本日の一品

256個のLEDで“水”を再現する「LED流体キーホルダー」

 最近は「推し活」の世界にもデジタル化の波が押し寄せ、写真や動画を持ち歩いて表示できるeBadgeも珍しくなくなった。筆者も以前、丸形カラー液晶に写真や動画を表示できるeBadgeを紹介したことがある。

 今や小さな液晶画面をバッグにぶら下げるくらいでは驚かない時代である。ところが今回見つけたモノは、画像を見せるのではなく「動き」そのものを見せるガジェットだった。小さな正方形の表面には多数のLEDが並び、本体を傾けると、まるで浅い容器に半分ほど入れた水が重力に従って流れるように動くのである。

メガネと比べてもわかる小さなLED流体キーホルダー

 まずは静止画より動画を見ていただくのが一番早い。本体を右に傾ければ光の粒が右へ、左なら左へ、ひっくり返せば一斉に下へと流れていく。しかも単純にLEDが順番に点灯するだけには見えず、粒同士が押し合い、盛り上がり、崩れていくような妙にヌメヌメ、モコモコした動きをする。これがなかなか気持ちいい。

傾きに合わせて256個のLED上を“水”が流れる。拡大して見ても楽しい

 販売元によって外装には違いがあるようで、筆者が購入したのは白い正方形フレームのモデルだ。丸形や黒いフレームなども見かける。商品名も販売店ごとに一定せず「LED流体モーションデスクトップオーナメント」など、例によって説明を全部詰め込んだような長い名前が付いている。本稿では単純に「LED流体キーホルダー」と呼ぶことにした。

写真や動画を表示するeBadgeとは目的も仕組みも異なる
リング付きでバッグチャームとしても使いやすい

 表示面をよく見ると、一般的な液晶ディスプレーとはまったく違う。LEDは縦16×横16の合計256個。わずか256ドットしかない。スマートフォンならアイコンひとつを描くにも足りないような解像度だが、この製品ではそれで十分なのである。

スマホの上に置くと1インチクラスの小ささがよくわかる
表示面は16×16、わずか256個のLEDで構成
拡大すると独立したLEDが格子状に並んでいるのがわかる

 では、なぜ256個の光だけで「水」に見えるのか。

 内部構造を分解確認したわけではないので推測を含むが、本体には加速度センサーとマイコンが搭載されており、センサーから得た重力方向を基準に、仮想的な粒子を16×16のマス目上で移動させていると考えるのが自然だ。各LEDをひとつの容器、あるいは一粒の水を表す場所として扱い、傾きに応じて粒子を下方向へ移動させ、周囲が埋まっていれば横へ逃がす。これを高速で繰り返せば、極めて少ないドット数でも液体が流れ、積もり、崩れるような動きを作れる。

傾ければ重力方向へ光の粒が集まって“水面”を作る

 つまりこれは高精細ディスプレーの対極にあるガジェットだ。256個しかないLEDだからこそ、一粒一粒が実体のある光として見え、それがかえってデジタルな砂や水のような質感を生んでいる。

 筆者の購入したモデルには、この流体表示以外にも「LOVE」の文字が順番に現れる表示と、ハートが呼吸するように明滅する表示があり、3種類を切り替えられる。本体を勢いよく振ることで表示が順次切り替わるようなのだが、筆者が操作方法を完全に理解していないだけなのか、これが意外と強く振らないと切り替わってくれない。

 一方、静止状態が一定時間続くと自動的に即消灯し、再び持ち上げたり動かしたりすると表示を再開する。バッグチャームとして使うなら、この省電力動作は合理的だ。

USB Type-Cから充電。モバイルバッテリーでも問題ない

 充電はUSB Type-C。本体が小さいだけに特別な充電器を持ち歩く必要がなく、一般的なUSB ACアダプターやモバイルバッテリーから充電できるのはありがたい。

 出荷状態ではリングの付いたキーホルダー仕様だが、ネックレスにしたり、バッグの持ち手にチャームとして取り付けたりしても面白いだろう。

筆者はブラックのトートバッグにチャームとして装着

 筆者は現在、このLED流体キーホルダーを愛用のブラックのトートバッグに取り付けている。昼間は周囲が明るいので存在感はそれほどでもない。しかし夜になると話は別だ。黒いバッグの上で緑色の光がモコモコ、ヌメヌメと流れ続ける。わずか1インチほどなのに目立ち度はなかなかである。

 面白いのはバッグを持って歩いている時と、テーブルの上に置いた時で見え方が変わることだ。バッグにぶら下げている時は、薄いボトルの中に半分ほど水を入れて横から眺めるような動きになる。ところがバッグを机上に寝かせると、今度は水平面に広がった光の粒を上から見ることになる。

 感覚的には、四角いガラス製の浅いシャーレのような容器に少量の液体を閉じ込め、それを上から眺めているようでもある。液体など一滴も入っていないのに、傾けるたびに「重さ」のようなものまで感じてしまうところが面白い。

 高解像度化ばかりがディスプレーの進化ではない。わずか16×16、256個のLEDでも、センサーとリアルタイム演算を組み合わせれば、人間の目には十分「水」に見える。静止画や動画を表示するeBadgeが「何を見せるか」のガジェットなら、こちらは「どう動きを見せるか」だけで成立しているガジェットなのである。

 1000円少々で、役に立つ機能はほとんどない。しかしバッグが動けば中の“水”も動く。歩けば揺れ、置けば静まり、持ち上げればまた目を覚ます。高精細でもAIでもない256個のLEDが、物理法則らしきものを身につけただけで妙に生き物っぽく見えてくる。こういう目的不明の小さな電子玩具こそ、筆者には実用ガジェットとはまた違った魅力がある。

製品名発売元実売価格
水波の流れをシミュレートしたデスクトップ発光オーナメント-2068円