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設備更新なしで導入可能、ドコモが工場向けIoTサービスを開始

 NTTドコモは、工場の製造ラインの稼働状況をリアルタイムに可視化するサービス「docomo IoT製造ライン分析」の提供を開始した。

 同サービスは、製造機械を入れ換えなくても導入できることが特徴。加速度センサーを機械に取り付け、振動を計測することで稼働データの分析と可視化を行う。中小製造業における人手不足、付加価値の創出といった課題を、ICTを活用して解決することをコンセプトとしている。

 同社IoTビジネス部 ソリューション営業推進担当部長の仲田正一氏は、サービスの提供に至った背景として、製造業の人手不足が深刻化し、効率を高めるためにデジタル技術の活用の必要性が高まっていると説明。その一方で、中小企業に限るとIoTソリューションなどのデジタル活用率はおよそ10%に留まっているという。

 ドコモでは、その主な理由を「導入にあたって設備投資の負担が大きいこと」「AI/IoT人材が社内にいないこと」「投資対効果が分かりにくいこと」の3点と分析。

 今回発表された「IoT製造ライン分析」では、先述のように設備更新なしで導入できるシステムとすることで導入コストを抑えたほか、コンサルタントによる分析データをもとにした課題特定・改善提案サービスも2019年夏頃からオプションとして提供。デジタル人材がいない企業でもデータの収集、分析から改善提案までの一連のサービスをワンストップで利用できる。

アームの先端に加速度センサーが取り付けられている
IoTゲートウェイ

 「IoT製造ライン分析」では、3cm四方、重さ約10gの小型センサーを既存の製造機械に取り付けて振動を計測する。機械の稼働率だけではなく、振動パターンを基にした機械学習により、製品を1つ作るのにかかる時間や生産量も管理できる。

 センサーは電池駆動で通信も無線のため、配線不要で設置できる。センサーで取得した情報はIoTゲートウェイを経由して、LTE通信でクラウドに集約される。

 導入コストの目安としては、センサーを5個設置した場合の初期費用が25万円、月額利用料が3万円。別途、IoTプランの回線契約が必要となる。

銀行経由で導入を推進、2023年度までに3000社目標

 NTTドコモは昨年11月、横浜銀行、京浜急行電鉄と「三浦半島地域の経済活性化に向けた連携と協力に関する協定」を締結した。同協定に基づくビジネスマッチングによるユーザー第1号として、漢方薬などを製造する大草薬品(神奈川県横須賀市)への導入が決定している。

 大草薬品では既に試験導入が行われており、同社代表取締役社長の大草貴之氏は、「定量的なデータが分析結果として出てくることで、現場の担当者と生産性改善のための具体的な議論ができた」と効果を語った。

 ドコモでは、今後も地方銀行の営業基盤を活用して「IoT製造ライン分析」の導入企業を開拓していく計画。2023年度までに15行と連携、3000社への導入を目指す。