ニュース
従来比2倍も、クアルコムが「Snapdragon 835」の詳細を北京で解説
Xperia XZ Premiumにも搭載の旗艦プラットフォーム
2017年3月23日 06:00
米クアルコムは22日、中国・北京で同社の新しいモバイルデバイス向けプラットフォーム「Snapdragon 835」の詳細な解説を行なった。
「Snapdragon 835」はスマートフォンだけでなく、VR/AR用ヘッドマウントディスプレイやスマートグラスのなど、モバイル・IoT機器全般に適した“モバイルプラットフォーム”としての位置付けをより鮮明にし、さまざまな分野のモバイルデバイスで高いパフォーマンスを発揮することをアピール。リファレンス端末による実際のベンチマークテストでは、前世代の「Snapdragon 820」と比べ、一部ではおよそ2倍もの性能を叩き出した。
基本性能はもちろん、VR/AR、オーディオ、人工知能も高機能・高精度に
クアルコムのSnapdragon 835(MSM8998)は、モバイルデバイス向けチップセットとしては初となる10nmプロセスで製造された、30億個以上のトランジスタを内蔵する新世代モバイルプラットフォーム。前世代のSnapdragon 820/821と比較して、大幅に処理速度を向上させたCPUの「Kryo 280」と、GPUの「Adreno 540」を採用し、機械学習をサポートするHexagon DSPに加え、ギガビットクラスのLTE通信を実現するX16 LTEモデムなどを統合する。より高機能、高性能、低消費電力を実現しながら、プロセスルールの進化などによりダイサイズ(チップの面積)は縮小した。
具体的には、Kryo 280はパフォーマンス重視の4コアCPU(最大2.45GHz)と、効率重視の4コアCPU(最大1.9GHz)が組み合わされたオクタコア構成となっており、従来より高い処理性能と低消費電力を両立。
GPUのAdreno 540は前世代からグラフィックスレンダリング性能を最大25%アップさせた。映像面ではHDR10に対応し、対応ディスプレイへの出力時により高い色再現性を発揮する。
通信周りは、X16 LTEモデムがダウンリンクにおいてLTE Category 16に対応。3波キャリアアグリゲーションに、256QAM、4×4 MIMOという3つの技術を掛け合わせることで、理論値の最大速度は979Mbpsに達する。
Wi-FiにおいてもMU-MIMO対応の2×2 802.11ac(11ac Wave2)と、近距離高速通信規格の802.11adに対応。LTEのアンテナとWi-Fiのアンテナは一部を共用できるようにし、端末の筐体サイズを抑えながら設計できる工夫も加えられている。
カメラを制御するSpectra 180 Camera ISPは、広角用と望遠用の2つのカメラセンサーを同時に扱うことができ、スムーズで高精細な光学ズーム機能を実現する。ジャイロセンサーによりヨー方向(上下方向を軸とした回転運動)とピッチ方向(左右方向を軸とした回転運動)のブレ軽減が可能で、動画撮影時はローリングシャッター歪みも軽減する。
年々注目が高まっているVR/ARに対しては、ヘッドマウントディスプレイなどにおいて「6DOF(6 Degrees of Freedom)」による高速かつ高精度なモーショントラッキングを可能にする。上下左右前後方向の動きに加え、各軸の回転運動も認識し、仮想空間内でユーザーの動きを正しく反映させることが容易になる。
オーディオは、Aqstic Audioという名称で、オーディオチップ「WCD9341」を統合。立体音響のためのオブジェクトオーディオとシーンベースオーディオをサポートし、PCMでは最大384kHz/32bitのハイレゾ音源や、DSDフォーマットにもネイティブで対応した。Bluetoothで利用できる、クアルコム開発の高音質コーデック「aptX HD」も利用できる。
ヘッドフォン内蔵のマイクと連携しノイズキャンセルも行なえる。会場ではコネクター部分にWCD9335のチップを単独で内蔵するだけでノイズキャンセルを実現したヘッドフォンのデモも披露していた。
Hexagon DSPは、機械学習による高速・高精度な物体認識、音声認識を実現する。機械学習フレームワークのCaffeとTensorFlowをサポートし、人工知能技術による処理を効率化する。また、Haven Security Platformでは、指紋認証と音声認証に加え、人物の目と顔を元にした認証にも対応した。
充電速度はさらに高速化される。新規格の「Quick Charge 4.0」により、わずか15分の充電で50%(2750mAh容量時)まで回復することが可能。USB-PDとUSB Type-Cにも当然ながら対応する。
Snapdragon 835が採用される予定のデバイスは、すでにいくつかが明らかにされている。ギガビットクラスのLTE通信に対応する端末としては、ソニー(Xperia XZ Premium)、ZTE、モトローラの3社から発売されることが決定済み。
インフラも日本、韓国、米国、オーストラリア、ヨーロッパ、ロシアなど11カ国の通信事業者15社が対応を進めているか、もしくは一部で商用サービスを開始している。
さらにVR/ARヘッドセット(グラス)としては、サンフランシスコに本拠を置くスタートアップ企業Osterhout Design Groupの「ODG R-8」などが開発中であり、中国企業のGoertekと、クアルコムと中国Thundersoftとの合弁会社であるThundercommの2社も、ODM生産を計画している。
マルチコア性能の向上が目立ったベンチマーク結果
発表イベントでは、リファレンス端末(Qualcomm Reference Design)を用いたベンチマークテストも実施できた。結果は以下の通りで、特にCPUのマルチコア性能とグラフィック性能が大きく向上していることがわかる。いずれ登場することになる製品でも高いパフォーマンスを発揮することが期待される。
Snapdragon 835 | Snapdragon 820 | |
AnTuTu Benchmark | 181228 | 121861 |
Geekbench 4 シングルコア | 2048 | 2065 |
Geekbench 4 マルチコア | 6484 | 5367 |
GFXBench 4 Car Chase | 884.1(15fps) | 558.5 Frames(9.4fps) |
GFXBench 4 Manhattan | 1219(20fps) | 886.0 Frames(14fps) |
GFXBench 4 T-Rex | 3346(60fps) | 1712 Frames(28fps) |
Kraken Javascript Benchmark | 2327.8ms | 2464.3ms |
Octane 2.0 JavaScript Benchmark | 14170 | 11742 |
SunSpider JavaScript Benchmark | 229.3ms | - |
3DMark(Sling Shot) | 3840 | - |
PCMark | 8042 | - |
※Snapdragon 820のベンチマーク結果は2015年12月のもの
※ベンチマーに使用した端末の大まかな仕様は以下の通り
OS:Android 7.1.1
チップセット:Snapdragon 835 MSM8998
ディスプレイ解像度:1440×2560
メモリサイズ:約6GB