スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」
キヤノンの「ポケット望遠鏡カメラ」はスマートフォンの親友となるか?
2021年2月15日 06:00
PowerShot ZOOM、デジカメ入りの単眼鏡だゼ!!!
2020年12月10日に発売された“ポケットサイズの望遠鏡型カメラ”ことキヤノン「PowerShot ZOOM」。2020年9月にクラウドファンディングで登場した時に「アーッ!!! コレはスマートフォンのカメラ機能の弱点をガッツリ補ってくれそうーッ!!!」と思い、(一般販売決定後に)予約購入した。
PowerShot ZOOMの焦点距離(35mm判換算/以下同)は100mmと400mmの2段切替式だ。また、2倍のデジタルズームも搭載しているので、800mm相当の焦点距離でも撮影できる。これら焦点距離を望遠鏡の倍率にすると1.2倍/4.8倍/9.6倍となる。
一方でスマートフォンの光学ズームの焦点距離は、望遠性能が非常に高いものでも150mm前後。PowerShot ZOOMは「スマートフォン光学ズーム限界の先」までカバーした望遠専用カメラというわけだ。しかも光学式手ブレ補正機構搭載。デジタルズームを使えば800mm相当の撮影も♪
今時のスマートフォンは超広角撮影に対応しているものの、やっぱり望遠撮影には弱いんスよね〜。PowerShot ZOOMとスマートフォンの内蔵カメラを併用すれば、非常に幅広い被写体に対応できるであろー。
てなわけで以降、PowerShot ZOOMのレビューをお届けしてゆきたいッ!!! もちろんスマートフォンと併用した場合の使用感もビシッと!!!
100mm・400mm・800mmの望遠って、どんなふうに見えるの?
PowerShot ZOOMは前述のとおり100mmと400mmの焦点距離を使える望遠鏡で、4倍の光学ズームとなる。だが、100〜400mmの間を自由にズームできるわけではない。100mmと400mmを切り替えて使い、途中の焦点距離は使えない。また、デジタルズーム(2倍)を使えば800mmの焦点距離も使えるので、3段階の焦点距離を切り替えられる望遠鏡ということになる。なお、ファインダーは電子ビューファインダー(0.39型/約236万ドットカラー電子ビューファインダー)。
デジタルカメラとしては、有効画素数約1210万画素の撮像素子(1/3型CMOSセンサー)を搭載し、JPEG静止画(4000×3000ピクセル)とフルHDのMP4動画(1920×1080/29.97・23.98fps)を撮影できる。他詳細は公式ページにあるスペック表(https://cweb.canon.jp/camera/dcam/lineup/powershot/zoom/#spec)をご覧いただければと思う。
ともあれ、100mmと400mmと800mmの焦点距離(望遠鏡倍率1.2倍/4.8倍/9.6倍)を切り替えて使えるデジタルカメラ機能を内蔵した映像機器がPowerShot ZOOMというわけだ。焦点距離から望遠専用となる。なかなか割り切った映像機器だ。
だ〜いたいの使い方は上の写真でおわかりいただけたと思うが、さて、実際にどんな感じの映像が撮れるのか? スマートフォンで撮った写真と合わせて、PowerShot ZOOMで撮れる写真をご覧いただこう。
ちなみに、PowerShot ZOOMの最大望遠は800mm(400mmの2倍デジタルズーム)で、iPhone 12 Pro Maxの最大望遠は12×。撮像素子画素数が違うなど条件の違いは多々あるが、これら2機種の最大望遠での写真をほぼ同じ見栄えにトリミングして比べてみると↓こんな感じになる。
現状のスマートフォンの望遠撮影の技術面を考えたら、望遠撮影専用機でもあるPowerShot ZOOMと比べるのは酷だと言えるが、それにしても全く画質が違うのであった。遠くに見える光景を撮って、SNSなどに投稿したり、あるいは視野の記憶として残すとしたら、やはりPowerShot ZOOMが魅力的だ。
PowerShot ZOOMの使い勝手は?
PowerShot ZOOMは望遠倍率1.2倍/4.8倍/9.6倍(焦点距離100/400/800mm)を切り替えられる望遠鏡。搭載するデジタルカメラ機能は静止画と動画を撮影可能。そして光学式手ブレ補正機構を搭載している。そのあたりが、まあぶっちゃけ、「PowerShot ZOOMの使い勝手のほぼ全て」と言っていいだろう。わりと単純明快に使える映像機器なのである。
PowerShot ZOOM本体には、合計6つのボタン類しかない。電源ボタン、ZOOM(SET)ボタン、MENUボタン、PHOTO(静止画)ボタン、REC(動画)ボタン、視度調整ダイヤル。
このうち、PowerShot ZOOMで見たり撮ったりしている時に操作すると思われるボタンは3つ。ZOOM(SET)ボタン、PHOTO(静止画)ボタン、REC(動画)ボタンだ。
3つのボタンだけで使えちゃうのであった。操作に迷いようがないのである。
ただ、最初少し使い慣れないと、「今、シャッターボタン押したけど……撮れたのかな?」ということがある。撮影が無音で行われるからだ。シャッター音が出ないカメラなのであった。
なお、静止画撮影の瞬間には画面周囲に一瞬だけ白枠が表示される。動画撮影中には画面右上に赤いインジケーターが出つつ画面左下に動画記録時間が表示される。
PowerShot ZOOM本体にはMENUボタンがある。MENUボタンを押すと細かな機能を使うことができる。細かな機能? たとえば露出補正だったり連写だったり。でも、撮影時に役立つ機能はそのくらい。なので、MENU自体も非常にシンプルなのだ。
MENU少なっ!!! この点からもPowerShot ZOOMにできることが少ないこと=非常に単純明快に使えることがわかる。てゅーか、こういう機器に詳しくなくても、誰でも楽しめる映像機器と言えよう。
あと、PowerShot ZOOMはスマートフォンと無線接続できる。無線接続すると、撮った映像をスマートフォンに転送したり、細かな機能設定を行える。
スマートフォンとの接続は、最初の設定も、次からの接続も、まずまず容易な部類。スマートフォンと接続する時にPowerShot ZOOMのファインダーを覗いての操作が必要になるが、ボタンを見るとファインダーが見えないので、ボタン位置を指で覚えるまで若干扱いにくく感じる。本体のみでMENU操作を行うときも同様だ。
それとPowerShot ZOOMとスマートフォンを接続してのライブビュー撮影。PowerShot ZOOMを手で持った状態でライブビュー撮影を行うと、ライブビュー映像に若干の遅延があることからファインダー像が定まりにくい。PowerShot ZOOMを三脚に固定したいところだが、PowerShot ZOOMには三脚ネジ穴がナイのであった。
あとこの望遠鏡っていうかデジタルカメラ、俺的には手に持ちづらい。望遠鏡として使うだけなら問題ナイしファインダー映像もキレイで実用的。なのだが、撮影しようと思うと、結局は親指でシャッターボタンを押すことになり、PowerShot ZOOM自体をホールドしづらいのだ。両手で本体をホールドしつつシャッターボタンを押したくなる。
もうひとつ、PowerShot ZOOMはUSB充電して使う映像機器なのだが、USB-ACアダプターに「USB Type-C、PD(Power Delivery)対応、出力電圧/出力電流:9VDC/2A(18W)以上」という条件がある。両端がUSB Type-CのUSBケーブルを使い、USB-ACアダプターとしてPD対応/18W以上のものを使わないと充電できないのであった。その件は公式ページのSPEC欄に明記してある(https://cweb.canon.jp/camera/dcam/lineup/powershot/zoom/#spec)。同じ欄にメーカー推奨USB-ACアダプターも大紹介してあるョ!!!
といった感じで、簡単には使えるものの、所々にクセがあったりするPowerShot ZOOM。この斬新な望遠専用のデジタルカメラ付き望遠鏡に対し、何となくの興味で手を出すと、「設定時の操作性が悪い!」「撮影時のホールド感が悪い!」「USB-PDじゃないと充電できない!」「そのくせミョーに高価!」と不満が多数出るかもしれない。でもスマートフォンの相棒として使うと超楽しいョ!!!
こ〜んな写真が撮れるのであった♪
最後に、PowerShot ZOOMで撮った写真を何点か。主に風景を撮ってみたが、それぞれ4枚組。1枚目が「肉眼で見たのと同程度の画角の写真」で、2枚目〜4枚目はPowerShot ZOOMを望遠倍率1.2倍/4.8倍/9.6倍(焦点距離100/400/800mm)にして撮った写真となる。
てな感じで撮れるのであった。手ブレ補正機構のおかげで、手ブレになっている写真は意外なほど少なかった。速く飛ぶ鳩を追いきれずに被写体ブレしている写真はあったが、まあでも全体的によく撮れるPowerShot ZOOM。
やっぱりこの映像機器、スマートフォンの相棒として非常に楽しい。スマートフォンではどうにも撮りづらかった望遠撮影であり、撮れても画質的に疑問符が付いたりしたが、PowerShot ZOOMにはそういう鬱憤がない。スマートフォンの望遠撮影に物足りなさを感じているなら、ぜひ一度、PowerShot ZOOMに触れてみてほしい。