【CEATEC JAPAN 2012】
KDDI高橋氏、「3M戦略」の最新状況とSmart TV Boxを紹介


KDDI 代表取締役 執行役員専務の高橋誠氏

 幕張メッセで開催されているエレクトロニクス関連の総合イベント「CEATEC JAPAN 2012」の3日目、キーノートトラックの中で、KDDI 代表取締役 執行役員専務の高橋誠氏は、「KDDIが目指す3M戦略と今後の展望」と題した講演を行った。

 高橋氏はまず、KDDIの事業ビジョンとして3M戦略をイラストで解説。マルチユース、マルチネットワーク、マルチデバイスの3つがauを中心としてつながっているイラストを示し、「真ん中にauがあり、au IDという一つのIDで使えることがポイント」と述べた。

 続いて高橋氏は、その3M戦略を実現するための「スマートパスポート構想」を2012年1月に発表したことを挙げ、オープンなインターネットの世界をさまざまなデバイスからシンプルに安心して使えるようにするものだと説明。さらに、具体的なサービスとして「auスマートパス」「auスマートバリュー」の2つを紹介し、それぞれの最新状況を説明した。

auスマートバリューがもたらした効果

 固定回線とスマートフォンの利用料のセット割引である「auスマートバリュー」について、高橋氏は「スマートフォンを気軽に使ってもらうために、FTTHやCATVの提携事業者を巻き込んでやってきた」と述べ、FTTHの提携事業者が5社、CATVの提携事業者が98社178局であり、全国の世帯カバー率が約80%であることを紹介。さらに、2012年3月のサービス開始からの加入者数の推移を示し、契約者数が200万人を突破する勢いであることを説明した。

 また、「iPhone 5もスマートバリューに入れば、(パケット定額料が)3980円で利用できる」とアピール。実際に、iPhone 5の発売以降もスマートバリューへの加入が増加していると述べた。加えて、スマートバリューがauのスマートフォンを利用している家族全員に適用されることを取り上げ、「家庭内でもauの“連鎖”が起きてくれるとうれしい」と語った。

 高橋氏は、auスマートバリューをKDDIだけでなく、CATVなどの事業者とともにサービス展開していることについて、「こういった提携は、今後のマーケティングでは重要になっていく」と指摘。「どれほど広くのユーザーとどれほど深く関われるかは、マーケティング的にもユーザーにとっても大事。それがバリュー(価値)になる」と述べた。

 また、auスマートバリューがFTTH/CATVの提携事業者の売上増に大きく貢献していることや、提携事業者の解約率が以前と比べ3分の1以下に減ったことを紹介。「いろんな提携事業者とWin-Winの関係でプラットフォームを作っていく。それが3M戦略の根幹になる」と高橋氏は述べた。

auスマートパスと「うたパス」「ビデオパス」

 「500本以上のアプリが取り放題」などが目玉となる月額390円の「auスマートパス」が生まれた背景として高橋氏は、「スマートフォンの道先案内人として、(KDDIが)そのようなサービスを始めてもよいのではないか」という考えがあったと説明。また、「auスマートパスでもアプリ開発者とWin-Winの関係を築きたい」と述べ、現状、開発者への支払いはレベニューシェアではなく先行投資型であり、ユーザーが400万人程度に達しないと赤字であると明かした。

 高橋氏は、auスマートパスの加入者数の推移を示し、契約者が200万人を突破したことを紹介しつつ、「現時点では250万人を超えているのではないか」と話し、年内には300万人を目指すと述べた。また、auのAndroidユーザーの87%がauスマートパスに加入しており、スマートフォンには欠かせないサービスになっていると指摘。さらに、「LINE」などのauスマートパスのラインナップに新たに追加されたアプリやクーポンを紹介し、「会員数が増えるほど、サービスを充実させられる」と述べた。

 続いて高橋氏は、auスマートパスに加入しているとトライアルなどを受けられる「うたパス」「ビデオパス」についても紹介。月額315円で100万曲が聴き放題という「うたパス」について、「ジャンルなどにもとづいて、いろんな楽曲をレコメンドしてくれる」と特長をアピールし、「音楽を楽しんでもらうための入口として、新曲にも多く対応している」と述べた。また、映画やドラマなどが見放題の「ビデオパス」についても新作が多いことを特長として挙げた。そのうえで高橋氏は、「来年はこれらのサービスが躍進していくだろう」と語った。

 高橋氏は、「KDDIはデジタルコンテンツ屋ではない」と述べるとともに、「ネットワークの品質やセキュリティなどの面でユーザーに安心感を与え続けていかなければならない」とし、それが「パスポート」という考え方につながると語った。また、auスマートパスなどは、すべてau IDに紐付いており、スマートフォン、タブレット、パソコンといったマルチデバイスで楽しめることをアピールした。

Smart TV Boxについて

 次に高橋氏は、CATV向けに提供されるセットトップボックス「Smart TV Box」を紹介。「テレビの世界にインターネットを持ち込んでバリューを広げていく」と語った高橋氏は、Smart TV Boxの特長としてUIのわかりやすさを挙げ、「迷わない、シンプル、スムーズ」なものになっていると述べた。また、配線も3つのケーブルを接続するだけでよく、「すごい簡単」とアピールした。

 番組の録画やニコニコ動画の視聴、地元密着の生活情報の入手など、Smart TV Boxでできることを一通り紹介した高橋氏は、Androidがベースなので、どんなサービスでも乗っけることができる」と述べ、さらにauスマートパスやGoogle Playからアプリをダウンロードできることも強調。また、Smart TV Boxの電源を入れることでテレビの電源も入るように設定すれば、テレビを利用する際に、常にSmart TV Boxのホーム画面が接点となり、「テレビの使い方が変わるのではないか?」と語った。

 スマートフォンやタブレットとの連携についても触れ、タブレットにリモコンアプリをインストールすることでSmart TV Boxのリモコンとして使えることを説明。また、音声や手書きで番組を検索したり、スマートフォンをゲームのコントローラーとして使えるなど、さまざまな連携方法があることを紹介した。

 高橋氏は、Smart TV Boxにより「テレビを中心とした、新しいライフスタイルを提供できる」と述べたうえで、「来年はこの会場(CEATEC)も、そのような製品で溢れるのではないか?」と指摘し、「まず、それをKDDIが先にやる」と述べて講演を締めくくった。

 




(鈴木友博)

2012/10/4 20:46