本日の一品

機能性ばっちりで運用コストもリーズナブル、手書きメモをデジタル化するスマートパッド「Bamboo Spark」

 スマートフォンが登場したころ、「これでデバイスに手書きができるようになってメモがいらなくなるぞ!」と思ったものだが、現実はそう甘くはなかった。

 実用に耐え得るのはApple PencilやSurface Pen、Sペンを使ったiPad ProやSurfaceシリーズ、またGalaxy Noteくらいではないかというのが実感。とはいえ、そのどれもいいお値段がする。スマートフォンやタブレット本体だけではなく、Apple PencilやSurface Penといった周辺デバイスだけでも1万円超えと、安くはない買い物だ。

 もっと手軽に手書きをデジタルに取り入れたい。そう考え続けていたときに出会ったのが、ワコムとスマートパッドシリーズ「Bamboo Folio」と「Bamboo Slate」だ。2016年に発売されたどちらの製品も、本または板のような本体の定位置に置いた紙に、電池のいらない専用ボールペンで書(描)いていけば、本体がその筆跡を記憶し、スマートフォンまたはタブレットへ「Inkspace」アプリを通して転送できる、というデジアナ文具だ。

Bamboo Spark
下部にある電源ボタン。ちなみに、SlateやFolioは、ボタンひとつだけとシンプルになっている
充電用Micro-USBポートは上部に
不用意に開くことのない留め具(物理)

 Sparkは、Folio同様の本タイプ。見開きの内側に筆記用のメモをはさんでおけるため、紙がぐしゃぐしゃになることはない。スマートパッドシリーズは、どれも1024段階の筆圧を感知し、およそ100枚のメモの内容を本体に記憶する。

 サイズは、SlateとFolioがA4とA5の2種類、SparkがA5サイズのみ。筆者が手にした2015年版と、その後に登場した2016年版の大きな違いは、スマートパッドへの筆記をペアリングしたモバイルデバイスにリアルタイムに反映する「ライブモード」があるかないかというところ。

 逆に、手書き文字をInkspaceアプリでテキスト化する「Ink to text lite」機能は、Sparkでは標準でついてくるが、SlateとFolioでは、無料の「Inkspace Basic」か月額300円(税抜)の「Inkspace Plus」に登録する必要がある。

「共有」アイコンをタップするとさまざまなエクスポート方法が表示されるので「Ink to text」を選択。言語は日本語を選択する。テキスト化したメモはさまざまなアプリと共有可能

 使用開始前にやっておきたいのが、モバイル端末とのペアリング。これは電源を入れたあと、本体中央部にあるボタンを5秒ほど長押しし、ペアリングしたいモバイル端末でInkspaceアプリを立ち上げ、案内に従って操作していくだけで完了するので非常に楽だ。

ペアリングはスマートフォン標準の「設定」からではなくInkspaceアプリから行う。アプリの指示に従っていくだけなので、比較的簡単にペアリングできる

 あとは、通常の紙に書いていくように、Sparkにセットしたノートに書(描)いていき、書き終わった時点でボタンを短押しするだけ。これだけでモバイル端末にメモデータが転送(同期)されるのだ。

書き終わったら本体中央部のボタンを短押しする。これだけで転送完了

 ちなみに、ボタン上部に搭載されているLEDのカラーは通常緑色。書いている最中は点滅もしくは点灯の色が青へと変化する。これは、転送前または記憶前のデータがあることを示す。ボタンを短押しすると、ペアリングしたモバイル端末でInkspaceアプリが立ち上がっていれば転送するし、単体で使っている場合はページ送りをし、それまで書いていたぶんが本体に記憶される。記憶したメモデータは、Sparkの電源が入っている状態でモバイル端末のInkspaceアプリを起動した際に自動的に転送(同期)されるようになっているので、うっかりスマートフォンを忘れてしまった場合でも安心だ。

 アプリでできることは多彩すぎて、ここに書ききれないのだが、特に便利だと感じているものに「結合」「分割」という機能がある。

 これは、別々に保存したメモをひとつにまとめたり、またひとつのメモを好みの箇所で分割するというもの。分割機能では、下に表示されるスライダーを操作する。スライダーを左に動かせば記録していったものを巻き戻していくことができ、逆に右に動かせば順に送られる。録音データの後ろの部分をトリミングするような感覚で、書いたものをトリミングできるのだ。

メモ一覧画面で、右上に表示されているメニューから「選択」を選び、結合したいメモを複数選択後、再度メニューから「結合」をタップする。分割したい場合は、メモを開いてからメニューの中の「分割」をタップ。スライダーの操作で任意の書きかけ部分まで戻し、右上に表示されるチェックマークをタップする。なお、スライダーで戻した箇所より後に筆記した部分は、別のメモとして保存される

 トリミング部分のメモは別のメモとして保存されるので、後で必要になった場合は参照できるし、分割前のメモやそのほかのメモと結合することも可能。紙のメモの切り貼りのようなイメージでメモデータを扱える。

 ワコムストアでは、専用のメモパッドを販売しているが、Sparkは、A5サイズ以内で厚さ5mmまたはシート枚数50枚以内のメモやノートであればほとんどのものに対応している。チラシの裏でもいいし、レストランの紙ナプキンでもいい。運用コストが超リーズナブルなのだ。

 ちなみに、ボール紙台紙からの厚さが8mmを超え、シート枚数も80枚あるメモパッドRHODIA No.16(A5サイズ)で試してみたところ、難なく記録・転送できた。RHODIA好きにはうれしい誤差。手持ちのRHODIAを流用できるし、限定版が出た際に購入の言い訳もできる。

多少、厚みがあっても問題なく認識された。積極的に使っていきたい

 SparkはBambooが販売するスマートパッドシリーズの中でも古いバージョンに当たる製品だが、ライブモードが使えないだけでそのほかの機能は最新バージョンと同等。型落ちのため、ワコムストアでは販売終了しており、Amazonやビックカメラ通販サイトなどでわずかに売られている程度ではあるが、デジアナ文具がほしい、試してみたいと考えていた人にはぜひともオススメしたい一品である。

製品名提供元価格
Bamboo Spark with gadget pocketワコム1万600円(税込)