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「スマートビルディング」で運用コスト4割カット~ソフトバンクと日建設計がIoT活用で業務提携

日建設計 代表取締役社長 亀井忠夫氏(左)とソフトバンク代表取締役副社長兼COO 今井康之氏

 ソフトバンクと日建設計は、“スマートビルディング”の設計・開発を目的とした業務提携に合意した。IoTやロボット、AIなどの技術を取り入れた次世代のビル設計、ビルの運用コスト削減を目指す。

 当初は両社の自社ビルなどを活用し実証実験を行う。ビルのメンテナンスや警備にIoTやロボットの技術を導入し、効果を検証する。将来的には、ビルオーナー・ユーザー向けのIoTソリューションとして提供を目指す。

ロボットの導入で運用コスト40%削減

 27日、両社は共同記者会見を実施し、提携の狙いを紹介した。ソフトバンクからは法人部門を統括する代表取締副社長兼COO 今井康之氏が登壇。「建築分野では世界で圧倒的ナンバー1の日建設計とともに、新しい建築のあり方を一緒に研究し、なおかつ作り出していきたい」と抱負を語った。

 今井氏は「オフィスビルは建設後の方が費用がかかる」として、ビルの維持管理にかかる運用費は、建設費の5倍に上ると紹介。ソフトバンクの試算では、IoTやロボット、AIといったソフトバンクの持つ技術を活用することで、この運用費を40%程度、削減できるという。

 両社が目指す“スマートビルディング”では、各種センサーデバイスから得られた情報の分析やロボットの導入により、運用コストを抑えつつ、管理の品質の向上させる。具体例として今井氏は、ソフトバンクロボティクスが2018年春に発売予定のBrain Corporation製の床洗浄ロボットや、機械警備システムのロボット化を提示。こうしたロボットを導入することで、人件費の削減や、人材不足への対応が可能とした。また、ビルのメンテナンスにおいては、ビル内に設置したセンサーを活用することで、これまでの定期点検よりきめ細かい常時メンテナンスが提供できると紹介した。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドを通して投資するBrain Corporationの床洗浄ロボットや、グループ企業の英ARMなどが紹介された

 日建設計 代表取締役社長 亀井忠夫氏は、「ソフトバンクとの提携により、オフィス空間のあるべき姿を追求したい」と語り、実証実験によって得られた知見を、ビル設計段階から活用していくとした。亀井氏が紹介した例は、ビル内の従業員を位置情報を把握することで、コミュニケーションが円滑になるようなオフィスを設計するというコンセプト。日建設計では従業員に配布したスマートフォンを活用して、このコンセプトの実用化を目指す。他にも、ロボットが利用できるエレベーターなどロボット化を前提としたビル設計や、ソフトバンクの持つ流動人口データをなど活用したビル周辺まで含めた環境設計なども検討するという。

日建設計は、東京タワーや東京スカイツリー、六本木ヒルズなどを手がけた総合設計事務所。今回の実証実験を通して、知的生産性の高い職場作りやビルの環境負荷の低減に取り組む