本日の一品
スマートフォンをより身近にしてくれるワイヤレスイヤホン「Xperia Ear Duo」
2018年8月16日 06:00
Xperia Ear Duoは「環境音を完全にスルーする」というちょっと変わった特徴を持つ、左右分離型ワイヤレスイヤホンだ。
イヤーピース部分が輪っかになっていて、装着していても周囲の音がほぼそのまま聞こえる。ノイズキャンセリングヘッドホンや遮音性のあるカナル型イヤホンなどとはまったく逆の発想の、ちょっと変わったワイヤレスイヤホンである。
装着方法はちょっと変わっていて、イヤーピース部と本体で耳たぶを挟むような構造になっている。これが意外としっかりしていて、しっかり引っ張らないと外れることはない。また、音を伝える管は耳たぶの下を通るようになっていて、耳たぶの上側にはなにもなく、筆者のようなメガネっ子にとっては、シュア掛けイヤホンよりも邪魔にならず、耳が痛くなるようなこともない。もちろん左右分離型なのでケーブルタッチノイズとも無縁だ。
純粋な音楽鑑賞に向いたデバイスではない。音質というものは個人の好みの話だが、同価格帯のオーディオ製品と比べると、低音やディティールは物足りなさを感じる。そもそもかなり静かな環境でないと、音楽が環境音に負けてしまうし、だからといって環境音が聞こえないくらい音量を上げるとなると、Xperia Ear Duoの意味がない(最大音量もそんなに大きくない)。
しかし環境音が完全に聞こえるので、「ながら」で使うのにむいている。徒歩や電車での移動中に使っても、周囲のアナウンスや警報などを聞き逃さない。家事などの作業中にも使いやすいし、カナル型イヤホンで気になる咀嚼音もないので飲食中にだって使える。仕事中でも着用しっぱなしにできるかも知れない(職場の理解が必要だが)。なにも聴かないときでも装着しっぱなしにしておける気軽さのあるデザインとなっている。
音楽以外にも、radikoなどのラジオ、Audibleなどのオーディオブックの聴取にも向いている。もちろん音声通話もできるし、アプリや動画の音声を聴くのにも使える。そしてXperia Ear Duoは「ながら」で使いやすいので、家事をしながらオーディオブック、歩きながら電話、ソロ呑みしながら野球中継などができる。
しかしこのXperia Ear Duoは、そうしたコンテンツ聴取だけでなく、GoogleアシスタントやSiriといった音声アシスタントの利用にもフォーカスしてデザインされている。むしろそちらの方が特徴的だ。
といっても、残念ながら音声アシスタントを呼び出すのは、Xperia Ear Duo本体をタッチ操作する必要がある。「OK Google」や「Hey Siri」などのウェイクワードは、現時点ではウェアラブルデバイスに搭載するのは困難だからだ。作業をしながら使うにはハンズフリーかどうかは大きな違いとなるので、せめてヘッドジェスチャーで音声アシスタントを呼び出せるようなアップデートを提供して欲しいところだ。
Androidスマートフォンでは音声アシスタントとして「Googleアシスタント」、独自の「Assistant for Xperia」、LINEの「Clova」、NTTドコモのユーザーなら「my daiz(しゃべってコンシェル)」を使える。ロングタッチやダブルタップなど全5種類のタッチ操作に別々の機能を割り当て可能で、上記の音声アシスタントだけでなく、独自の通話機能「Anytime Talk」、時刻やニュースなどを読み上げる「デイリーアシスト」、「近日中の予定」、「メッセージに返信」といった機能も割り当てできる。実用度の高いカスタマイズ性だ。
さらにAndroidスマートフォンでは通知があったとき、その通知を読み上げることもできる。両手を使う作業中でも、周囲に「通知を確認している」ということを知られずに、通知を確認できるというのは、このXperia Ear Duoならではの体験だ。ホワイトリスト式で許可したアプリからの通知しか読み上げられないので、ちゃんと設定しておけば邪魔になることないし、読み上げ途中で首を振るジェスチャーでキャンセルもできる。このあたりも含めて実用性が高い。
一方、iPhoneではAndroidスマートフォンに比べると、機能がかなり制限される。音声アシスタントはSiriがロングタッチで呼び出せるだけだ。操作のカスタマイズもできず、新着通知の自動読み上げもない。Siriはロック解除せずに「新着通知は?」と聞いても読み上げしないなど、iOSの制限もあるので仕方ないところだが、せめて操作カスタマイズがもう少しできればな、とも思うところだ。現状では通知確認もSiriも、Apple Watchの方が圧倒的に使いやすい。
あとiPhoneでは音質モードを「再生時間優先」と「音質優先」に切り替えられるが、「音質優先」だと遅延が大きいので、動画やゲームでは使いづらい。しかしほかのモード固定のヘッドセット製品だと、遅延が不可避だったりするので、そうした製品に比べると選択できるというのは親切な仕様だ。
GoogleアシスタントでもSiriでも、スマートフォンを取り出さずに音声アシスタントが使えるのは、たとえハンズフリー操作でなくても、大きな進歩である。スマートフォンを取り出すのが面倒なくらいの小さな用件、たとえばお店で「30分後に来てください」みたいなことを言われたとき、Xperia Ear Duoをタッチするだけで、すぐに音声コマンドでスケジュール入力なりタイマー設定できる。いままで面倒でやらなかったことが、やっても良いかなと思えるくらい手軽になる。これは大きな違いだ。
ちなみにXperia Ear Duoには左右両方に2個ずつ、合計4個のマイクで指向性のあるアレイマイクが構成されているようで、そこそこ騒音がある場所でも、音声コマンドを認識させることができる。ここまで音声認識を重視したヘッドセットはかなり珍しい。
「なんらかのコンテンツを聴取していないときにも着けっぱなしにしやすい」というのがXperia Ear Duoの最大のポイントだ。いつでも着けっぱなしにしていれば、着信通知確認や通話などの受動的な用途でも使いやすいし、音声アシスタントなどが必要になったときにすぐに使える。耳を塞いで環境音が聞こえなくなる普通のイヤホンでは、そうそう着けっぱなしにはできない。ここの違いがXperia Ear Duoとほかのイヤホンとの違いである。
Xperia Ear Duoは常時着用することで、スマートフォンの各種機能を身近にしてくれるデバイスだ。筆者はそこに魅力を感じ、最近は外出時にほぼ必ず着用している。価格的にはワイヤレスイヤホンとしてはやや高価だが、コスト以上の価値のあるデバイスとなってくれそうだ。
製品名 | 発売元 | 実売価格 |
---|---|---|
Xperia Ear Duo | ソニー | 2万6146円 |