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LINEが「Redesign」で目指すものは――2018年の事業戦略説明会で見せた次の一手
LINE PayはQUICPayに対応、店舗手数料が3年無料に
2018年6月28日 22:29
LINEは、中長期での事業戦略を紹介するプライベートイベント「LINE CONFERENCE 2018」を開催した。1年前のカンファレンスで注目を集めたAI関連の取り組みだけではなく、ゲームや音楽などのエンターテイメント分野、Eコマース、海外事業の動向、広告戦略、ニュースサービス、そしてフィンテックと、その分野は多岐にわたる。
LINE代表取締役の出澤剛氏は、2018年のテーマは「Redesign」と紹介しており、その内容は、新サービスが含まれつつも、既存のサービスをさらに発展させるものが多く、テーマ通りの内容となった。
今年のテーマは「Redesign」
企業として、さまざまな存在の距離を縮める「CLOSING THE DISTANCE」をミッションに掲げるLINE。1年前は、ネットとリアルの両方でLINEのサービスが活躍する「Everything Connected」、さまざまなサービスで動画を採り入れる「Everything Videolized」、AIを活用していく「Everywhere AI」という3つのビジョンを示した。出澤氏はそれらの取り組みは順調に進んでいると説明。その上で今年のテーマ「Redesign」に触れる。
出澤氏
「スマートフォンでは、それまでのパソコン向けサービスのリフォームではなく、完全に変化させる必要があった。(LINEのAIアシスタントである)Clovaは声という新しいユーザーインターフェイスに挑戦している。現在、一番注力しているLINE Payはリデザインしがいのある金融分野で、裏を返すとユーザーが不便な環境に置き去りにされている」
メッセージングサービスとして登場してから7年、スマートポータルを目指し、リアルへの進出を図ってきたLINEは今回、さまざまな取り組みをあらためて立て直す、あるいは新たな分野へチャレンジして付加価値を作り出していくという姿勢を示すテーマと言える。
LINE Pay、QUICPayに対応
QRコードを使って実店舗でショッピングできる「LINE Pay」では、今秋、JCBの非接触型決済サービス「QUICPay」に対応することになった。これにより、国内約72万カ所の「QUICPay」対応店舗で、LINE Payでの支払いができるようになるという。
利用開始時の手順や、LINE PayのアカウントとQUICPayの連携の仕組みなど、詳細は今回明らかにされていない。
LINE Pay店舗側の手数料が3年無料に
QUICPayでの対応店舗拡大のほか、QRコード決済対応店舗を増やすべく、2018年8月から実施されるのが、「LINE Pay 店舗用アプリ」での決済手数料が3年無料になるという施策。店舗にとっては、スマートフォンやタブレットに店舗用アプリを入れるだけで、LINE Payによる支払いを受け付けられるようになるほか、来店客とLINE上で“友だち”になれば、その後、新商品の導入やキャンペーンの実施などを告知しやすくなる。
ユーザーに対しては、LINE Payを利用したくなる仕掛けとして、利用額にあわせたポイント還元率が8月より変更される。既に6月から、「マイカラー」という新制度で、利用頻度が高いユーザーほど多くのポイントを還元する形としていたが、さっそくてこ入れする格好。8月から1年感、各カラーの還元率に加えて、さらに多くのポイントを付与する形になり、グリーンバッジのユーザーであれば最大5%還元される。
出澤氏は、今後、決済手数料だけで収益を上げることは少なくなり、金融事業や広告事業などとの連携で収益を上げる方向ではないかと説明する。
家計簿アプリ登場
フィンテック分野の取り組みとして、今秋、会計簿アプリが提供されることになった。LINEでは、証券サービスなども手がける方針で、個人にとっては投資や日々の消費をまるごとLINEで管理できる環境が整うことになる。
日本と米国以外の地域では、仮想通貨の交換所「BITBOX」が提供されることも今回明らかにされている。
LINEトラベルスタート
国内外の旅行検索サービス「LINEトラベル」が新たに発表された。28日からはホテルの比較検索が可能で、今後、10月に航空券、12月にツアーの比較も可能になる。
さらに旅行先で、人気のスポットなどを案内する“タビナカ”に向けたコンテンツの提供も予定されている。これは、スマートフォンの位置情報を活用して提供されることになる。
LINE MUSICでトークBGM、ミュージックビデオ
メッセージング以外の分野で、過去、大きく牽引してきた「LINE GAME」では、今回、HTMLベースの「クイックゲーム」の導入が発表された。専用アプリをインストールすることなく、友人同士とコミュニケーションの一環として、あるいは1人で、気軽にゲームを楽しめるというものだ。第1弾として、「たまごっち」などのコンテンツが用意される。
LINE MUSICでは、新たにチャット画面でBGMを流せる機能が提供される。導入時期は今秋。親しい人との会話と楽曲をリンクさせ、ユーザーの思い出と音楽を結びつける。またミュージックビデオの提供も開始する。LINEの舛田淳氏は「これからは5G時代」と語り、高速大容量の仕組みが拡がり、ますます動画のニーズが高まることを見据えた機能と説明する。
音楽に関連して、新サービス「LINEチケット」も今秋提供される。LINEを使った電子チケットサービスで、ペーパーレスでのライブイベントの入場が可能になる。
My News提供へ
LINEの主要な機能として提供されることになった「ニュース」では、ユーザーの嗜好にあわせた記事を提供できるよう、My News機能が提供される方針。記事によって、スポーツや政治、経済などの内容が異なり、どの記事にアクセスしたか、把握することで、ユーザーの好みを学習し、その好みにマッチするよう記事を提供していくというもの。あわせてLINEではオリジナル記事の募集も開始しており、既存のメディア以外の記事の提供にも意欲を見せている。
Clova、スキルを第三者が開発できるように
AIアシスタントのClovaからは、テレビのリモコン操作や、ニュースの読み上げなど、さまざまな“スキル”が既に提供されてきたが、今回、サードパーティがスキルを開発できるようオープンな仕組みが提供されることが明らかにされた。
舛田氏は「Clovaにとって、LINEという存在があるのは強み以外の何者もでないく、連携を高めていく」と説明。今回、ディスプレイ付きモデルを発表したことで、グラフィックも活用するコンテンツの提供も可能になり、さらなる可能性の拡充に期待感を示す。
あわせて舛田氏は、4時間程度、音声を収録すれば、新たなClova用ボイスを生成できる技術を開発していると説明。デモンストレーションでは、わかりやすくその機能を説明するため、舛田氏自身の声を生成して、Clovaの声代わりにする、という形で紹介され、会場の笑いを誘う。まだ実用化するレベルではないとのことだが、将来的には声優や芸能人、家族などの声をスマートスピーカーにセットできると未来像を描いていた。