本日の一品
“そろばんキーホルダー”とは呼びたくない“ひと桁そろばん”
2018年7月2日 06:00
月に一回はやる面白文具だけをターゲットにした人力ネットクローリングとWebショッピングで、グッタリと肩の力が全部抜けてしまいそうなアイテムを見つけて反射で買ってしまった。
買ったのは“そろばん”の生産では日本一の兵庫県に次いで生産量の多い島根県にある「雲州そろばん協業組合」の「そろばんキーホルダー 1桁」という歯切れの悪いネーミングの商品だ。このコラムでは筆者は勝手に「ひと桁そろばん」と呼ばせて頂く。
実は筆者の幼少の頃は、小学校に入ったら、普通の子供は書道と珠算塾に習い事に行くのが当たり前だった。ここ30年ほど減り続けている珠算塾だが、最近は、某国立大生の多くが子供の頃にそろばんをやっていたとかで、急に人気復活らしい。
思い出せば、筆者も珠算塾に通っていた子供の頃は、3桁×3桁のくらいの掛け算は、そろばんなしで、軽く暗算でやっていたような記憶がある。小学校の上級生の時に珠算能力検定試験で2級まで行った筆者だが、残念ながら今では2桁の足し算すら危うい状況だ。
愛用だったそろばんも既にどこかに行ってしまい、自宅には、電卓が統合された某社の怪しいそろばんだけが本棚の奥で見つかった状況だ。実用としてのひと桁そろばんの出来不出来はひとまず置いておいて、その効能はいろいろありそうだ。
話は変わるが、同じように1つだけではほとんど無意味なパソコン用のキースイッチを1個だけ使い、キートップを押すと内蔵されたLEDが発光するという変なガジェットが売られている。
ネットサーフィンして遊んでいたら、なんと同じようなひと桁そろばんで“合格祈願”に効果があるというアイテムを見つけた。親父ギャグか駄洒落以下かもしれないが、“5”と“9”が表現できるので、“合格”(たぶん5か9で“ごかく”)らしい。おバカな筆者としては賞状を贈りたい心境だ。
子供の頃テレビで観たそろばんをマラカス代わりに振り回す変なおじさんが使っていたように、音のするガジェットは魔除けとか悪魔祓い系には効果がありそうだ。
そんな影響ではないが、筆者も友人たちと、“CTRL”、“ALT”、“DEL"の3つのキーしかない超おバカなガジェット「KACHA」(カチャ)を国内のクラウドファンディングで支援者を募ったら、なんとこんなおバカに付き合ってくれるバカ友が何百人も居ることが分かって、それが一番嬉しかった。ひと桁そろばんも、きっとそんなユーザーが支えている変態商品だ。
ひと桁そろばんも極めて一般的なそろばんとそっくりに、丁寧に作られているが、唯一残念なのは、両側にそろばん珠が溢れていて、車輪のような格好になっていることだった。ここは、やはり普通のそろばんのように机の上に置いて珠をはじけるようにしてほしかった。それができるなら、ひと桁そろばんを複数個買って自由な桁数のマイ・カスタムそろばんも可能だった。
筆者は、この「ひと桁そろばん」を会う人ごとに自慢するために、まだしばらくは話題になることの多い超小型スマホ「Jerry Pro」のストラップホルダーに、前述の孤独なキースイッチと一緒に取り付けて持ち歩いている。
さて、一般的なそろばんは、小さなものでも13桁や15桁、あるいは17桁、普及商品は23桁や27桁などの奇数の桁数を持つのが一般的だ。そういう観念で考えれば、ひと桁そろばんの商品説明には、「この商品はアクセサリーとしての用途しかございませんので、正確な計算をすることはできません。ご了承くださいませ。」と断り書きが入る理由も分からないではない。
しかし、ひと桁そろばんは、1円から9円まで、そして業界によっては、1億円~9億円まで、時には9兆円……をはじいて相手に指し示せるという表現力はあるはずだ。金額単位を露骨に示せない世界や“円”という単位を省略する業界もまだまだ多い。
そういう意味では、ひと桁そろばんは、最小の奇数である“1”桁でいくらでも表現できる。浪速の商人のように対面するバイヤーにひと桁そろばんで数値を示してみるのはどうだろうか? ちなみに残念ながら筆者愛用のブラウンの超ビンテージな電卓では9億円には1円足りない……
製品名 | 販売元 | 購入価格 |
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そろばんキーホルダー 1桁 | 山田文具店 | 1296円 |