「P-08A」開発者インタビュー

“P”らしく進化させたスライドケータイ


 三菱電機製の携帯電話で採用されてきた「スピードセレクター」は、三菱の携帯事業撤退後、パナソニックのスライドケータイ「P-02A」に継承された。2009年夏モデルとして登場した「P-08A」は、同じくスピードセレクターを搭載しながら、デザインにも変化をつけ、機能面の強化が図られている。


使い勝手の向上に注力

左からプロジェクトマネージャーの石川氏、商品企画の菅田氏、ソフトウェア担当の高橋氏、コンテンツ担当の關氏

 商品企画担当の菅田誠氏によれば、「P-08A」のメインターゲットは、流行を取り入れながらも自分のスタイルを大切にする若者層」であり、デザインコンセプトを「シンプルでモダンなインテリアのたたずまい」に据えたという。

 先代モデルのP-02Aから約半年を経て登場したP-08Aは、スピードセレクターの表面デザインを変え、テンキーを押しやすいウェーブタイルキーにするなど操作感を向上させている。特にウェーブタイルキーは、手前(下の段)の高さを変え、押しやすくなっている。さらにソフトウェア面でもかな漢字変換システムが新バージョンとなり、コアターゲット層の利用頻度が高いと思われるメール機能の使い勝手向上にも注力した。ソフトウェア担当の高橋秀幸氏によれば、“あいま”と入力した場合、その前にくる言葉が「昨日」か「明日」かによって、予測変換候補が「会いました」「会いましょう」と変化する。

手前に行くほどキーを高くし、押しやすくしている文字入力エンジンもバージョンアップ

 同じくソフトウェア面では、iモード関連でメーカーの垣根を越えた仕様が導入されているが、従来の操作性を考慮して、高橋氏は「iモードボタンを押したとき、標準設定ではiメニューへアクセスするようになったが、設定を変えることで、従来と同じくiモード関連メニューを表示させることもできる」と語る。操作感が一新され、進化を感じさせる一方で、従来より受け継がれてきた使い勝手も残すことで、多様なユーザーニーズに応えるのだという。

カメラの起動時間もスピーディに

 ハードウェア面のスペックを見ると、高色再現性液晶の搭載、ワンセグ利用時の60fps再生、「おまかせiA」対応の810万画素カメラなど、PRIMEシリーズの「P-07A」に引けを取らない仕上がり。P-08AはSTYLEシリーズの1つだが、ハイエンド向け商品と位置づけられ、スペックアップが図られた。ユニークな特徴は、「従来の約8倍の明るさ」(菅田氏)になった高輝度LEDフラッシュと、スピーディなカメラ起動だ。特にカメラの起動時間について、プロジェクトマネージャーの石川博也氏は「デフォルトの待受画像であるFlashコンテンツの場合はやや時間がかかり“世界最速”までいかないが、静止画の待受画像にしていればカメラの起動時間は、0.99秒を切ります」と説明する。にもかかわらず、その点を訴求ポイントとして全面に出さないのは、「スペック競争と一線を画し、高速なカメラ起動と使いやすい待受画面の最適なバランスを追い求めた結果」と菅田氏は述べる。つまり“Dの遺伝子”を受け継ぎ、使い勝手の向上など洗練させていくことが、“Pのケータイ”としての進化であり、価値を高めていくことにつながると判断したようだ。

 スペックではなく価値観に訴えるケータイという点では、ボディカラーやプリセットコンテンツもP-08Aの特徴の1つ。石川氏が「当初からデザインポリシーがはっきりしていた」と述べ、菅田氏も「デザイナーが最初に示した1枚のスケッチをそのまま賞品に仕上げた。スケッチを見た最初の5秒で決、これを世に問おうと心に決めた」とするなど、比較的初期の段階からデザインは固まり、その外観やボディカラーによる世界観にあわせ、プリセットコンテンツの開発も進められた。

 P-08Aでは、デザイングループのGROOVISIONSによる待受Flashやきせかえツールなどが用意されているが、コンテンツ担当の關智子氏は「ハードウェア担当のデザイナーとGROOVISIONSさんと交えて、直接話し合いながら、端末の世界観にあわせたコンテンツ開発を進めた」と語る。スライドケータイでは、ディスプレイが顔になる。プリセットコンテンツは、“顔そのものを作る”こととなるが、外観デザインの方向性が早期に定まったことで、コンテンツ開発も従来より早い段階から進められたという。

 菅田氏は「"継承と進化"をテーマに作り上げたP-02Aから約半年、短い期間の中で、目先のことにとらわれて、“差別化のための差別化”に陥ることがないよう戒めながら開発を進めた。P-02Aの良いところを継承しながら、どの部分に手を加えれば本質的な価値向上につながるか、プロジェクトチームの中で共有して完成度の高い商品に仕上げることができた。PRIMEシリーズのP-07Aがあるからこそ、P-08Aでは良い意味で“パナソニックらしくない”ボディカラーに挑戦することもできた。手に取って、響くものを感じた全ての方に使っていただきたい」と述べた。先代モデルの「P-02A」のユーザーにアンケート調査を行ったところ、スライド以外の形状から買い換えたユーザーが予想以上に存在したとのことで、ターゲット層の拡大を狙う「P-08A」の試みがどのように受け止められるか注目したい。



(関口 聖)

2009/6/23 12:18