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ドコモの主張は「端末割引は3万円まで」 総務省有識者会合で議論

 5月30日、携帯電話の完全分離プランの義務化に向けて、より詳細なルールを決めるための有識者会合が開催された。

 これは、さきごろ改正された電気通信事業法の実施に向け、実務へ直接影響する省令の制定に向けた取り組み。今回は携帯大手およびMVNOから意見を聴取する場となった。

 論点がいくつかあるなかで、特にユーザーにとって関心を呼びそうな点は「端末割引の上限」と、いわゆる縛り(期間拘束)の中途解約時の解約金についての議論だ。

座長の新美育文教授(明治大学 法学部)

ドコモ、「端末割引の上限は3万円に」

 NTTドコモ経営企画部長の丸山 誠治氏は、6月からスタートする「ギガホ」「ギガライト」の紹介からスタート。問い合わせの数などから、「分離モデルに基づく設計。大きな手応えを感じている」と自信を見せる。

 分離プランでは、端末代金が定価になり、従来よりも高くなる可能性が指摘されている。丸山氏は「我々にできる努力」として、端末販売の利益を減らしていると説明。今後もそうした取り組みや、メーカー側の努力で端末価格を安くできるようにするべき、と主張する。

 分離プランが浸透する効果のひとつに、ユーザーは携帯電話会社を乗り換えやすくなるといった点も期待されている。

 しかし丸山氏は、「現実としては通信回線と端末をセットで購入する人が多く、期間拘束(縛り)がなくとも使い続ける人が多いのでは?」と推測。そのため、端末割引競争に走り、通信料金が下がらないのでは? との危惧を示す。

 そこでドコモが提案するのは、キャリアによる端末代金への割引額に「上限を設ける」というもの。ユーザーから得られる利益の範囲内で割り引くという考え方で、具体的な上限額として 3万円程度 という数字を示す。

 一定の割合ではなく絶対額にする理由として、ドコモでは高額な端末になると補助額が多額になるなど、機種ごとの違いが発生してわかりづらくなるためと解説した。

大きな反動を防ぐため駆け込み需要の抑制なども
既存ユーザーに関するアイデアも

KDDI「ある程度の割引は必要」

 KDDIの古賀 靖広氏は、これから5G時代を迎えることを踏まえて、「5G端末をより早く利用してもらえることが重要では?」と指摘する。

 現行のガイドラインを省令化するアイデアに賛意を示しつつ「ユーザー間の不公平感が生じない程度で、ある程度の端末割引は必要ではないか」と語る。

 分離プラン自体は維持しつつ、通信キャリア間の競争も促せることが重要であり、「バランスを取りやすい、柔軟な運用ができる制度」(古賀氏)を求めた。具体的なアイデアを問われると、割引の上限が一定の金額で固定されてしまうと、今後の5G時代や市場環境が変化する場合に対応できない可能性をデメリットとして指摘した。

 また禁止される「行きすぎた囲い込み」の具体的な取り組みである、中途解約時の違約金(現在は9500円/税抜)の水準はどうあるべきか、と投げかける。

 いわゆる期間拘束型の契約は、中途解約する際に違約金が発生することがデメリットとされる。しかし、その分、料金の割引というメリットもある。

 長期間の利用に同意することで割引が適用される、という事例は、携帯電話に限らず、他のサービスでも一般的な商慣習として根付いている。違約金そのものの存在の妥当性を主張しつつ、その水準がいくらであるべきか、今後の有識者による議論を求める形となった。

ソフトバンクは「抜け道」の対策求める

 ソフトバンクの松井 敏彦氏は「法規制の対象はスマートフォンだけにしてほしい。フィーチャーフォンやルーターは対象外にしてほしい」と語る。また法人契約について、ドコモとともに相対契約のため、対象外にすべきと指摘する。

 端末割引については3つの案を示した松井氏は「当社としてはどの案が良いと決めていないが、解釈の幅が少ない明確な基準にして欲しい」と要望。

3つの案

 さらに割引などの利益提供で、抜け道が生まれる可能性についても対策を施すべき、と指摘。たとえば通信回線(SIMカード単体)だけを先に契約し、別店舗で端末を購入する、といった形は、回線と端末を別々(分離)で手にすることになる。しかしこういった場合でも、端末購入の割引上限と同じ金額で制限すべき、と松井氏は語る。

抜け道対策を訴えた

MVNO側は「割引は景品表示法にあわせる」

 端末割引について、テレコムサービス協会のMVNO委員会およびIIJは、景品表示法の総付景品の割合と同じ20%をひとつの基準として、割引(利益提供)を認めるという考え方はどうか、と提案する。

 その理由として、IIJの島上純一氏は、一律に禁止されると流動性が制限され、大手キャリアが有利になると指摘する。

 また、MVNOは自動更新を提供していないが、それでも音声通話SIMプランは、6カ月~12カ月の最低利用期間と中途解約時の解約金が設定されている。これも他社が行きすぎた割引を提供することが原因と島上氏。

 「これは根源的な課題であり、行きすぎた割引が解消されれば、MVNOの多くが最低利用期間を撤廃するのではないか」と語った。

楽天モバイル大尾嘉氏

 楽天モバイルの大尾嘉 宏人氏は、かつて携帯電話業界で横行した高額なキャッシュバック、端末の0円販売をあらためて批判。

 そこで省令案には、「端末販売時の通信回線契約を条件とすることを禁止」「SIMロックの設定禁止など」「端末割引は上限を金額を定める」「MNP手数料の撤廃」「違約金の禁止」といったアイデアを出す。

 さらに縛りを減らすことができれば、店頭での重要事項説明に必要な時間も減ることから、店頭での待ち時間も大幅に圧縮できるとアピールした。

UQは固定/モバイルのルーターの扱いに言及

 UQコミュニケーションズは、モバイルブロードバンドを手がける事業者として、モバイル回線対応のルーターに関して意見を出す。

 これは、モバイル回線を利用しつつも、自宅向けに使われるWi-Fiルーターと、持ち運ぶモバイルWi-Fiルーターを違うものとして扱わず、規制する/しない、どちらであっても、同じ扱いを求めるもの。

 これは、モバイルルーターであっても、コンセントに繋ぐ宅内向けルーターと同じ使い方ができるためで、たとえば宅内向けルーターのみ規制の対象外、といった状況にならないよう求めた。