驚くほど回り続ける超精密コマ


1円玉より小さいが、非常に精密なコマ

 「全日本製造業コマ大戦」というものをご存知だろうか。先日パシフィコ横浜にて行われたテクニカルショウヨコハマという技術系展示会中の催し物の一つなのだが、これがまたなんとも凄いのだ。精密製造業者が、徹底的に吟味された素材を使い、加工技術の粋を尽くして手回しコマを作って喧嘩ゴマをするという、エクストリームコマ回し大会だ。その優勝企業である由紀精密という会社から、一般向けのコマが発売されているので早速購入して見た。

 由紀精密の精密コマは、ステンレス製のかなり小さなコマだ。1円玉よりも小さく、軸を指でつまむと指の下端がコマに触れるほど小さい。先述の大会で使用されたのはタングステンと銅の合金で、これよりもふた周りほど大きい。市販向けということで、高価になりすぎない素材を選択したものと思われるが、加工に関しては手が抜かれていない。コマの先端に至る円錐は恐ろしく滑らかで、頭頂部は刺さるほどの鋭さを持っている。軸のグリップ部分に施された滑り止めのローレット加工も精密で、指にピッタリと吸い付いてくる。

 実際に回した様子は、動画を見てほしい。リリースすると、ゆっくりと円を描くのが見て取れると思う。そのコマ自体が描く綺麗な円軌道から、きっちり重心が取られている精巧さがうかがえる。その後、動画では早送りにしているが、ゆっくりと軌道を収束させ、静止したように一点で回り続け、やがて停止する。コマを回転させているテーブルの表面に微少な凸凹があるため、ストップウォッチによる計測は2分20秒だったが、条件が整えば3分以上回り続ける。市販品でこの精度ということは、大会に使用したコマは何分回り続けるのか、想像もつかない。

 大会のルールとして定められているのは、コマの直径と手で回すことのみで、あとは喧嘩ゴマと同様、相手のコマをはじきつつ相手よりも長く回り続ければ勝利だ。材質はどんな高価なものを使用しても構わないので、おそらく1個当たりの金額は非常に大人げないものになっていることだろう。一方、優勝者が参加者全員のコマを総取りするという点は昔ながらのルールを踏襲している。次回大会の開催は未定だが、開催の暁にはさらに強力なコマが生み出されることだろう。次回の開催と、大会優勝コマと同等品の発売を強く希望したい。


とても美しい円錐滑り止め加工が手に吸い付き回しやすい

 

コマが回転する様子

 

製品名製造元購入価格
SEIMITSU COMA由紀精密840円

 

(ナカムラ)

2012/3/8 06:00