インタビュー

UQ mobileの新料金「3GB/1480円」はじまる、中の人に聞くおトクポイントと「povo」「au」で目指したものとは

 UQ mobile(UQモバイル)の新たな料金プランが2月1日より利用できるようになった。

 KDDIの新料金プランでは、月額2480円で20GB使える「povo」に注目が集まるところだが、UQの新プランには競合のNTTドコモ井伊基之社長が「あれはすごい。3GB1480円が最大のインパクト」と語るほど、衝撃的な料金プランに仕上げられている。

 今回は、KDDIパーソナル企画統括本部次世代ビジネス企画部長の長谷川渡氏と、UQの料金プラン設計を担った、サービス料金グループ グループリーダーの福澤元己氏に新プランの狙いを聞いた。

福澤氏(左)と長谷川氏(右)

povo、UQ、au 5Gの違い

――1月13日の発表から、ここまでの反響、いかがですか?

長谷川氏
 やはり「povo」への注目が高いです。他社さんの料金もあって、多くのメディアにも取り上げていただいています。一方、UQの「くりこしプランS/M/L」は、ちょっと詳しい方に注目していただいていると見ています。

福澤氏
 お客様センターにも「シニア割が適用されるのか」といった質問も寄せられているんですよ。

――今回は、オンライン専用のpovo、そして低価格なUQ、使い放題のau 5Gが揃って発表されました。

長谷川氏
 もちろん全て注力しているのですが、それぞれ力を入れたポイントが異なります。

 たとえば「povo」は、(競合他社の後に発表となったが)後出しジャンケンとして出したわけではなく、ビジネス上のライバルをしっかり意識して、どうすれば他社よりも良いものになるか、しっかり考えて仕上げたものです。

 たとえば、他社では(ahamoが)1GBを追加チャージできますし、(SoftBank on LINEはLINEの通信量が無料で)特定サービスのゼロレーティングを取り入れています。

 それに対して、私たちは「使い放題の先駆者」としてちゃんと導入したいよね、と話し合って、トッピングとして24時間だけのデータ定額、500円で5分間の音声通話定額といった特徴を盛り込むことにしました。

 UQ mobileでは、これまでUQ家族割の割引が2回線目に適用されるなど、auとの違いへのご指摘があったと思います。

 もともとUQは「シンプル」「お手頃」がコンセプトです。そこで家族割の仕組みを取り払い、1回線から利用でき、なおかつ料金を下げれば、より魅力的と感じていただけるのではないかと作っていったんです。

 そしてauでの料金プランは、(12月の料金発表で)“米印(※)”へのご指摘も頂戴しましたが、「もともといくらなのか」が非常にわかりづらいというご指摘をいただいていました。そこで表現方法から意識して発表したことになります。

――“※印“、つまり注釈が多いことや、料金の表記についての指摘は、たしかに12月の発表会で、とても厳しい声が本誌記事にも寄せられていました。みなさんはどう受け止められたんでしょうか。

長谷川氏
 大変厳しい声をたくさんいただいて、真摯に受け止めました。

 どこがズレていたのか、しっかり反省と言いますか、私たちのなかで確認して、ご期待に沿うようにしたいと。

 今回いただいたお声は、期待が大きかったことの裏返しだとも感じました。そうしたご期待に、きちんとお応えすることが必要だろうと捉えています。

新料金、いつから考えていた?

――2020年の秋以降、総務大臣の強い要請がたびたび出ていましたが、今回の料金プランはいつごろから検討されてきたのでしょうか。

長谷川氏
 povoの原型が出てきたのは、2019年の年末ごろ、1年以上前のことでした。

長谷川氏

 ただ、その段階は「これでいこう」と方向が固まっていたわけではなく、“オンライン専用”や、eSIMなどの概念を鮮明に出したものが今後必要じゃないか? というところがスタート地点です。

 今日からUQ mobileのくりこしプランを提供することになりましたが、その前の段階として、2020年春、楽天モバイル対抗として「プランR」を発表していました。

 楽天モバイルさんは、店舗も展開されていますが、基本的にオンラインに寄せるチャネル(販路)展開だと捉えています。そのあたりも踏まえてUQでのプランを検討してきたんです。

 つまり(今冬、各社から発表されたプランの)2980円という水準感は、楽天モバイルさんがまず先鞭をつけられたということになるのでしょう。そこに、UQと、競合のワイモバイルさんが10GBで対抗したという流れです。

――昨春の状況を振り返ると、確かにそうでした。

長谷川氏
 でも、ドコモさんは、ずっとそうした対抗プランを出されませんでした。

――その後、大臣のコメントもありましたが、10月にはワイモバイルとUQがそれぞれ新たなプランをいったん発表しています。

長谷川氏
 はい、何回か“じゃんけん”した上で、12月にドコモさんは「ahamo」を発表された。良いタイミングですごくインパクトがありましたね。

楽天対抗、そして

――今はahamo、povo、そしてソフトバンクのオンライン専用プランへの注目度が高まっていますが、それ以前から楽天対抗としての動きがあったと。

長谷川氏
 そうなんです。起点はそこ(楽天モバイルの料金)にあって。

 楽天モバイルさんは1年間で300万契約という目標を掲げられていますよね。僕らとしては、1年後ではなく、もっと早いタイミングで目標を達成される可能性を視野に入れていました。すると2021年春の段階で、どういった市場になっているか、想定する。その上で、お客さまへどんな価値、体験を届けるべきなのか、しっかり考えなきゃいけないフレームができたように思います。

 UQでは、2020年6月に「プランR」を始めました。するとお客さまに多く利用していただき、かなり手応えを感じたプランだったんです。

 でも、2021年春の段階でどうなっているのか。このままでいけるわけないよね、じゃあ次のことを考えなきゃと。

――このままで行けるわけがない、と考える前提というかきっかけはありましたか?

長谷川氏
 「僕らがプランRで手応えを感じた」ということを裏返せば、相手方からすると「十分に戦えていない」と見ている可能性がある。つまり、次の手があるんじゃないか、と想像してきたわけです。

――あー、なるほど。一方で、料金プランって一度出したら、それなりに長期に渡って提供されるもの、とも思っていました。

長谷川氏
 そうですよね。でも、この2年ほどは改定までのスパンが短くなっている気はします。2020年11月以降の動きは目まぐるしいものだったことは事実でしょう。

 ただ、先述したように、急ごしらえではなく、2021年春に向けて準備しなきゃいけないという意識はあったんです。そのタイミングはかなり早まりましたが(笑)。

福澤氏
 髙橋(誠社長)も会見で触れてしましたが、社内は10月以降、盛り上がって活気づいたんです。

――いや、それでも12月のahamo発表から、povo発表まで1カ月強でした。なかなか大変だったのでは?

福澤氏
 UQ mobile事業がKDDIへ移管される前から、グループとして、au側のプランとの関係性を考慮して料金は設計していました。

 この数カ月は、au、povoのチームと連携して進めました。もちろん大変でしたが(笑)、でも、やらされてる感はなくて、戦っているという意識のほうが強かった。すごく貴重な経験だと思ってます。

福澤氏

「3GB/1480円」の次が15GBになった背景

――さて、今回はUQの新プランに関するインタビューということで、あらためて見てみると、3GBの次が15GBというのはちょっとギャップがあるように感じたのですが、どんな考え方で設計されたんでしょうか。

長谷川氏
 UQにとっては、3GBの料金プランはかねてより提供してきたもの(スマホプランS、1980円)です。ヘビーに使わない人にとっては余裕がある量で、余ったら翌月へ繰り越せます。もともと人気で、お客さまから評価されていたプランです。

 そこで家族利用の割引を取り払い、1人からの利用にして値下げすれば、さきほどもお伝えしましたが満足していただけるだろうと考えていました。

 これまで提供してきた「スマホプランR」は10GB/2980円(UQ家族割で2480円)でしたので、15GBへ増量しただけなのですが、そこでギャップが大きくなった格好です。

 新たに提供する「くりこしプランM」は2480円で、楽天モバイルさんへの対抗はもちろん意識していますし、そしてドコモさんの「ahamo」への対抗も意識したプランになっています。

――あ、povoだけではなく、UQでもahamo対抗ということになるんですね。

長谷川氏

 はい、オンライン専用はやはり、ある程度の敷居があると思います。店舗での対応を求められる方に向けて、「これでいいじゃん」とご利用いただくには10GBはちょっと少ない。そこで(UQの新料金であるくりこしプランMを)15GBにした。

 さらにUQのくりこしプランでは、その名の通り、余った通信量を翌月へ繰り越せます。もし使い果たしても下り速度は1Mbpsです。店舗もあってサポートもご利用いただける。ahamo対抗として、しっかりご期待に添えるプランが「くりこしプランM」という位置づけなんです。

 くりこしプランには、25GB/3480円の「L」もご用意しています。もともとは10月下旬に発表した「スマホプランV」で、20GB/3980円でしたが、そのまま出すのも、ということで手を加えました。

 (povoの)20GBで足りない方には、「くりこしプランL」をご利用いただけるかなと。

 それでも通信量が足りなければ、auの使い放題となる料金プランをお選びいただけます。UQとしては、今回発表した「S/M/L」が一番収まりがよく、ニーズを汲み取れると思っています。

――au、UQ、povoで補完関係になっていますね。極端な例ですが、「UQは3GBだけ、他の容量は用意しない」という選択肢はなかったのでしょうか?

長谷川氏
 あ、それはなかったですね。他社対抗として、「povoとUQ」という形で考えてきたんです。

――一方で、KDDIグループ全体で見ると、MVNOのBIGLOBEもあります。グループにはJ:COMのMVNOサービス「J:COM MOBILE」も提供されていますよね。低価格帯をそちらに任せるという考え方は?

福澤氏
 さきほどお伝えしたように、UQでは3GBのプランが人気でしたので、そういった考えはなかったです。

長谷川氏
 BIGLOBEは、歴史あるISP(インターネット接続事業者)でもあり、ブランドイメージが確立されています。かねてよりISPとして利用されている方が、BIGLOBEモバイルを利用されている。

 J:COM MOBILEも同じで、CATVのお客さまが大切な価値を保っています。実際に訪問するという関係性もあります。

――それぞれの顧客基盤が確立されている、ということですね。

ポイントは「気軽」「実店鋪」「繰り越し」「節約モード」

――ちょっと話は変わりまして、povo、UQ、auと新プランが登場したなかで、どんな人にUQのプランをオススメできるのでしょうか?

福澤氏
 必ずしも先進的なサービスじゃなくていい、そして使い放題にするほどでもない、といった方にオススメです。お気軽に、お試しでお使いいただけるところが大きなポイントです。UQ家族割がないことは、その分、1人からでも気軽に選んでいただけることでもあります。

 3GBで1480円というくりこしプランSを利用し、足りなければ1000円プラスで15GBになります。実店舗もありますし。いわば入門編という形でしょうか。

長谷川氏
 私は、2020年3月ごろから、UQの料金とも関わりが出てきて、「プランR」の開発から議論へ参加するようになりました。

 もともとUQの料金って、使いこなそうとすればするほど、おトクにできる設計なんですよ。

 たとえば翌月への繰り越しもそうです。そして通信量を消費しない「節約モード」もご用意しています。「今はそんなに速度は必要ないから低速でいい」と切り替えられます。そういうところへこだわりがある方に、UQは愛していただけるんじゃないかなと。

――確かに節約して、余ったら繰り越せる、というループで、よりお得に使えますね。

長谷川氏
 繰り越しという機能は、わかりやすいですよね。なので、新プランの名称に採用しました。検討時には、プラン名=通信量でもいいんじゃないか、という話もあったんです。

福澤氏
 これまでも節約モードは、お客さまへの“推し”ポイントでした。ただちょっとマニアックな機能だったかもしれません。ずっとお使いいただいている方には好評でして、UQのお客さまには節約術に長けた方が多いです。

――他社が今後、さらなる“後出しジャンケン”をしてくるかもしれませんね。

長谷川氏
 僕らとしては、3キャリアのなかで最も遅いタイミングでの発表でしたので、今は自信を持っています。ただ、競争ですからどんな動きがあるかわかりません。

 料金水準については、もうかなりコストを意識するレベル感になりました。今後、どんなアイデアが出てくるのか、楽しみにしています。とはいえ、「一息ついた」ではなく、もっと熾烈な戦いが待っているとも思っています。

――NTTドコモは、「ahamo」をファミリー割引のカウント対象にするとのことでしたが、どう対応しますか?

長谷川氏
 povoなどをカウント対象とすることは、現時点では対応する予定はないのですが、市場環境を踏まえて検討していこうと思っています。

――なるほど、ありがとうございました。