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ドコモとAGCが既存の窓を基地局に、ガラスアンテナ開発で提携

 NTTドコモとAGCは、既存している窓ガラスの内側から貼り付けでき、基地局として利用可能なガラスアンテナを共同開発した。2社はガラスアンテナを活用し、2019年春よりサービスエリアの拡充をする。

ガラスアンテナ

ビルの窓に設置して、都市部の回線混雑を改善

 2社が開発したガラスアンテナは、建物内の窓に貼り付けて、屋外のサービスエリアをカバーするもの。アンテナは、透明、透視性のある導電材料とガラスを組み合わせており、窓に設置しても景観を損なうことがない。なお、無線装置は天井裏に設置され、ガラスアンテナとは天井や窓枠を這わせたケーブルで接続される。

 通信が集中する都市部に向けて開発されたもので、通常の基地局エリア内に設置し、小さいエリアをカバーすることで通信速度などを改善する「スモールセル基地局」の役割を果たす。スモールセル基地局は小さいエリアをカバーするため、建物の屋上ではなく、中~低層階に設置が必要だが、これまでのものは建物の屋内外において景観を損ない、設置が困難だったという。

 基本的には屋外のエリア化に向けてのアンテナだが、技術的には屋内にも使えるとしており、将来的に検討される。

 なお、9月に実証実験をしており、スモールセル基地局としての性能を十分に満たしているという。今後は、5Gに対応したガラスアンテナを検討し、エリア構築にも活用される。

 ガラスアンテナ設置基地局の方式は、TDD-LTEで、周波数は3.5GHz(バンド42)に対応する。帯域幅は40MHzで、最大スループットは588Mbps。4×4MIMOに対応し、下り変調方式は256QAM。大きさは700×210mmで、重さは本体のみで約1.9kgとなる。

AGCの後付けガラス技術を応用、電波の減退なども対策済

 ガラスアンテナを取り付けるにあたっては、AGCの既存窓の内側にガラスを貼り付ける「アトッチ工法」というものが活用されている。これまでは、アトッチ工法により、断熱性や防音性などを高めるガラスが後付けで施工されてきた。内側から貼り付けることで羽目殺し窓にも対応でき、設置にあたって大規模な工事が必要ないという。

アトッチ工法

 内側にアンテナを取り付けると、電波は窓ガラスを通過する際に減退や反射されてしまうが、今回開発されたガラスアンテナでは、Glass Interface Layer(GIL)という技術により減退や反射が抑えられているという。既存窓の種類に合わせて、GILが用意されており、選択が可能となる。

 また、日射などで窓ガラスに温度差ができ、ガラスが割れてしまう「熱割れ」に関しても、低減する構造の採用や、事前にシミュレーションすることで対策をしているという。

5Gへの応用や、他キャリアへの提供は

AGC ビルディング・産業ガラスカンパニー アジア事業本部長の武田雅宏氏

 AGC ビルディング・産業ガラスカンパニー アジア事業本部長の武田雅宏氏は、「ガラスというのは建物の顔であり、街の顔であり一等地にある。そのようないい場所を使った貢献は大変重要なこと」と語り、ガラスにサービスやメンテナンスを含め、付加価値をつけていきたいと説明した。

 他のキャリアへの提供については、今後ドコモと打ち合わせの上、了解を得たうえでこの技術を広く使っていきたいとした。

NTTドコモ 無線アクセスネットワーク部長の小林宏氏

 NTTドコモ 無線アクセスネットワーク部長の小林宏氏は、ガラスアンテナはドコモ単独では開発できず、ガラスとアンテナの両方のノウハウがあるAGC側から声掛けがあったことを明かした。また、設置目標については「設置するビルの管理者との交渉にもよる。都市部は窓が多いためエリア化を検討していく」と説明した。

 5Gへ応用する可能性については、「まだ、周波数割り当てが決まっておらず、周波数によってはアンテナの構造も変わるため検討したい」としたものの、「総務省からの電波の割り当てを見る限りは、低い方の周波数であれば実現しやすいと考えている」と説明した。

 他のキャリアへ提供については、販売に関してはAGCに任せており、ガラスアンテナが拡販されれば、調達コストが下がるというメリットもでるため、今後相談していきたいという。

NTTドコモ 小林氏(左)、AGC 武田氏(右)