本日の一品

10年経った今なら新製品としても通りそうな「Useless Box」

 ケータイ Watchの読者諸兄は海外で「Useless Box」(使い物にならない箱)と呼ばれたり「役に立たない機械」と呼ばれている奥の深いレガシーなガジェットをご存じだろうか? 筆者が初めて知ったのは今から10年ほど前の何回目かのブームの時だった。

「Useless Box」は150×86×68㎜程度の木箱に単純なメカと奥深い着想の盛り込まれた歴史ある「うんちく系ガジェット」だ

 つい最近、30代~60代までかなり年齢層の広い数人が集まった時にその話をしたら全く知らない人が半数以上も居た。その時はその話題から発展して、さまざまなことを話した。そして“流行”というのはその対象者が最大の好奇心を持っていた時期に遭遇したかどうかで流行として決定づけられるのかもしれないと考えた。

 筆者も少し興味を持って調べてみたら「Useless Box」の着想の起源は今から100年くらい前のイタリアの某デザイナーにまで遡るらしい。どうも昨今は動画配信のお陰でメカニカルな動作ばかりが際立って見えてしまう「Useless Box」だが、この100年の間にその影響は芸術や情報理論の分野まで拡大していったようだ。

 現在の「Useless Box」「役に立たない機械」という装置は、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授で人工知能研究の草分けであるマーヴィン・ミンスキーが大学院生だった1952年に発明したといわれている。

 その動作は極めてシンプルだ。箱についている野球のバットの様な小さなスイッチを倒して「オン」にすると、箱の中から手の形をしたロボットアームが現れ、スイッチを倒して「オフ」にしてまた箱の中に素早く消えて行くという単純なモノだ。

上面の蓋は一方は蝶番とパチン錠で固定されトグルスイッチの付いた物。もう一方は内部のロボットアームが押し上る蓋

 3年ほど前に変なガジェットを中国発のAliExpressで買ってから、毎週のようにいろいろな怪しいアイテムの紹介が筆者の元には送られてくる。ある時、今回ご紹介するUseless Boxもいろいろ送られてくる中の一つとして紹介されていたので一番安いレガシーなタイプを買ってみた。

 おそらく10年経っても50年経ってもシンプルな構造の機械は、ほかの複雑な応用製品が増えても、その基本は何も変わらないのだろう。「Useless Box」は10年前に興味を持った時と今も全く外観や機構に変化はない。心持ちスピードがアップしたのと安くなった感じがするが気のせいかもしれない。

 「Useless Box」の素材は木だ。最近はアクリル製や昔もあったと思うがDIYのキット版も提供されている。2個の上蓋は観音開きで左右に開く。一方はロボットアームが押し上げる軽い蓋。もう一方は蝶番とパチン錠で固定され、上面に小さなトグルスイッチが取り付けられ、トグルスイッチ側を指した矢印と共に“PUSH”と印字されている。

トグルスイッチのバーを前に押し倒すと超短いショーのスタートだ

 まずは、実際の動作を見てみよう。実際の速度だとかなり高速で、スローモーションでも撮影してみた。機械のメカニズムは極めて単純だが指先でトグルスイッチを向こう側に倒して次にロボットの指先が押し戻すまでのスピードはなかなかだ。どんなタイミングで押しても、見事に間髪を入れずレスポンスするのは素晴らしい。

普通の速度で撮影したらメカの動作速度が速すぎてよく分からない
ロボット指の動きが見えるようにスローモーションでも撮影してみた
スローだと人がトグルスイッチを押すと直ぐに反応しているのがよく分かる

 内部のメカは簡単に見ることができるので、さっそくロックのかかっていない方の蓋を開けてみると、内部のメカが半分見える。続いてロックのかかっている側も開けてみるとメカの全容が見える。動力は単4アルカリ乾電池2本とモーターだ。シンプルなメカは蝶番とパチン錠のある蓋の裏側にネジ付けされている。

2個のパチン錠を開けると内部のメカの全容を見ることができる
最初に目に入るのは指の格好に加工したアクリル板をカットしたモノ。素材のアクリルは少し興ざめだ。ここはやはり同じ硬い木で作って欲しい
単4アルカリ乾電池2本で動作する。ロボットアームがトグルスイッチを押し戻すトルクはなかなかパワフルだ
コンパクトで250g前後なので、どこにでも持っていってデモできる

 昔のロボットアームはアクリル製ではなかったような気がするが、コストと加工の容易さ、強度を考えると最適な素材に行きついたのだろう。ちょっと残念だ。おそらく骸骨の手が出てきてコインを棺桶内に引きずり込む貯金箱や可愛い猫やワンコの手が出て来て取り込む貯金箱も「Useless Box」の応用製品だ。

 ガジェットの目的は、まずは自分で楽しむこと。そして、2番目は友人知人にお披露目して、驚く顔や呆れた顔を見ることだ。「Useless Box」は実測250gと、どこにでも持って行ける重さだ。令和5年の今まで、何度となく”なんちゃって新製品”として登場したアイテムに世の中がどういう反応をするか楽しみだ。

 ここ何十年かの間に何度も新製品として登場しては消えてはまた登場してきている“消しゴム芯軸付きシャープペンシル”や“ノック音のしない(静かな)ボールペン”“永遠に書ける永久鉛筆”(エターナルペンシル)などなど、どうも短命で終わる製品ほど時間が経過すると“新製品”として再登場することが多いイメージだ。

 冒頭でも書いたように“流行というのはその対象者が最大の好奇心を持っていた時期に遭遇したかどうかで決定づけられる”と言うのが納得感がある。買う側の認知も同様だ。一方、作る側にとっては、たとえ従来からあったモノでも「再発明」や「再定義」は超便利な言葉でメディアも受け入れの抵抗感は少ない。

 そういう意味では「Useless Box」は今までにきっと何十回も再発明、再定義されてきたガジェットであり、これからもその蓄積は益々増えていくだろう。アイデアの創生やうんちくの為にも一家に1台“使い物にならない箱”は置いておきたい時代だ。

【お詫び】
 記事初出時、動画のリンクに誤りがあり視聴できない状態になっていました。現在はすでに修正済みです。

商品購入価格
Useless BoxAliExpress(中国)1800円前後