【WIRELESS JAPAN 2011】
イー・モバイルのガン氏、スマートフォン拡大路線を示す


イー・アクセスのガン社長

 「WIRELESS JAPAN 2011」初日の基調講演で、イー・アクセスの代表取締役社長のエリック・ガン氏は、「イー・モバイルの事業戦略」と題した講演を行った。

 ガン氏はまず、3月の東日本大震災によるネットワークへの影響について、イー・モバイルでは通信規制を実施しなかったにも関わらず、通話の接続率は99.5%を維持できたことや、4月11日には全復旧できたこと、業績への影響は1億2000万円だったことなどを紹介し、地震による被害や影響が少なかったことをアピール。さらに今期と来期では、災害や電力対策として、約20億円の投資を行う予定であることを明らかにした。

 続いてガン氏はイー・モバイルの事業概要と現状について説明する。イー・モバイルは、2011年3月31日に当時の親会社であったイー・アクセスに吸収合併された。これにより、イー・モバイルという会社はなくなったが、移動通信事業については、イー・モバイルのブランド名とロゴを引き続き使っている。

イー・アクセスの強み

 イー・モバイルの事業であるモバイルブロードバンドについてガン氏は、「いま通信の世界で成長している市場。イー・モバイルは2007年からサービスを開始し、トップのシェアを維持している。新しい事業者が入ってきているが、ほかと差別化できる端末と料金メニューを用意している」と強みを強調する。

 さらにガン氏はこのモバイルブロードバンド市場について、イー・モバイルにNTTドコモ、UQコミュニケーションズを加えた大手三社で、契約数は昨年度だけで200万件増え、今年度は280万件増えて826万件になると予想する。一方で、それでも人口普及率は6.5%にとどまり、「固定ブロードバンドや携帯電話の普及率と比較するとまだまだ低い。まだまだ成長すると考えている」と述べた。


モバイルブロードバンド市場のシェア

 イー・モバイル自体の事業としては、現在の契約数は320万近くにまで達しており、ガン氏は「3社の中でいちばん小さいベンチャーだが、シェアは56%となっている」と好調であることをアピールした。

 このように高いマーケットシェアを維持している理由については、ネットワークの速度と人口カバー率の広さがあると説明する。とくに人口カバー率については、「当社は基地局ベンダーの新しい技術を使い、コンパクトで設備コストやランニングコストも安い基地局を開発している。その結果が人口カバー率に表われている。現在人口カバー率は92%を達成した。地下鉄も98%だが、今年中に100%を達成できると思う」とし、自信を示した。


通信速度の比較

 一方で速度についても、昨年11月に下り最大42MbpsのDC-HSDPA方式を採用した「EMOBILE G4」を開始したこと例に挙げ、国内の各キャリアに対してアドバンテージがあることを紹介。さらに世界においても、米国やイギリスではLTEやHSPA+などのサービスが「4G」を名乗りつつも20Mbps以下の速度であることを紹介し、国際的にもイー・モバイルが非常に優れたネットワークを持つことをアピールした。

 新技術の導入タイミングについても、各社の通信速度変遷の表を示し、その技術導入が他社に先駆けていることをアピール。さらに次の技術としては、「今年はLTEの実験も準備しており、2012年半ばには下り最大75Mbpsのサービスを実現したい」との見通しも語った。


今年は5機種以上のスマートフォンとタブレットを展開

ビジネスチャンスの拡大

 こうした通信インフラの話に続き、ガン氏は「いままではデータ通信の会社だったが、これからは大きなマーケットに挑戦したい。とくにスマートフォン市場はデータ通信市場よりも大きい。データカンパニーからコンシューマカンパニーに転換する」と語り、スマートフォン事業の強化もアピールする。

 イー・モバイルの製品については、Pocket WiFiとWi-Fiテザリング対応のAndroidスマートフォン、そして固定網と連携できるモバイルWi-Fiルーターの3つのラインで展開していることを紹介。とくにPocket WiFiは、ガン氏によれば「17カ月連続でナンバーワンになっている」とのことで、さらに今後は下り最大42Mbpsの「G4」対応の製品も登場するとの見込みを明らかにした。

 スマートフォンについては、「2011年度は国内全体で1500万台の出荷が見込まれている。スマートフォンの成長はデータ通信端末以上。魅力のある市場だと考えている」と説明。そのような状況下で、イー・モバイルはWi-Fiテザリングを使っても料金が変わらず、通話についても回数制限付きながら通話定額オプションを提供していることを紹介。「飲み放題だけでなく、食べ放題も用意したいと考えた。データ定額と通話定額を合わせても月額5980円で用意している。ここでかなり差別化できるのではないか」とイー・モバイルの優位性をアピールした。

 今後の製品展開については、まもなく新製品を発表できることを明らかにし、今年は5機種以上のスマートフォンとタブレットを展開するとの予定も語った。

 また、データカンパニーからコンシューマカンパニーに転換するにあたり、認知度を高めるべく、CMキャラクターにAKB48の板野知美を採用したことも紹介した。

イー・モバイルの軸となっている製品とサービススマートフォン市場の概況
スマートフォンの強化イー・モバイルのブランディング強化

 




(白根 雅彦)

2011/5/26 08:21