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KDDI高橋社長が目指す“価値共創”の拠点、「KDDI DIGITAL GATE」オープン

 KDDIは、5GとIoTのビジネス開発拠点「KDDI DIGITAL GATE」を東京・虎ノ門に開設した。9月5日には「KDDI DIGITAL GATE」にて説明会が開催された。

 なお登壇したKDDI 代表取締役社長の高橋誠氏は冒頭に、関西を直撃した台風21号の被害に対応するため、社内に災害対策本部を設置していることを語り、「全力で対応にあたっている」とした。

KDDI 代表取締役社長の高橋誠氏

新しいビジネスモデルを新しい手法で開発できる拠点

 高橋氏は、5GやIoTの普及でもたらされる「デジタルトランスフォーメーション」について、自身の考えとして「お客さまとずっとつながっている世界」と表現。売り切り型から月額課金に移行するようなことも、デジタルトランスフォーメーションのひとつではないかとした上で、IoTや5Gがそれらを実現するとし、今回オープンした拠点を「ビジネスモデルの変革を起こす、チャレンジする拠点」と位置づけた。

 虎ノ門エリアを選んだ理由については、虎ノ門ヒルズの開業以来、大規模なオフィスビルの建設ラッシュが続いており、「新しいイノベーションを起こす場所になっていくのではないか」と背景を解説している。

 また「KDDI DIGITAL GATE」の特徴として、先端機器の試験環境だけでなく、ビジネスモデルの組み立ても行える場所と位置づけている点を挙げ、「KDDI ∞ Labo」の合流もこの意味で、相乗効果を狙ったものであることを語っている。

 高橋氏は、「KDDI DIGITAL GATE」のようなビジネス開発拠点により「価値共創パートナーになりたい」と語り、「5GやIoTという言葉だけで語るのではなく、どんなワクワクを提供できるのか、新たな拠点にしていきたい」と意気込みを語った。

 「KDDI DIGITAL GATE」センター長の山根隆行氏からは、「KDDI DIGITAL GATE」には各分野のプロやパートナーが集まること、アジャイル開発とデザイン思考という2つを中心に、イノベーションを起こせる環境を提供していくこと、KDDI内部に5年前からアジャイル開発を行う部隊を抱え、一部のサービス開発にアジャイル開発の手法を適用していることなどが紹介された。

 KDDI ∞ Labo長の中馬和彦氏からは、過去7年間の取り組みで、大企業にもベンチャー支援を行う考えが確実に広がっていると語ったほか、「KDDI DIGITAL GATE」に合流することについても「会社の規模や資産は違うかもしれないが、(起業で)世の中を変えたい、(会社の)何かをかえたいというところは同じではないか」とした。

IoT時代、数ではなく価値を追求

 質疑応答の時間に、アジャイル開発の手法による開発期間の短縮の度合いが聞かれると、高橋氏は「一般的なイメージとして、半分ぐらいになるのではないか。試すのにはいい開発手法」とした。

 5Gの先行サービスや実用化の時期については、「2020年はひとつのターゲット。プレサービスとして体感できるものは、やってもいいのではないか」と、プレサービスに前向きな姿勢を示している。

 高橋氏は「5Gの周波数帯は今年度末に割り当てられて、そこからになる。サービス内容もこれからだが、5Gは一斉に始まるものではない。平行して進めるIoTは、今回の拠点などもあり先行するのではないか」との見方を示している。

 3キャリアでもIoT関連のサービスやソリューションは競争が激しくなっており、「KDDI DIGITAL GATE」にどういう役割を期待するかが問われると、高橋氏は、「スマートフォンは数でシェアを争うが、IoTの時代の数(回線数)はぜんぜん違う。これから何億という数のIoT通信機器が出ていく。料金はすでに安く、いかに価値観を作っていくかが、パートナーにとって非常に大事になる。(3キャリアの差は)数の差ではなくクリエイティビティ、創造性の差になる。新しいビジネスモデルをいかに作れるか、そこにどんな価値をもたせられるかが重要」と語る。また、「創造性の違いが差になる。その時、通信会社だけが競合企業ではないだろう」と、ビジネスモデルの変革でライバル企業の面子にも変化が起こることを示唆している。

 5GやIoT時代の料金体系についても“変革”があるのかが聞かれたが、高橋氏は、すでに同社でもNetflixをバンドルした料金プランを提供していることや、「他社のケースでもゼロレーティングとかいろいろな形態が出てきている」とソフトバンクの新プランに言及。これらは、ユーザーのことを真剣に考えた結果ともしており、「原点に立ち戻ってやっていかないと。5G、IoTはいいきっかけになる」と、引き続き改革する余地があることを窺わせた。

 今回の発表内容とは関係が無いものの、菅官房長官の「携帯料金は4割下げられる」発言への対応を聞かれると、高橋氏は、冒頭の台風への対応や復旧作業、復興への取り組みなどにも触れながら、「いろんなことを、一生懸命やっていかないといけない。台風の復旧も、5Gみたいな世界に誇れることも。新しいサービス・キャンペーンもそう。(発言は)真摯に受け止める。いろいろやらなければいけいもの、できることを尽くしていきたい」と語っている。

「KDDI DIGITAL GATE」の様子

※高橋誠氏の「高」は新字の「髙」