト氏は「ソフトウェアにバグがあったが、そのバグについての情報を幅広く提供するだけではユーザーにはメリットがなく、プライバシーを保護するためのステップにはならないと考えた」と説明。今後、そうした脆弱性や不具合が発見された際にはどうユーザーへ届けるか、引き続き検討中とのことだが、「常にユーザーにとって正しいことをしたい、という意思は変わらない」と語っていた。

Googleアカウントのプライバシー設定へすぐアクセスできるような仕様変更も