【CEATEC JAPAN 2012】
ドコモ岩﨑氏、Xiやクラウドなどの幅広い取り組みを紹介


NTTドコモの岩﨑氏

 CEATEC JAPAN 2012のキーノートスピーチで、NTTドコモの代表取締役副社長の岩﨑文夫氏は「新たな成長に向けたドコモの取り組み」と題した講演を行った。

 まず岩﨑氏は、世界の携帯電話市場におけるドコモの位置を紹介する。2010年12月と2015年12月の予測値を比較し、アジア・太平洋とアフリカ・中央において大きな成長が見込めることを指摘。さらにドコモが世界の通信事業者の中でも、「契約者数では21位だが、売上高は4位。契約者あたりの売上高が非常に高いことになる。これはドコモだけでなくほかの日本のキャリアも同様」と解説する。

世界の携帯電話市場世界の事業者におけるドコモの位置
スマートフォンの出荷台数推移

 岩﨑氏は、売上が好調の要因は、データ通信だと説明する。ARPU(加入者あたりの月間売り上げ)に占めるデータ通信量の比率は、世界的にも増えているが、ドコモはiモードを始めた1999年から海外に先行して増え続けている。さらに直近の動きとしては、スマートフォンの普及も紹介する。たとえば2011年度、日本国内では4000万台の携帯電話が出荷され、スマートフォンはその50%を超えている。岩﨑氏は「スマートフォンの比率はこの後も高くなると予想している。私ども通信事業者としても、スマートフォンを便利に使っていただき、成長をしていきたいと考えている」と語った。

ドコモのスマートフォン販売台数とシェア

 同社のスマートフォンの販売数については、「今年度は1300万台を目標にしているが、すでに上期で600万台を超えている。量販店での販売シェアも、ドコモが約5割の数字を維持している。Android普及に手応えを感じている」と自信を示した。

 Xiについても、「サービス開始から1年9カ月が経とうとしている。国内には先行してサービスを開始し、600万契約を超える勢い。今年度末には1000万契約を超える」と好調さをアピール。ネットワーク整備については、「年度末には2万1000局以上となり人口カバー率は70%になる。2014年度末に人口カバー率98%を目指している」と紹介しつつも、「エリアについては各社いろいろな数字を出すのはどうかと思うが、ドコモは従来通り、人口カバー率で示す」とも語った。

 今後のXiの進化については、まずエリア拡大については、東海道・山陽。上越新幹線の全駅がエリア化したことに加え、2012年度末には全国8路線の新幹線全駅をエリア化するという。75Mbpsエリアについても、2012年度末までに一気に4000局にまで拡大し、全国政令指定都市と県庁所在地へ展開する。そしてその次の高速化、112.5Mbpsのサービスについては、他社に先駆け、2012年第4四半期から展開することを明らかにする。112.5Mbpsのエリアとしては、まずは盛岡市、仙台市、郡山市、新潟市、富山市、金沢市、小松市、福井市、松山市、徳島市、高松市、高知市、那覇市で提供されることも紹介された。

Xiの状況Xiの今後の強化。なお、NTTドコモでは、上越新幹線について全駅のエリア化が完了していないとして、プレゼンテーション資料の誤りを案内している
制御信号の抑制対策

 岩﨑氏はこうした高速化の一方で、ネットワークの強化についても言及する。スマートフォンは断続的な通信を行なうが、現状ではアプリごとに通信の前後に制御信号が必要になる。しかし無線接続の手順を見直すことで、連続して異なるアプリが通信する場合に制御信号を挟まず、ネットワークに接続されたままの状態とすることで、制御信号を約20%削減することに成功したという。先行的に実施されているとのことだが、今後は全国的に対応する予定。それと同時に、端末からの信号を抑制する対策も平行して行っているという。

 トラフィック対策としては、Wi-Fiの活用も進めている。ドコモが提供している公衆無線LANの「docomo Wi-Fi」は年度末には12万~15万スポット以上になるという。

端末の変化により潜在市場が顕在化する
ドコモのスマートフォン向けサービス

 続いて岩﨑氏は、サービス面での話題に移る。岩﨑氏は「モバイル市場にはこれまでもさまざまな可能性があったが、フィーチャーフォン時代は、料金や画面サイズなど、さまざまな制約があり、十分なポテンシャルを提供できなかった。これがスマートフォンやタブレットの時代になり、画面の大きさなどの課題が改善され、潜在市場が顕在化しつつある。これからの分野だが、映像やショッピングなどのコンテンツがブレイクすると手応えを感じている」と語る。

 ドコモの取り組みとしては、スマートフォン向けに「dメニュー」や「dマーケット」といったポータルを提供していることを紹介。dメニューには現在4600のサイトがあるが、これを2015年度には2万サイトまで増やすことを目標としているという。さらに直営マーケットであるdマーケットについては、2011年には約150万人に利用されていて、これを2015年度には2000万に使ってもらえると予想しているという。

 dマーケットについては、すでにMUSICストアやアニメストア、VIDEOストア、BOOKストアなどが提供されているが、このうちVIDEOストアは7月には200万契約を突破するなど非常に好調だという。こうしたデジタルコンテンツ系としては、今後はゲーム分野でも充実させていくとも語る。さらに非デジタルコンテンツとして、「リアルな商品をeコマースとして提供するなど、さまざまなサービスに拡大して、新たな成長につなげたい」との考えも語る。

 eコマースへの取り組みとしては、食品宅配事業のらでぃっしゅぼーやや通販のオークローンマーケティング、CD/DVD販売のタワーレコードなどと連携をしている。さらに物販を通じたマーケティングリサーチも行うという。

ドコモクラウドの進化について

 さらに岩﨑氏は、「ドコモクラウド」について、「ドコモはAndroidを中心にさまざまな端末をラインナップしている。ここから好きな端末をひとつ選んでもらい、どれを選んでも、キャリアが提供するインテリジェントなサービスを提供したいと思っている。お客さまのスマートフォンの状態、お客さまのデータをクラウド上で一元管理することで、より便利にパーソナルに使ってもらいたい。また、お客さまのデータ、たとえば電話帳やメール、履歴をドコモクラウドのさまざまなサービスにマイグレーションすることで、サービスのパーソナル化やマルチデバイス化に対応する」と説明する。

はなして翻訳

 ドコモクラウドの具体的なサービスとして、岩﨑氏はまず「はなして翻訳」を紹介する。これは他言語の話者との通話中に、互いの言語を翻訳するという機能。通話時の利用では英中韓に対応し、目の前の人との会話で翻訳機能を使う場合は10カ国語に対応する。このサービスは11月1日より開始される。音声認識や翻訳はドコモのクラウド上で処理されるもので、岩﨑氏は「キャリアならではのサービス」と紹介する。

しゃべってコンシェル

 岩﨑氏はすでに3月1日より提供されている「しゃべってコンシェル」についても紹介する。Androidアプリとして提供されているしゃべってコンシェルは、9月末時点で396万ダウンロードがあり、約1.8億のアクセスがあったという。ここまで使われている理由として岩﨑氏は、「ドコモがAndroid中心に機種をそろえているのが大きい」との見解を述べた。似たようなものとして、6月1日より開始しているメール翻訳コンシェルについては、すでに64万ダウンロードがあり、9月末時点で約1600万のアクセスがあったという。

クラウド電話帳/クラウドメール

 今後の展開としては、今冬から電話帳やメールをクラウドでも扱えるようにするとも紹介する。その活用方法について岩﨑氏は、「たとえばスマートフォンとタブレットを持っている人が、スマートフォン側で電話帳を更新したら、タブレットの電話帳が同時にアップデートされるようになる。メールも同じアカウントならばスマートフォンでもタブレットでも見られるようになる。これをドコモクラウドで実現したい」と説明する。さらにドコモクラウドの応用として、「個人プロファイルを活用すると、いろいろな応用ができるのではないかと考えている。たとえばメールアドレスを変更したとき、友人に一斉に通知を送信するとか、SNSでつぶやいた内容を電話帳に登録している相手に通知するとか」などの考え方も語った。

グローバル展開について

 今後のビジネスとしては、「グローバルへの展開が重要な分野になる」とし、ドコモのグローバル展開についても紹介する。

 これまでのドコモのグローバル展開としては、インドのタタやフィリピンのPLDTなどに出資したり、国際間のキャリアアライアンスであるCONEXUSなどを展開してきたが、これからの展開として岩﨑氏は「キャリアへの直接出資と言うより、上位のプラットフォームレイヤーに参加したい。具体的にはイタリアのボンジョルノの買収や中国バイドゥとのジョイントベンチャーなど、プラットフォーム事業に積極的に取り組み、M2Mやコンテンツアグリゲーション、金融・決済のプラットフォームの分野で世界と連携し、グローバルにコンテンツを配信できる基盤を作っていきたい」と語る。

コンテンツのグローバル展開

 たとえば日本でドコモ向けに提供されているコンテンツを、ドコモが橋渡し役となり、提携しているプラットフォーム事業者やオペレーターに提供する仕組みを考えているという。おサイフケータイについても、「スマートフォンへのNFC搭載で、海外でも非接触の配信サービスが活発化すると思っている。現在の日本のおサイフケータイを拡大し、グローバルに展開したい。旅行先での買い物に非接触が使えたり、逆に日本に来られた方も便利に使えるといったグローバルな使い方が活性化するのではないか」との考えを語った。

M2Mのグローバル展開

 もうひとつのグローバルとして、機器間通信、いわゆるM2Mの分野でのグローバル化も考えているという。その例として岩﨑氏は、建設機械へ搭載される通信機器を挙げる。岩﨑氏は、「建設機械は、日本で作られた機器が世界中で使われている。そういった中で、M2Mモジュールのお客さまからは、『窓口を統一して欲しい』という要望をもらうことがある。M2M内蔵の機器を海外で使うとき、それぞれの事業者と契約する必要があるが、そこをドコモがまとめて契約し、請求して欲しいという。M2Mの世界においても、グローバルに一元管理が必要ということで、プラットフォームのグローバル化を進めている。現在、米国のジャスパー・ワイヤレスと提携し、一元的な要望に対応できる体制を整えている」と説明した。
$$cler

新たな市場の創出に向けて

 最後の岩﨑氏は、「コンテンツ、サービス、M2Mのそれぞれの領域でグローバルに展開し、成長していきたい。私どもはモバイルの会社だが、さまざまな企業とアライアンスを組み、新たな価値を創造していきたい。らでぃっしゅぼーやとの取り組みなどを紹介したけど、これらもその先駆け。ドコモの通信事業者としての使命は、お客さまをネットワークに接続していくことだが、スマートライフの分野でも成長していきたい」と語り、講演を締めくくった。




(白根 雅彦)

2012/10/4 19:30