スタパ齋藤の「スタパトロニクスMobile」

キヤノンの「ポケット望遠鏡カメラ」はスマートフォンの親友となるか?

PowerShot ZOOM、デジカメ入りの単眼鏡だゼ!!!

 2020年12月10日に発売された“ポケットサイズの望遠鏡型カメラ”ことキヤノン「PowerShot ZOOM」。2020年9月にクラウドファンディングで登場した時に「アーッ!!! コレはスマートフォンのカメラ機能の弱点をガッツリ補ってくれそうーッ!!!」と思い、(一般販売決定後に)予約購入した。

キヤノン「PowerShot ZOOM」はデジカメ機能を備えた望遠鏡。片目で覗く単眼鏡タイプだ。手のひらサイズで、35mm判換算焦点距離で100mmと400mmの望遠〜超望遠撮影に対応する。光学式手ブレ補正機構も搭載。スマートフォンと連携させても使える。キヤノンオンラインショップ税込価格は3万5750円

 PowerShot ZOOMの焦点距離(35mm判換算/以下同)は100mmと400mmの2段切替式だ。また、2倍のデジタルズームも搭載しているので、800mm相当の焦点距離でも撮影できる。これら焦点距離を望遠鏡の倍率にすると1.2倍/4.8倍/9.6倍となる。

 一方でスマートフォンの光学ズームの焦点距離は、望遠性能が非常に高いものでも150mm前後。PowerShot ZOOMは「スマートフォン光学ズーム限界の先」までカバーした望遠専用カメラというわけだ。しかも光学式手ブレ補正機構搭載。デジタルズームを使えば800mm相当の撮影も♪

 今時のスマートフォンは超広角撮影に対応しているものの、やっぱり望遠撮影には弱いんスよね〜。PowerShot ZOOMとスマートフォンの内蔵カメラを併用すれば、非常に幅広い被写体に対応できるであろー。

 てなわけで以降、PowerShot ZOOMのレビューをお届けしてゆきたいッ!!! もちろんスマートフォンと併用した場合の使用感もビシッと!!!

100mm・400mm・800mmの望遠って、どんなふうに見えるの?

 PowerShot ZOOMは前述のとおり100mmと400mmの焦点距離を使える望遠鏡で、4倍の光学ズームとなる。だが、100〜400mmの間を自由にズームできるわけではない。100mmと400mmを切り替えて使い、途中の焦点距離は使えない。また、デジタルズーム(2倍)を使えば800mmの焦点距離も使えるので、3段階の焦点距離を切り替えられる望遠鏡ということになる。なお、ファインダーは電子ビューファインダー(0.39型/約236万ドットカラー電子ビューファインダー)。

レンズ部。100mmと400mmと800mmの焦点距離(望遠鏡倍率1.2倍/4.8倍/9.6倍)を切り替えて使える。上部にある2つの穴はマイク
焦点距離の切り替えは本体上部のZOOMボタン押下。押すごとに100mm→400mm→800mm(デジタルズーム)→100mm……と切り替わる

 デジタルカメラとしては、有効画素数約1210万画素の撮像素子(1/3型CMOSセンサー)を搭載し、JPEG静止画(4000×3000ピクセル)とフルHDのMP4動画(1920×1080/29.97・23.98fps)を撮影できる。他詳細は公式ページにあるスペック表(https://cweb.canon.jp/camera/dcam/lineup/powershot/zoom/#spec)をご覧いただければと思う。

 ともあれ、100mmと400mmと800mmの焦点距離(望遠鏡倍率1.2倍/4.8倍/9.6倍)を切り替えて使えるデジタルカメラ機能を内蔵した映像機器がPowerShot ZOOMというわけだ。焦点距離から望遠専用となる。なかなか割り切った映像機器だ。

こんな感じで持って使う
上部のZOOMボタンを押して焦点距離(望遠倍率)を変更
本体下部手前には静止画撮影用シャッターボタン(PHOTO)と動画撮影用ボタンがある。その上にあるツマミは視度調整ダイヤル

 だ〜いたいの使い方は上の写真でおわかりいただけたと思うが、さて、実際にどんな感じの映像が撮れるのか? スマートフォンで撮った写真と合わせて、PowerShot ZOOMで撮れる写真をご覧いただこう。

iPhone 12 Pro Maxの0.5×で撮ったもの。超広角ぅ〜♪
iPhone 12 Pro Maxの1×撮ったもの。肉眼で感じられる風景よりちょっと広い範囲が写っているという感じ
iPhone 12 Pro Maxの2.5×撮ったもの。iPhone 12 Pro Maxの光学ズーム最大倍率となる
PowerShot ZOOMの100mmで撮ったもの。望遠鏡倍率1.2倍で、そーんなには望遠って感じでもない。iPhone 12 Pro Maxの光学ズーム最大倍率である2.5×より、ちょっと遠くが見えるという感じ
PowerShot ZOOMの400mmで撮ったもの。望遠鏡倍率4.8倍で、よくある望遠鏡より少し視野が広い(被写体を引き寄せられない)という印象だ。しかしiPhone 12 Pro Maxの光学ズーム最大倍率2.5×と比べると「スゲく望遠している」という感覚になる
PowerShot ZOOMの800mm(400mmの2倍デジタルズーム)で撮ったもの。望遠鏡倍率9.6倍で、望遠鏡としては「ちょっと倍率が高め」という感じ。ただ、ここでの一連の写真においては「ザ・望遠」って感じがする

 ちなみに、PowerShot ZOOMの最大望遠は800mm(400mmの2倍デジタルズーム)で、iPhone 12 Pro Maxの最大望遠は12×。撮像素子画素数が違うなど条件の違いは多々あるが、これら2機種の最大望遠での写真をほぼ同じ見栄えにトリミングして比べてみると↓こんな感じになる。

こんなような風景を、iPhone 12 Pro MaxとPowerShot ZOOMの最大望遠で撮り比べてみた。桟橋先端にいる鳥を狙って撮影
これはiPhone 12 Pro Maxの最大望遠。デジタルズーム倍率が約5倍と高めなので、画像細部がかなり荒れてしまう
こちらはPowerShot ZOOMの最大望遠。もともと光学望遠がiPhoneより高倍率で、さらにデジタルズーム倍率は約2倍と抑えめなので、細部までなかなかクリアに描写している

 現状のスマートフォンの望遠撮影の技術面を考えたら、望遠撮影専用機でもあるPowerShot ZOOMと比べるのは酷だと言えるが、それにしても全く画質が違うのであった。遠くに見える光景を撮って、SNSなどに投稿したり、あるいは視野の記憶として残すとしたら、やはりPowerShot ZOOMが魅力的だ。

PowerShot ZOOMの使い勝手は?

 PowerShot ZOOMは望遠倍率1.2倍/4.8倍/9.6倍(焦点距離100/400/800mm)を切り替えられる望遠鏡。搭載するデジタルカメラ機能は静止画と動画を撮影可能。そして光学式手ブレ補正機構を搭載している。そのあたりが、まあぶっちゃけ、「PowerShot ZOOMの使い勝手のほぼ全て」と言っていいだろう。わりと単純明快に使える映像機器なのである。

PowerShot ZOOMは、使い勝手としては単純明快。電源を入れ、ズーム倍率を3段階から選んで、シャッターボタンを押して静止画や動画を撮るだけ

 PowerShot ZOOM本体には、合計6つのボタン類しかない。電源ボタン、ZOOM(SET)ボタン、MENUボタン、PHOTO(静止画)ボタン、REC(動画)ボタン、視度調整ダイヤル。

 このうち、PowerShot ZOOMで見たり撮ったりしている時に操作すると思われるボタンは3つ。ZOOM(SET)ボタン、PHOTO(静止画)ボタン、REC(動画)ボタンだ。

PowerShot ZOOMで見たり撮ったりしている時、多くのユーザーが使うボタンは3つだけ。※図はメーカー公式サイトより抜粋

 3つのボタンだけで使えちゃうのであった。操作に迷いようがないのである。

 ただ、最初少し使い慣れないと、「今、シャッターボタン押したけど……撮れたのかな?」ということがある。撮影が無音で行われるからだ。シャッター音が出ないカメラなのであった。

 なお、静止画撮影の瞬間には画面周囲に一瞬だけ白枠が表示される。動画撮影中には画面右上に赤いインジケーターが出つつ画面左下に動画記録時間が表示される。

 PowerShot ZOOM本体にはMENUボタンがある。MENUボタンを押すと細かな機能を使うことができる。細かな機能? たとえば露出補正だったり連写だったり。でも、撮影時に役立つ機能はそのくらい。なので、MENU自体も非常にシンプルなのだ。

MENUはこれら4ページしかない。露出補正やドライブモード(変えると連写が可能になる)以外は、あまり変更する必要がないように思われる。MENUから画像の再生や消去もできるが、これらはスマートフォンと無線接続して行うほうが快適であり効率的だ

 MENU少なっ!!! この点からもPowerShot ZOOMにできることが少ないこと=非常に単純明快に使えることがわかる。てゅーか、こういう機器に詳しくなくても、誰でも楽しめる映像機器と言えよう。

 あと、PowerShot ZOOMはスマートフォンと無線接続できる。無線接続すると、撮った映像をスマートフォンに転送したり、細かな機能設定を行える。

スマートフォン用アプリ「Camera Connect」を使うと、スマートフォンとPowerShot ZOOMを無線接続して利用できる。できることは、たとえばPowerShot ZOOM内の映像をスマートフォン上で表示したり、スマートフォンへと転送したり
リモートライブビュー撮影にも対応。スマートフォンをファインダーとして利用しつつ、スマートフォンからズーム倍率を変えたり単写/連写を変更したりできる
写真への位置情報付加、時刻やエリアの設定、ファームウェアアップデートなども専用アプリから行える

 スマートフォンとの接続は、最初の設定も、次からの接続も、まずまず容易な部類。スマートフォンと接続する時にPowerShot ZOOMのファインダーを覗いての操作が必要になるが、ボタンを見るとファインダーが見えないので、ボタン位置を指で覚えるまで若干扱いにくく感じる。本体のみでMENU操作を行うときも同様だ。

 それとPowerShot ZOOMとスマートフォンを接続してのライブビュー撮影。PowerShot ZOOMを手で持った状態でライブビュー撮影を行うと、ライブビュー映像に若干の遅延があることからファインダー像が定まりにくい。PowerShot ZOOMを三脚に固定したいところだが、PowerShot ZOOMには三脚ネジ穴がナイのであった。

PowerShot ZOOMを三脚に固定したい場合、スマートフォンホルダーなどを利用するのが手軽だ。写真はスマートフォンホルダーにPowerShot ZOOMを挟みつつ、ゴム(モビロンバンド)で固定した様子

 あとこの望遠鏡っていうかデジタルカメラ、俺的には手に持ちづらい。望遠鏡として使うだけなら問題ナイしファインダー映像もキレイで実用的。なのだが、撮影しようと思うと、結局は親指でシャッターボタンを押すことになり、PowerShot ZOOM自体をホールドしづらいのだ。両手で本体をホールドしつつシャッターボタンを押したくなる。

ただ持って望遠鏡として使うには悪くない形状。だが、親指でシャッターボタンを押すとなると、PowerShot ZOOMを片手でしっかりホールドするのがやや難しい

 もうひとつ、PowerShot ZOOMはUSB充電して使う映像機器なのだが、USB-ACアダプターに「USB Type-C、PD(Power Delivery)対応、出力電圧/出力電流:9VDC/2A(18W)以上」という条件がある。両端がUSB Type-CのUSBケーブルを使い、USB-ACアダプターとしてPD対応/18W以上のものを使わないと充電できないのであった。その件は公式ページのSPEC欄に明記してある(https://cweb.canon.jp/camera/dcam/lineup/powershot/zoom/#spec)。同じ欄にメーカー推奨USB-ACアダプターも大紹介してあるョ!!!

 といった感じで、簡単には使えるものの、所々にクセがあったりするPowerShot ZOOM。この斬新な望遠専用のデジタルカメラ付き望遠鏡に対し、何となくの興味で手を出すと、「設定時の操作性が悪い!」「撮影時のホールド感が悪い!」「USB-PDじゃないと充電できない!」「そのくせミョーに高価!」と不満が多数出るかもしれない。でもスマートフォンの相棒として使うと超楽しいョ!!!

こ〜んな写真が撮れるのであった♪

 最後に、PowerShot ZOOMで撮った写真を何点か。主に風景を撮ってみたが、それぞれ4枚組。1枚目が「肉眼で見たのと同程度の画角の写真」で、2枚目〜4枚目はPowerShot ZOOMを望遠倍率1.2倍/4.8倍/9.6倍(焦点距離100/400/800mm)にして撮った写真となる。

公園の池にいた水鳥を撮ってみた。10mくらい遠くにいる水鳥がよく見える
遠くのスワンボートを撮影。距離は50〜60mくらいだろうか。9.6倍(焦点距離800mm:デジタルズーム)で撮れば、ボートに誰が乗っているかまでわかりそう
スワンボードが係留してある桟橋。桟橋の先にいる鳥を狙ってみた
100〜120mくらい先? の池の端の上空に鉄塔があるのでソレを撮ろうとしたら……鳩の群れが飛び始めたので、鳩を狙ってみた。けっこうシッカリ写ってるぅ〜♪

 てな感じで撮れるのであった。手ブレ補正機構のおかげで、手ブレになっている写真は意外なほど少なかった。速く飛ぶ鳩を追いきれずに被写体ブレしている写真はあったが、まあでも全体的によく撮れるPowerShot ZOOM。

 やっぱりこの映像機器、スマートフォンの相棒として非常に楽しい。スマートフォンではどうにも撮りづらかった望遠撮影であり、撮れても画質的に疑問符が付いたりしたが、PowerShot ZOOMにはそういう鬱憤がない。スマートフォンの望遠撮影に物足りなさを感じているなら、ぜひ一度、PowerShot ZOOMに触れてみてほしい。

スタパ齋藤

1964年8月28日デビュー。中学生時代にマイコン野郎と化し、高校時代にコンピュータ野郎と化し、大学時代にコンピュータゲーム野郎となって道を誤る。特技は太股の肉離れや乱文乱筆や電池の液漏れと20時間以上の連続睡眠の自称衝動買い技術者。収入のほとんどをカッコよいしサイバーだしナイスだしジョリーグッドなデバイスにつぎ込みつつライター稼業に勤しむ。