TASCAM iM2を外見で衝動買い!!

スタパ齋藤
1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコ ンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称 衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。


TASCAM iM2を外見で衝動買い!!

 2011年11月21日にTEAC(ティアック)からiOSデバイス用のステレオコンデンサーマイク「TASCAM iM2」が発表された。あ!! 超タスカムっぽいティアック製品!! カッコイイ!! とか思ってしまった。

ティアックのiOSデバイス用のステレオコンデンサーマイク「TASCAM iM2」。サイズは58.6×56.8×19mmで、重さは30giPhone 4にセットすればリニアPCM録音ができるようになる。アプリは「TASCAM PCM Recorder」が無償提供されているiM2のパッケージ。バタ臭くも素っ気ない独特の雰囲気がある。ヨドバシのネット通販にて7980円(10%還元)で購入した

 TASCAM iM2はiPad/iPad 2/iPhone 4/iPhone 4S/iPod touch(第4世代以降)のドックコネクターに接続するステレオコンデンサーマイク。これをiPhoneなどに接続すると、iPhoneなどをリニアPCMレコーダとして使えるようになる。つまりiPhone/iPad/iPod touchを、音楽CDクオリティ(16bit/44.1kHz)で録れる高音質音声レコーダーとして使えるようになるという製品だ。

 が、俺の場合はボイスレコーダーもリニアPCMレコーダーもたくさん持っているので、iM2を購入する理由をどうにか捻出しなければならない。このカッコ良いハードウェアとそれを機能させるためのカッコ良いソフトウェアこと「TASCAM PCM Recorder」は手に入れなければならない。なぜならばカッコイイからである。

 んんん……あ!! 俺の最強に強まってるiPhone 4Sの前に使っていたiPhone 4!! 機種変後に3G回線使えなくなってからはゲーム専用機っぽくなっている!! これをボイスレコーダー兼ナマロクマシンとしても大活用してゆきたい!!

 と、理由ができたところでポチッとな。ヨドバシのネット通販にて7980円(10%還元)で購入した。ので、以降、iM2の使用感などを中心にレポートしてみたい。


カッコイイけどiOS絡みの問題アリ

 購入直後のiM2に対する印象を言えば、想像したほどはカッコ良さを持たないハードウェアだったりした。触れてみると全体的にプラスチック感が強めで、重厚な感じではないんであった。やや残念。でも黒いiPhone 4と一体化させ、アプリを立ち上げたときの佇まいはイカス!! ヨシとしてゆきたい。

手に持つとこんな感じマイク側から見た様子机の上に置いたろころ

 iM2を早速使い始めたが、イキナリいくつかの問題に遭遇した。まず、iM2をiPhone 4Sに接続すると、3GやWi-Fiの接続を見失いがち。3Gは圏外になり、Wi-Fiは未接続状態になる。ただ、どのタイミングでそうなるかの再現性が見えない。でもまあ、だいたい結局は接続が切れちゃうという印象だ。

 なお、このネットワーク切断状態になった後、iM2を外すと3G接続は間もなく復帰する。が、Wi-Fi接続は復帰せず、いったんiPhone 4SのWi-Fiをオフにしてからオンにする操作が必要だった。

iPhone 4SにiM2を接続すると、間もなく3G接続が切断されてしまうことが多々あるさらにWi-Fi接続も切断されてしまったりする。印象は「いつも切断される」的なこのようにキャリアの表示が消え、さらにWi-Fiが未接続になってしまうのである

 iPhone 4とiM2を接続すると、Wi-Fiの接続が切断されることはナイように思う。手持ちのiPhone 4には3G回が線入ってないので、3G回線が切断されるかどうかは不明だ。また、iPad 2とiM2を接続した場合、3GもWi-Fiも切断されたことはなく正常に動作している。

 この症状、iM2のみの問題ではなく、ほかのドックコネクター接続ハードウェアでも起きているんだそうだ。どうやらiOS側の問題らしい。なお、上記のようにネットワーク接続が切断されてもiM2やTASCAM PCM Recorderアプリは問題なく動作している。

 それから、iM2での録音は、iOS端末がスリープに移行した瞬間に終了する。ので、iM2を使う場合は事前に「iOSデバイス側の自動ロックをオフ」にしておく必要がある。

 ほか、iM2での録音は、着信があった場合やヘッドホンプラグの抜き差しが行われた場合にも自動終了する。ので、3G回線入りiPhoneなどで使う場合は「機内モード」にするのが無難。また、機内モードでiM2を使い、使用後にiM2を外して機内モードをオフにすれば、3GやWi-Fiの接続は問題なく復帰する。「iM2使う時は機内モード」と覚えておけば、無用なトラブルは避けられますな。

 あと、iPhone 4Sなどにヘッドホンをつないだまま、iM2を接続すると、ヘッドホンに音声が出力されなかったりする。iOSはヘッドホンの抜き差しで入力を切り替えているとのことで、この状態だとiM2からの入力を正常に受けられないようだ。なので、この場合はヘッドホンジャックの抜き差しを行えば問題は解消する。この問題を回避するには、iPhoneなどにiM2を接続してからヘッドホンを接続するようにすればよい。

 てなわけで、iOS側の問題や仕様からくる問題がいくつかあるiM2ではある。問題回避のために、iM2を使うときは「フライトモードにして、自動ロックはオフにし、iM2を接続してからヘッドホンをつなぐ」と覚えておくといいだろう。


サクッと使える簡便さが好感触

 さて、iM2の使用感だが、全体的に容易かつシンプルに使えて好感触。扱いやすくて良いと思う。

 まず本体だが、サイズは58.6×56.8×19mmで質量は30gと非常にコンパクトで軽い。スイッチ類はリミッターボタンと入力レベルダイヤル程度で、電源スイッチはない。iOSデバイスから給電されて機能するが、iOSデバイスに接続中は電源が入った状態となる。マイクは手前から向こう側まで180度の範囲で向きを変えられる。ちなみに、TASCAMロゴがある側をこちらに向けて見た状態で、左側がLチャンネル、右側がRチャンネルとなる。

iM2本体。サイズは58.6×56.8×19mmで質量は30g。小さく軽いステレオコンデンサーマイクだ裏面と左右側面。このUSBコネクタへUSB給電することで、iOSデバイスを充電しながら使えるリミッター機能のためのスイッチや入力レベル調節のためのツマミを備える。シンプルですな
マイクは180度回転する。赤いラインがマイクが向く方向だこのように180度の範囲/無段階でマイクの向きを変えられる単一指向性のコンデンサマイクがこのように内蔵されている

 マイクが回転するので、手前に向けてボイスレコーダー然として使えて、音源に向ければリニアPCMレコーダーとして使える。左側面にあるUSBコネクタにUSB給電すれば、つまりポータブルなUSBバッテリーなどをつなげば、iOSデバイスを充電しながらiM2での録音などを行える。長時間の議事録音や演奏録音などにも安心して使えますな。

 実際に操作すると、レベル調節ダイヤルが小型なのでやや操作しにくかったりはする。が、頻繁に操作するものでもないし、リミッター機能を使えるので、突然の大音量に焦ってレベル調節をし直すような必要もなく、まあ手軽でいいんじゃないかと思う。ただ、ケースや風防の類は付属も別売もされていないのが少々残念だ。

 次にiM2用に無償提供されているTASCAM PCM Recorderアプリ。このアプリではiM2での録音/再生ができる。ほか、ファイル管理や楽曲共有サービスのSoundcloud(サウンドクラウド)を経由しての音声共有なども行える。

 録音はステレオ/モノラルを切り替えられ、ローカットフィルターや音質補正イコライザー(入出力時に使用可能)も使えるが、リニアPCMレコーダーの機能としては必要最小限という印象だ。録音ファイルが増えてくると扱いにくい側面もあるが、iM2本体と同様、アプリもまたシンプルに利用できる。

TASCAM PCM Recorderアプリの表示例。録音や再生は一般的なリニアPCMレコーダーと同様に行えるロックを機能させたところ。タッチ操作で使うレコーダーなので、誤操作防止に非常に役立つ機能だ再生中に、プログレスバーを操作すれば再生位置を即座に変えることができる。なかなか便利な機能
ローカットフィルターやイコライザー、リミッターなど、付加機能は必要最小限だが、十分に実用的録音は音楽CD品質(16bit/44.1kHz)のWAVファイルとしてアプリ内に保存される録音したWAVファイルをSoundcloudにアップロードして共有することもできる
ファイル名は年月日+番号だが、変更することもできる。もちろん日本語対応重要なファイルは名前を変えておくと見つけやすい録音したファイルはiTunes経由でPCへもっていける

 アプリに関して個人的に残念なのが、録音したWAVファイルはiTunes経由でPCに転送するか、Soundcloud経由で共有/転送するかしないと、ほかの機材やアプリで流用できないこと。メールに添付して送信とか、Evernoteに送信とか、そーゆーコトはできないもよう。素材として使うWAVファイルをiM2とTASCAM PCM Recorderアプリで録音すると、WAVファイルの取り出し方法が少ないのでやや扱いにくいかもしれない。

 まあ、16bit/44.1kHzのWAVファイルが生成されるので、それをモバイルで手軽にファイル送信ってのは無理があるかもしれない。16bit/44.1kHz/stereoの場合、1分の録音が10MBくらいになるので、3G回線でサッと送信ってわけにはいきませんな。WAVファイルをMP3ファイルに変換するなどの機能とセットで、メール送信やEvernoteなどとの連携機能が加わると有り難い。

 それと、iM2はほかのサウンド系アプリの録音用マイクとしても機能する。つまりは汎用マイクになるので、サウンドの利用幅はアプリ次第で広げられる。試したところ、iOS 5の標準アプリのボイスメモ、GarageBandPortastudioなどで使えた。

iM2とiOS 5標準アプリのボイスメモを組み合わせて使えたiM2はGarageBand上で録音するためのマイクとしても使えたPORTASTUDIOアプリと組み合わせての利用も、もちろん可能

 生楽器など演奏する方は、iM2+iPad+PORTASTUDIOアプリ、てな感じで曲作りすると楽しいかもしれませんな。単純明快に重ね録りで曲作り。非常にスマートな録音環境かも。


高音質を気軽に楽しめる

 最後に音質だが、ボイスレコーダー~ナマロク用の機材としては、まずまず悪くないという印象。現在はより本格的で比較的に安価なリニアPCMレコーダーが多々あるので、iM2の音質的な強みはあまりないように思う。iOSデバイスを持っていれば8000円程度の出費でそこそこ高音質のリニアPCM録音を行えるようになる、てなあたりがメリットだろうか。

 実際に録音してみてプチ気になったのは、録音レベルを上げて小さい音を録ろうとすると、小さなノイズが乗ること。使用時の環境から来るものかもしれないが、静かな状況で断続的な小さい音を録るなどするとき、ヘッドホンを使ってモニタしているとこのノイズが聞こえてくる。ただ、気になるとか致命的ってレベルではなく、連続的に鳴る音源だと聞こえなくなるし、環境的な雑音があればそれに掻き消される程度の非常のノイズだ。

 それ以外はとくに気になった点はない。音の細部まできめ細かくしっかり録れるし、左右の分離が良いからか定位感にも優れているように思う。iPhoneとかで気軽に高音質なステレオ録音ができるって愉快ですな。

 ともあれ、以下に拙宅にて録音したサンプルをいくつか。どれも静かな環境下で身近な音を録ったものだ。なお、録音はiM2とiPhone 4およびTASCAM PCM Recorderアプリを使い、アプリのイコライザーは標準のままの設定で、リミッターはオフにしている。ヘッドホンを使うと音質を詳細に確認できると思う。




【カメラのシャッター音】机上にiM2を置き、その上でカメラで撮影。カメラの動作音だ【猫のゴロゴロ音】寝ている猫の間近にiM2を寄せ、猫がゴロゴロいう音を録った【時計の秒針が動く音】置き時計の前にiM2をセットして秒針が動くときの音を録った


【キーボード打鍵音】キーボードの前にiM2を置いて打鍵した音。左右の分離も良好【紙にペンで書く音】机上にiM2を置き、その前で紙にボールペンで書く音を録った

 iPhoneは密度が高くて重めでシットリした手触りなので、iPhoneにiM2をセットして録音するとき、持つ手/操作する手からくるノイズも少なくて良い。が、それでもiPhoneなど端末からiM2を離して使いたいこともある。

 ので、試しにDOCK延長ケーブルでiOS端末とiM2を離して使ってみたら、普通にうまくいった。使用した延長ケーブルは、ELECOMのiPhone用Dock延長ケーブルMPA-EDシリーズとTSdrenaのDockコネクタ延長ケーブルだ。

 ただし、これらDOCK延長ケーブル使用時、前述のノイズが少し大きくなった。iM2の場合「本体にA/Dコンバーターを搭載しているためiPhoneとはデジタル接続」のハズで、こういうケーブルによるノイズ増加は考えにくいが……ナゼだろう。

 とは言っても、前述のように「録音レベルを上げて小さい音をヘッドホンでモニタしつつ録ると聞こえてくることがある」という程度のノイズ。なので、そういう特殊な状況でない一般的な用途では、やはり気づかない程度のノイズだと思う。

 てな感じで、全体的に好印象なiM2。8000円前後という実勢価格から考えれば、音質も実用性も十分に高いレベルにあると思われる。前述のようにDAW系アプリなんかとの相性も悪くないので、iOSデバイスで音遊び~音楽製作をしている方も、ぜひ一度チェックしてみて欲しい。



2011/12/19 06:00