【WIRELESS JAPAN 2009】
ソフトバンク松本副社長、携帯電話事業の重要性を語る
ソフトバンクモバイル 取締役副社長の松本徹三氏 |
無線通信関連の総合イベント「WIRELESS JAPAN 2009」にて22日、ソフトバンクモバイル 取締役副社長の松本徹三氏による基調講演が行われた。「モバイル通信情報サービスの将来像とソフトバンクの戦略」をテーマに、携帯電話事業の重要性、iPhone登場以降変わりつつある携帯端末事情などについて語った。
■「ヨーロッパのキャリアは日本のキャリアを羨ましがっている」
松本氏はまず、ソフトバンクモバイルの原点とも言えるボーダフォン買収劇から講演をスタートした。「インターネットサービスに強みを持つソフトバンクだが、それまでのPC向けサービスをモバイルにも広げれば市場は当然倍以上になる。ITビジネスは突き詰めればユーザーの可処分時間の取り合いになるわけで、あらゆる隙間時間に使ってもらえる携帯電話の存在は非常に大きい」と松本氏は語る。
また日本では携帯電話キャリアが端末の製造や流通も管理するという構造をとっており、より大きな発展のためには携帯電話事業そのものにどうしても携わる必要があったとも言及。「一大決心で2兆円近い借金をして買収、今に至るまで着々と返済している」と笑いを誘った。
松本氏は携帯電話事業について「利用料という形で毎月キャッシュを頂戴できるというビジネス。こんなにありがたいことはない」とも補足。市場で先行するauも当初は莫大な借金があったものの完済したとしており、定期的な現金収入がいかに重要であるかを強調していた。
加えて、日本市場の特殊性にもついても話は及んだ。「ヨーロッパの通信キャリアは、(端末開発で圧倒的優位を誇り)おいしいところの総取りするノキアを怖がっていた。アップルが持ち込んだiPhoneによって勢力図はさらに替わりつつある」とした上で、松本氏は「ヨーロッパのキャリアは日本の市場を羨ましがっている」と説明する。ただ日本はその通信キャリアの強大さゆえ、国内端末メーカーの“甘え”を生む一因にもなっているとも付け加えている。
一方で携帯電話市場は事業者数に制限があるため、寡占が発生しやすい側面もある。松本氏もこの点には危惧を表明しており、“なれ合いの競争”だけは防止せねばならないと語っている。
松本氏が示したボーダフォン買収の理由 | 純増シェア1位は26カ月連続 |
■日本メーカーは海外で通用する?
ソフトバンクモバイルではその事業開始に際し、廉売および販売奨励金によって収益不全に陥りがちだった端末販売について、割賦販売を導入して一定のマージンを確保できる体制を整備した。その対価として月額利用料の低価格化を実施したことで、全体としての売上は下がったもののコストを下げる効果もあり、結果的に「筋肉質な経営」を実現できたという。
また大手SNS「mixi」のトラフィックデータを例示し、PCよりも携帯電話からのアクセスが増加傾向にある点についても指摘。インターネットアクセスの主役は今後確実にPCから携帯電話へ移行すると予測した。
このほか携帯電話市場におけるiPhoneのインパクトの大きさについても松本氏は触れた。大きなタッチスクリーンや独特の操作性はユーザーに受け入れられ、「App Store」を通じて全世界へアプリケーション販売できる点はコンテンツ開発者にも大きな影響を与えたと説明し、「日本のケータイは根源的に負けている」と反省の弁も漏らした。
iPhoneの登場はユーザー・開発者双方に大きな影響を与えた | 日本国内メーカーは、iPhoneをきっかけに反省すべきだと指摘 |
この状況にあって日本メーカーは、海外市場へ進出可能なのだろうか。「サムスンやLGがやったことを徹底的に研究すべき」「建て増しに建て増しを重ねた田舎の温泉旅館ではないが、土台となるOSをしっかり構築して開発コストを圧縮せねば」と松本氏は提言。その上で「『死ぬ気でやる』という確固たる決意があれば、かならず成功できるはず」と、日本メーカーへの信頼感も示した。
講演終盤では自社ネットワークについての方向性についても説明。電波未到達エリアの解消に向けてアンテナ網の整備を着実に進めるほか、増大するトラフィックの流通経路として無線LANを積極的に利用する方針を示した。また将来的には700/900MHz帯の電波免許の取得にも意欲を見せている。
モバイル通信の課題。サービスエリアの充実にはセルの小径化が理想だが、現実問題への導入としてフェムトセルなども活用する | 将来のネットワーク計画。700/900MHz帯の取得は悲願という |
(森田 秀一)
2009/7/22/ 21:03