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みずほ銀行とJR東日本、iPhone向けに「Mizuho Suica」開始

Apple Payやみずほ銀行口座からチャージ

JR東日本の野口氏(左)とみずほ銀行の向井氏(右)

 みずほ銀行とJR東日本は、iPhone対応の電子マネーサービス「Mizuho Suica」の提供を開始した。みずほ銀行のアプリ「みずほ Wallet」のiOS版において、店頭での支払いや鉄道乗車券として利用できる。

Mizuho Suicaは口座からダイレクトに入金

 通常のSuicaは、駅の券売機やコンビニエンスストアでの現金チャージか、クレジットカードと紐付けてチャージする方法の2通りがある。

 一方、「Mizuho Suica」では、Apple Pay対応のiPhone単体でSuicaの発行やチャージ、支払いができるようになる。これにあわせてみずほ銀行のスマートフォンアプリ「みずほ Wallet」のiOS版が登場。Mizuho Suicaは、「みずほ Wallet」の「決済」部分を担う1つのパーツということになる。

 1回あたりのチャージは1000円~1万5000円。Mizuho Suicaには最大2万円まで入金できる。ネット口座振替の仕組みを応用して、本人確認している。

 JR東日本以外のエリアでは、これまでのSuicaと同じく、相互利用できる場所で利用できる。

Apple PayのSuicaとの違い

 既にApple Pay対応のiPhoneでSuicaは利用できるようになっていたが、これに対してみずほ銀行のユーザーは、「Mizuho Suica」の登場により、クレジットカードなどを用いずとも、銀行口座とSuicaの連携という形でキャッシュレス決済を手軽に使えることになる。

 クレジットカードの登録を手間に感じていたユーザーにとっては、より手軽にSuicaを利用できることになる。また口座から直接入金となるため、Suicaの利用と口座残高の変動を把握しやすくなる。

 Apple Payのエクスプレスカードに「Mizuho Wallet」を登録することもできる。Apple Payでは、Mizuho Suicaと、JR東日本のSuicaと2枚のSuicaが共存する形となるが、エクスプレスカードに設定したほうが優先的に用いられる。

 ただし手元にあるプラスチックカードのSuicaを読み取って移行することはできない。またクレジットカード一体型のSuicaからの移行も、Apple Pay同様にできない。

 このほか、Mizuho Suicaで定期券や特急券、オートチャージは利用できない。

Android版「みずほ Wallet」との違い

 みずほ銀行では、今春よりAndroid向けに「みずほ Wallet」を提供している。こちらでは、QUICPayと連携しており、QUICPay対応店舗での支払いができるようになっている。

 同じ「みずほ Wallet」でも、ショッピングに使えるのは、AndroidではQUICPay対応店舗、iPhoneではSuica対応店舗という違いが生まれることになるが、みずほ銀行常務執行役員の向井英伸氏は、2つのスマートフォンを使うことはまれであり、みずほ銀行としては混乱がない形で推奨していきたいと説明する。

 向井氏は、今回が完成形ではなく、今後も利便性向上に向けて取り組む姿勢を見せつつも、どういった取り組みをいつ行うか、といった点は今回、明らかにされなかった。

DNPのプラットフォームを利用

 Mizuho Suicaは、大日本印刷(DNP)が提供するプラットフォーム「DNPモバイルWalletサービス」の機能拡張によって実現している。

 「DNPモバイルWalletサービス」は、決済・ポイントをスマートフォンで一元管理できるよう、クラウド側とスマートフォンアプリの組み合わせで提供されている。サービス間の連動も可能でき、今回は、DNPモバイルWalletサービスを仲介役として、みずほ銀行のサービスとSuicaが連動できるようになった。

 仕組み上、みずほ銀行とJR東日本はそれぞれ別の企業との連携も可能で、両社ともに今回の取り組みは独占的なものではないと説明。ただ、JR東日本常務執行役員の野口忍氏は「まずはMizuho Suicaをいかに利用してもらえるようにするか」と語り、新サービスへ注力する姿勢を見せる。

みずほ銀行の向井氏(左)とDNP専務執行役員の蟇田栄氏(右)

 これまではSuicaユーザーが改札で残高不足となった場合、改札近くにあるチャージ機を使って現金で入金となっていた。これはみずほ銀行にとっては収益の機会に繋がらず、ユーザーにとっても手間がかかる形。Mizuho Suicaのビジネスモデルの詳細は明らかにされなかったが、みずほ銀行の向井常務は「決済を通じた収益が得られるという取り組みをしている」と説明しており、ユーザーへの利便性向上とあわせて、みずほ銀行にとって新たな収益をもたらす枠組みと説明。また、本サービスに限らず、ユーザーからの同意を得た上で、利用動向のデータをサービス向上に活かしていくと語っていた。