法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」
『少し先の未来』をユーザーに提案、ドコモ2014-2015冬春モデル
(2014/10/7 20:25)
9月30日、NTTドコモは2014-2015冬春商戦へ向けた新商品・新サービス発表会を開催。スマートフォン7機種、タブレット2機種、フィーチャーフォン2機種など、計16機種の新商品、「hitoe」や「ドコッチ」といった新機軸の商品をサポートするサービスなどが発表された。
ドコモは今年、他社に先駆け、新料金プランを発表し、夏モデル発表時には「VoLTE」を発表するなど話題を提供してきたが、今回は「少し先の未来を、皆さまの毎日に」というキャッチコピーを掲げ、新しい時代へのアプローチを見せようとしている。発表会の詳細については、本誌の速報(※関連記事)をご覧いただきたいが、ここでは今回の発表内容の捉え方と各製品の印象などについて、解説しよう。
攻勢を強めてきた2014年のNTTドコモ
改めて説明するまでもないが、NTTドコモは旧電電公社を出自とする企業。国内ではもっとも契約者数が多いこともあり、どちらかと言えば、手堅い戦略を取るイメージが強かった。特に、ケータイ時代はiモードの成功もあり、一人勝ちのような印象すらあったが、スマートフォン時代に入ってからはソフトバンクのiPhone採用、auのAndroid戦略などもあり、やや他社を追いかけるような状況だという見方もあった。
しかし、1年前の2013年9月からはiPhoneの取り扱いを開始した。春商戦では各社と激しいMNP獲得競争をくり広げ、2014年に入ると国内音声通話のかけ放題を実現する新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表し、LTEネットワークで音声通話を実現する「VoLTE」をいち早くスタートさせるなど、かなりアグレッシブな姿勢を見せている。なかでも新料金プランについては、他社が従来プランと並行して提供しているのに対し、NTTドコモは旧プランの新規申し込みを9月30日に打ち切り、月々サポートも新料金プランのみに提供する施策に切り替えるなど、積極的に新料金プランに切り替えさせようとしていることも注目される。
また、今回の発表ではまったく言及されなかったが、昨年来、議論が続いていたNTT東日本/西日本のFTTHサービスとのセット売りについても容認されるという観測が有力であり、そう遠くない時期に何らかのアナウンスがあるだろうと言われている。モバイルの業界だけを見ていると、あまり実感がわかないが、この1年はある意味、NTTドコモを中心に、NTTグループ全体がかなり攻勢を強めてきたという印象もあるくらいだ。
3つの新サービス
そんな中、2014-2015冬春モデル発表会では、どんな内容が発表されるのかが注目を集めたが、「少し先の未来を、皆さまの毎日に」というキャッチコピーを掲げ、「新サービス」「新商品」「新領域」という3つを軸に発表が行われた。個々の発表内容については、それぞれの速報記事をご覧いただきたいが、サービスでは心拍数を計測できる「hitoeウェア」と連携するフィットネスアプリ「Runtastic for docomo」(※関連記事)、行動支援型サービス「iコンシェル」の機能強化(※関連記事)、子ども向け腕時計型端末「ドコッチ」を利用したサービス(※関連記事)などが発表された。
まず、フィットネス系サービスについては、スマートフォンが普及し、ウェアラブル端末が増えてきたことで、さまざまなサービスが提供されるようになってきたが、「Runtastic for docomo」ではNTTと東レが共同で開発した機能素材「hitoe」を利用したウェア型デバイスを使い、身に着けるだけで、より正確な心拍数を計測できる環境を実現している。これまでのフィットネス系サービスの多くがライトなユーザーも楽しめる位置付けだったのに対し、ランニングやサイクリングなどをもっと積極的に楽しむユーザーを想定しているようだ。ただ、ひとつ気になるのはhitoeウェアと連動するためのスマートフォンは運動中も携行しなければならない点だろう。サイクリングはともかく、ランニングでは100g強のものを持ち歩くのはジャマだろうし、逆にそういったシチュエーションを考慮した端末もあっていい。最近、GPS機能をサポートしたAndroid Wearはそうした路線を担える位置にいる。また、このサービスを拡大していくためには、hitoeウェアを着用するランナーが参加するランニングのイベントなど、実際の利用シーンをユーザーがイメージしたり、体験できるような環境も必要だ。hitoeウェアは技術的にもユニークで、注目度も高いため、もう一歩、踏み込んだ仕掛けを期待したい。
iコンシェルの機能強化については、ケータイ時代から継承されてきたユーザーインターフェイスなどを一新し、ユーザー固有の情報をきちんと理解しながら、TPOに応じた情報を提供し、1日の行動記録などをまとめてくれる仕様に進化させると共に、「しゃべってコンシェル」も雑談力を強化するなどの改良が図られている。発表会でも例としてあげられたランチの提案など、実際の利用シーンにマッチする人には一段と役立つ方向で進化を遂げた印象だが、iコンシェルに限らずGoogleが提供する「Google Now」などの行動支援サービスの多くは、平日、オフィスに通勤するような勤務形態の人を想定して作られているため、筆者のような自由業、あるいは自宅兼店舗のような形で仕事をするような人など、他の勤務形態の人にはあまりマッチしないケースが多く、もう少し工夫が欲しいところだ。提供される情報もグルメ情報やセール情報など、商業的な情報が中心だが、地方自治体が提供する地域の公的な情報など、本来、もっと配信すべき情報は多いはずであり、そうした情報もきめ細かく配信できてこそ、「スマートライフのパートナー」であり、「コンシェルジュ」らしいと言えるのではないだろうか。
ドコッチは子ども向けのウェアラブル端末という位置付けで、未就学児や小学校低学年くらいを対象にした見まもり端末だ。3Gの通信モジュールを内蔵し、親とSMSで連絡を取ったり、親が外で遊んでいる子どもの様子を見守ったりできるなどの機能が提供される。今回、同時に発表されたキッズケータイよりも下の年齢層を対象にしたものだが、少し気になったのはSMSでのコミュニケーションという部分だ。ドコッチを利用するには「ドコッチ 01」の回線契約が必要で、新料金プランの「デバイスプラス500」、もしくはデータ通信専用プランの契約をすることになるが、これらのプランではSMSが有料扱い(1通当たり3円)になっており、当然のことながら、使えば、使った分だけ、課金されることになる。さすがに、子どもが1日に何百通も送ることはないだろうが、SMSの送信を一定数まで料金プラン内に含めるような工夫も欲しいところだ。
端末については、後述するので、新領域の発表について見てみよう。今回の発表では、パイオニアとの共同開発による「ミラー型テレマティクス端末」、NOTTVの追加チャネル向けパック料金、らでぃっしゅぼーやの商品が紹介された。まず、ミラー型テレマティクス端末はクルマのバックミラーに装着するタイプの端末で、対話型ドライブエージェントによるナビゲーションやドライブレコーダーの機能を搭載する。本体にはLTE通信モジュールを内蔵しており、デバイスプラス300での契約が可能になる予定だ。カーナビゲーションの市場は数年前にPNDが持てはやされたものの、スマートフォン普及の影響を受け、アフターマーケット(クルマとは別に購入する市販品の市場)は大きく変化しつつあるのが実状だ。こうした市場でどれだけの競争力が得られるのかは未知数だが、最近ではドライブレコーダーの人気もかなり高まってきており、両方の機能をひとつの製品で実現できるのは魅力的という見方もできる。
NOTTVパックについては、2015年3月からのチャンネル数増加に伴い、新しいパック料金をスタートさせるという発表だ。NOTTVそのものについては、一定の認知があるものの、ユーザーの反応は限定的という状況が続いている。今回の新チャンネルもパック料金にお得感があるものの、基本的にはBS/CS放送などで視聴できる番組とほぼ同じ内容であり、最近はリモート録画やリモート視聴の環境も充実したことを踏まえると、どこまでユーザーに響くのかは疑問が残る。
らでぃっしゅぼーやについては、2012年に買収を発表して以来、「なぜ携帯電話会社が野菜を売るのか?」といった疑問ばかりが語られてきたが、今回はプレゼンテーションで「みんなの健康を考えた野菜たち」というジュース、「私が仕上げる10分キットシリーズ」というお惣菜が紹介された。確かに、携帯電話会社の子会社がこうした商品を売ることに違和感はあるかもしれないが、それは会社の事業の話であって、商品としての評価は別の話だ。ドコモショップの店頭でらでぃっしゅぼーやのコーナーを見かけることはあるが、もう少しドコモユーザーがよく目にする「dメニュー」などのオンラインでも商品を紹介するなど、積極的な取り組みをしてもいいのではないだろうか。
スマートフォン全機種VoLTE対応でラインアップ充実
次に、2014-2015冬春モデルとして発表されたラインアップの内、スマートフォンとタブレットを中心に見てみよう。ただし、いずれも開発中の製品を使用した範囲の印象であり、最終的な製品とは差があるかもしれないことをお断りしておく。また、各製品の詳しい内容については、本誌の速報レポートを合わせて、ご覧いただきたい。
まず、機種数の分布については、冒頭でも説明したように、今回はスマートフォン7機種、タブレット2機種、フィーチャーフォン2機種、モバイルWi-Fiルーター2機種、らくらくホンシリーズ、キッズケータイ、ドコッチがそれぞれ1機種ずつで、合計16機種がラインアップされる。昨年の2013-2014冬春モデルは全18機種が発表されており、内容に違いはあるものの、機種数は減ったことになる。そんなの中、昨年同様、フィーチャーフォンやキッズケータイなど、固定したニーズがある製品もしっかりと揃えてきたところは安心できる。タブレットについても敢えて異なるサイズを揃えたようで、幅広いニーズに応えようとしている。
メーカー別ではファーウェイ、サムスン、富士通が3機種ずつ、シャープとソニーモバイルが2機種ずつ、LGエレクトロニクス、パナソニック、NECが1機種ずつという分布になる。ファーウェイがドコッチやキッズケータイといった特定用途の端末を開発したことも関係するが、海外メーカーがもっとも多くの機種を開発したというラインアップは、過去にもあまり例がなさそうだ。
機能的にはスマートフォン6機種がVoLTE対応、スマートフォン6機種とタブレット2機種がハイレゾオーディオ対応などが共通仕様となっている。VoLTEについては夏モデルのときのように、バージョンアップでの対応ではなく、出荷時からVoLTEに対応する。ハイレゾオーディオについては注目度が高いものの、コンテンツの充実がカギを握る。スマートフォンでの音楽再生は定番的な機能であり、今後、ユーザーが既存のMP3形式などの圧縮音源から移行していくのかどうかが注目される。
通信についてはNTTドコモが割り当てを持つ周波数帯域の内、800MHz、1.5GHz、1.7GHz、2GHz(2.1GHz)のいずれの帯域もLTEで利用されており、これらの内、800MHzと1.7GHz、1.5GHzと2GHzを束ねるキャリアアグリゲーションを採用することで、受信時最大225Mbpsのサービスを開始する。ただし、利用できる機種は今回発表されたラインアップのうち、モバイルWi-Fiルーターのみに限られており、キャリアアグリゲーション対応スマートフォンについては2015年度に投入するとしている。ちなみに、NTTドコモでは今回、複数の帯域を束ねて伝送するサービスをauのように「キャリアアグリゲーション」と呼ばず、「LTE-Advanced」と呼んでいる。LTE-Advancedはキャリアアグリゲーションを含む複数の通信技術で構成されているため、auではLTE-Advancedという呼び方をしていない。どちらの表現方法が正しいのかを議論するつもりはないが、国内の2社で名称がばらつくことは消費者が混乱してしまう可能性もあるので、ある程度、統一した表現を検討して欲しいところだ。
また、当面は国際ローミングでの利用ということになるが、北米で利用できる700MHz対応、中国で利用できるTD-LTE対応の機種もラインアップされた。ただし、来春、NTTドコモが運用を開始する700MHz帯で利用できるかどうかなどは正式にアナウンスされていない。
特徴を理解したいLTE&Wi-Fiダウンロード
同じく通信に関連するところでは、スマートフォンとタブレットの8機種の内、スマートフォン5機種とタブレット2機種は、LTEとWi-Fiの同時通信を可能にする機能を搭載する。スマートフォンやタブレットではNTTドコモが提供する多彩なコンテンツをはじめ、さまざまな大容量データをダウンロードする機会が多いが、LTEとWi-Fiを組み合わせることで、大容量データを効率良く短時間でダウンロードしようというわけだ。ユーザビリティという点においては便利な機能だが、元々、スマートフォンやタブレットにとって、Wi-Fiはモバイルデータ通信をオフロードすることで、ユーザーにとっても携帯電話事業者にとっても『節約』できることをメリットとしてきたはずだ。新料金プランの「カケホーダイ&パケあえる」でも国内の音声通話を定額にする代わり、モバイルデータ通信を容量別のデータパックという形で区分しており、ユーザーは決められたモバイルデータ通信量を使いすぎないようにしなければならない状況にある。出荷時は機能がオフに設定されているというものの、せっかくWi-Fiが利用できる環境に居ながら、ダウンロードの効率性のために、モバイルデータ通信のトラフィックを増やしてしまうのは、必ずしも有効と言えないケースが考えられる。機能的には便利だが、ユーザーがきちんと機能の特徴を理解して利用する必要がありそうだ。
新機種の特徴を一挙紹介
ハードウェアの仕様では、ディスプレイが注目ポイントだろう。この1年、スマートフォンのディスプレイはフルHD対応の5インチクラスが主流になってきたが、今回は対角サイズではGALAXY Note Edge SC-01Gの約5.6インチ、AQUOS ZETA SH-01Gの約5.5インチが最大クラスで、解像度ではGALAXY Note Edge SC-01Gの(1440+160)×2560ドット表示のQHD+、ARROWS NX F-02Gの1440×2560ドット表示のWQHDが最高クラスに位置付けられる。ディスプレイの対角サイズと解像度は、ボディの大きさやディスプレイの消費電力などに影響を与えるため、一概に大きければいい、高解像度であればいいとは言えないが、9月19日に発売されたアップルのiPhone 6/6 PlusはiPhone 6が4.7インチでHDクラス、iPhone 6 Plusが5.5インチでフルHD対応のディスプレイを搭載しており、この2機種のサイズがひとつの目安になる。その点から考えると、Xperia Z3 Compact SO-02GはiPhone 6、AQUOS ZETA SH-01GはiPhone 6 Plusとそれぞれ同等のクラスであり、GALAXY S5 ACTIVE SC-02GやXperia Z3 SO-01Gなどはその中間的なポジションということになる。
単独の利用ではあまり関係ないが、今回のNTTドコモのラインアップでは、これまでiPhoneなど、一部の機種のみに限られていた「ドコモnanoUIMカード」を採用する機種が増えている。複数の端末間でSIMカードを差し替えるような利用スタイルを考えているユーザーは、少し注意した方がいいだろう。
GALAXY S5 ACTIVE SC-02G(サムスン電子)
サムスンが北米向けなどに展開してきたタフネスシリーズ「ACTIVE」の日本向けモデル。今年の夏モデルとして発売されたGALAXY S5をベースに、MIL-STD-810G規格の18項目をクリアし、防水・防じんをはじめ、耐衝撃、耐振動、耐日射、耐温度、耐氷結、防湿、耐塩水性能を実現している。基本仕様はGALAXY S5と同等で、フラッグシップモデルと比較してもまったく遜色がない。タフネス系の端末としては珍しく、ボディが約9.2mmと薄く仕上げられているのも評価できるポイントだ。充電に利用するmicroUSB外部接続端子がキャップ付きであるのがきになる。カムフラージュをあしらった「Camo Green」、ソリッドなイメージの「Titanium Grey」がラインアップされており、アクティビティの高いユーザーから、個性を重視したいユーザーまで、幅広い層に支持されそうだ。
GALAXY Note Edge SC-01G(サムスン電子)
9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2014で発表されたGALAXY Noteシリーズの最新モデル。従来のGALAXY Noteの路線を踏襲しながら、本体右側面に「エッジスクリーン(EDGE SCREEN)」と呼ばれる曲面ディスプレイを備えることで、新しい使い方を提案している。エッジスクリーンには標準で定規やタイマー、ボイスレコーダーなどのミニツールが提供される他、新着通知や天気予報なども表示され、ドコモメールの通知も表示される。メインのディスプレイは今回発表されたスマートフォンで最大級となる2560×1440ドット(+160ドット)表示が可能なQHD対応5.6インチ有機ELディスプレイを採用。Sペンの感度も従来モデルの102段階から2048段階にアップし、斜めにSペンが当たったときの認識率なども向上させている。国際ローミング時にはTD-LTEや700MHz帯も利用できるなど、グローバルモデルらしい幅広い環境に対応する。広角撮影に対応したインカメラは発表会のステージやタッチ&トライコーナーでも人気を博していた。既存のGALAXY Noteシリーズのユーザーだけでなく、新しいユーザビリティを求めるユーザーにも期待されるモデルだ。
ARROWS NX F-02G(富士通)
2560×1440ドット表示が可能な約5.2インチのWQHDディスプレイを搭載したARROWS NXの最新モデル。GALAXY Note Edgeと並び、今回発表されたモデルではもっとも高解像度であり、画素密度は570ppiに達する。対角サイズこそ、最大クラスではないが、細かい文字などの表示はきれいで、写真や映像などのコントラストも細かく表現されている。ボディは2014年夏モデルが側面を強調しながらスッキリとまとめられたデザインだったのに対し、今回は本体の4つの角を斜めにカットし、八角形のような力強いデザインで仕上げられている。ボディカラーのORANGEは側面のゴールドのパーツと組み合わせられ、他機種にはない独特の存在感を持つ。従来モデルで好評を得たSuper ATOK ULTIASが引き続き採用される。Wi-FiとLTEで同時に通信する、マルチコネクション通信に対応する。
Xperia Z3 SO-01G(ソニーモバイル)
9月にドイツ・ベルリンで開催されたIFA 2014で発表されたXperiaシリーズのフラッグシップモデル。ISO感度12800対応や電子式手ぶれ補正などの機能が強化されたカメラなどはグローバル向けモデルを継承し、ワンセグ/フルセグチューナーやおサイフケータイなどの日本仕様を搭載する。LTEとWi-Fiの同時接続には対応せず、700MHz帯対応やTD-LTE対応も見送られている。デザインはグローバルモデルとほぼ共通で、従来のXperia Z2に比べ、側面をラウンドさせ、手当たりのいい形状に仕上げており、全体的に見て、すっきりと美しいデザインにまとまっている。定番のWhiteとBlack以外のカラーは従来のPurpleに代わり、CopperとSilver Greenが採用されているのも注目される。ハイレゾ対応やノイズキャンセリング機能など、音楽再生機能なども充実しているが、約5.2インチのディスプレイが他機種に比べ、ひと回り小さい印象なのが気になるところだ。
AQUOS ZETA SH-01G(シャープ)
約5.5インチのフルHD対応IGZO液晶を搭載し、三辺狭額縁のEDGESTデザインを採用したフラッグシップモデル。2014年夏モデルのAQUOS ZETAが側面を強調したヘキサグリップデザインを採用していたのに対し、今回は側面から背面を同じカラーでまとめ、スッキリとしたクセのないデザインを採用する。背面もボディカラーによって仕上げが違い、指紋などが残りにくくなっている。裏面照射式CMOSセンサーを採用した1310万画素カメラは、新たに光学式手ぶれ補正をサポートし、リコーのハイエンドデジタルカメラ「GR」シリーズを手がけたリコーイメージングの認証プログラム「GR Certified」を取得すると共に、画質についてもリコーがコンサルティングを担当している。もうひとつの注目すべきポイントは、スマートフォンが感情を持つかのようにしゃべる「エモパー」という機能だ。対話型のコミュニケーション機能はこれまでにも存在したが、エモパーは帰宅時やバッテリー残量が少ないとき、落としたときなどに、能動的に反応する。自宅に居るときは、音声を発し、外出時には音を出さずに画面で表現するなど、実利用を考えた仕様となっている。スマートフォンを単なる道具としてではなく、ユーザーに愛着を持って使ってもらえるように、手にしてもらえるように作り込まれたものであり、スマートフォンの新しいアプローチとして、ユーザーの反応が期待される。
Xperia Z3 Compact SO-02G(ソニーモバイル)
Xperia Z3と同じく、9月のIFA 2014で発表されたXperiaシリーズのコンパクトモデル。基本的な仕様はXperia Z3と同じながら、ディスプレイを4.6インチとすることで、ひと回り小さいコンパクトなボディに仕上げている。2013-2014冬春モデルのXperia Z1 fや2014年夏モデルのXperia Z2 Compactなど、Xperiaのコンパクト路線は一定の成功を収めているが、今回もディスプレイの解像度がHD(1280×720ドット)に抑えられており、フルHDのコンテンツが増えてきている現状を考えると、ややスペック不足の感は否めない。本体のデザインは基本的にXperia Z3を継承しているが、ボディ周囲を樹脂素材で仕上げており、質感はXperia Z3と大きく異なる。ただ、カメラの仕様やなどを考えると、お買い得という見方もできる。
Disney Mobile on docomo SH-02G(シャープ)
ディズニー・モバイルの2014年冬モデル。ハードウェアの仕様は同時発表のAQUOS ZETA SH-01Gと共通で、こちらは本体側面にイルミネーションLEDが追加される。これまでのDisney Mobile on docomoはミッドレンジか、ひとつ前のシーズンのモデルがベースにされるケースが多かったが、今回は冬モデルのフラッグシップをそのまま採用しており、カメラ周りの強化やエモパーなどもそのまま継承される。ディズニーならではの要素としては、今年大ヒットを記録した映画「アナと雪の女王」に関連するコンテンツが充実するほか、ステレオイヤホン端子に挿す「スマホピアス」との連動も用意されている。大画面でディズニーの世界観を体験したいユーザーにおすすめだ。
ARROWS Tab F-03G(富士通)
2560×1600ドットのWQXGA表示が可能な約10.5インチの有機ELディスプレイを採用したタブレット。昨年、2013-2014冬春モデルとして発売された「ARROWS Tab F-02F」の後継モデルに位置付けられるが、従来モデルがWQXGA対応液晶ディスプレイだったに対し、今回は有機ELディスプレイを採用したことで、映像コンテンツなどが格段に鮮やかに楽しめる印象だ。従来モデルも防水防じん対応ながら、約519gという軽量ボディを実現していたが、今回は90g近い軽量化を実現し、約433gに仕上げている。手に持って、すぐに「おっ、軽い」という言葉が出てきてしまうほどの軽さだ。従来モデル同様、ホームユースも考慮しており、子ども向けや初心者向けのユーザースタイルをあらかじめ用意する。文字入力については、2014年夏モデルのARROWS NXで好評を得た「Super ATOK ULTIAS」を搭載する。ワンセグ/フルセグ/NOTTVチューナーやDTCP+対応、ハイレゾオーディオ対応など、Audio&Visual機能も充実しており、ホームユースを中心にタブレットをさまざまなシーンで活用したい幅広いユーザー層に適したモデルと言えそうだ。
GALAXY Tab S 8.4 SC-03G(サムスン電子)
サムスンが今年発表したタブレットのフラッグシップシリーズ「GALAXY Tab S」のNTTドコモ向けモデル。国内市場向けにWi-Fiモデルを販売しているが、こちらは3G/LTEの通信機能を搭載するほか、本体と一体化できるBluetoothキーボードをセットにした形で販売される。8.4インチという対角サイズで、2560×1600ドット表示が可能なWQXGA有機ELディスプレイを搭載しており、高精細かつ色鮮やかな表示を可能にしている。タブレットをキーボードに立てて、パソコン的な使い方をしたり、タブレットのみで使うこともできる。8インチクラスのタブレットと組み合わせるキーボードとしては標準的なサイズだが、一般的な日本語キーボードと比較して、[Enter]キーが小さいなど、少し使い勝手が異なる部分もある。キーボードと本体を一体化したサイズ感は、少しコンパクトなノートパソコンと同じくらいで、外出時や出張時などに、電子書籍や映像コンテンツなどを楽しみたいユーザーに興味を持たれそうなモデルだ。
らくらくホン ベーシック4 F-01G(富士通)
らくらくホンシリーズのエントリー向けモデル「らくらくホン ベーシック」の新モデル。従来モデルは2011年4月に発売されており、約3年半ぶりの新モデルになる。基本的なデザインや仕様は継承しながら、防水防じんに対応し、幅広いシーンでの利用を可能にしている。ユーザーインターフェイスなどは従来モデルを継承しているため、そのまま乗り換えることも可能としている。市場の主流がスマートフォンへ移行する中、フィーチャーフォンの中でも特徴的な存在であるらくらくホンシリーズにおいて、メインモデルのらくらくホン8とは別に、エントリー向けもきっちりとモデルチェンジをしてくるあたりに、NTTドコモと富士通のらくらくホンシリーズに対するこだわりが感じられる。
P-01G(パナソニック)
折りたたみデザインを採用したフィーチャーフォンの新モデル。昨年、発表されたP-01Fのリニューアルモデルで、新たにおサイフケータイ(FeliCa)をサポートし、表示フォントとして「超大(80ドット)」を設定できるようにしている。おなじみのワンプッシュオープンも継承され、防水機能もサポートする。元々、完成度の高いフィーチャーフォンだけに、改良点はあまり多くないが、ユーザーのニーズや利用シーンを的確に把握することで、堅実な販売が期待される。ただ、裏を返せば、昨年のP-01Fでおサイフケータイを削除したことは失敗だったわけで、限られたモデルしか投入されないフィーチャーフォンにおいて、何を載せ、何を省くのかは、キャリアとしてもメーカーとしてももっとシビアに検討しなければならない時期に来ていると言えそうだ。
N-01G(NECカシオ)
折りたたみのNの流れを継承するフィーチャーフォンの新モデル。昨年のN-01Fから1年ぶりに発表されたモデルで、NEC製端末ではおなじみの側面のアークラインも受け継がれ、防水防じんに対応するほか、新たに歩数計の機能も搭載された。あまり進化の多くないフィーチャーフォンだが、N-01Gはタブレットとフィーチャーフォンを組み合わせて持つユーザーに着目し、タブレットで受信したメールの通知やアラームをN-01Gで受けられる「スマートデバイスリンク」という機能を搭載する。仕組みとしては、Bluetooth Smart(Bluetooth Low Energy)を利用する。長時間録音が可能なボイスレコーダー、WORDなどのオフィス文書を閲覧できるビューアー機能など、ビジネスユーザーに必要とされる機能もしっかりと搭載している。派手さはないが、堅実な作りと新しい取り組みに期待ができるモデルだ。
『少し先の未来』とバランスの良いラインアップだが……
ここ数年、NTTドコモはスマートフォン時代に出遅れ、MNP獲得競争でも独り負けが続いていると指摘されていた。その要因のひとつにiPhoneを取り扱っていなかったことも挙げられていた。しかし、昨年9月にiPhoneの取り扱いを開始し、今年の春商戦ではこれまであまり積極的な姿勢を示さなかったMNP獲得競争において、良し悪しは別にして、キャッシュバックを含めたアグレッシブな施策で真っ向から勝負を挑んだ。
そして、今年4月には他社に先駆けて、新料金プラン「カケホーダイ&パケあえる」を発表し、国内の音声通話を定額にする環境を実現。新料金プランへの移行も好調なようで、8月31日はタイプXiなどの旧プランの新規受付も予定通り終了している。技術面でも夏モデルではいち早くVoLTEサービスを発表し、6月からは実際に運用を開始している。今回は発表がなかったものの、NTT東日本/西日本の光回線の卸売りを利用したセット販売も年内にスタートするのではないかという観測もある。もちろん、これらの動きの中には、ユーザーとして不満を持つ部分がないわけではないが、数年前のNTTドコモの姿勢から考えれば、動きも早く、新しい取り組みが増え、かなり状況が変わってきた印象だ。
こうした状況の中で行われた今回の発表会では、『少し先の未来を、皆さまの毎日』と題し、新サービスや新機種、新領域についての発表が行われた。本稿でも説明してきたように、それぞれのサービスも商品も注目できるものだが、正直なところを書いてしまうと、ちょっと物足りなさも残った。
たとえば、hitoeは技術的に面白いが、実際にランニングやサイクリングを楽しむユーザーから見れば、現状、スマートフォンを携行しなければならない点は同じであり、まだまだ発展途上の感は否めない。ドコッチもキッズケータイとは異なるユーザーを開拓する意味でも興味深いが、実際に子どもたちに付けてもらって、どうだったかという状況が見えてこなければ、保護者としてもなかなか簡単には手を出しにくい。新領域のテレマティクス端末は個人的にも興味があるが、昨今のクルマ離れやアフターマーケットのカーナビの苦戦ぶりを鑑みると、どこまでドライバーに響くかは未知数だ。
また、Wi-FiとLTEの同時利用やドコッチでのSMS利用でも触れたように、料金面については現状を良しとしているのか、何も新しい発表がなかった。プレゼンテーションの冒頭で、10月から開始する「パケットのくりこし」と「追加購入データ量の利用期間延長」が触れられたが、それ以上の改善点には何も言及されていない。新料金プランは他社をリードできたから、もう何も発表することはないということなのかもしれないが、ユーザー側から見れば、まだまだ改善して欲しい部分は数多く残されている。たとえば、シェアパックを家族で契約し、子どもが動画などを視聴して、使いすぎてしまい、家族全員が通信速度の制限を受けるようなシチュエーションは十分に考えられる。SMSについても海外の料金プランなどを見ると、一定数までは基本使用料に含んだり、通話もSMSも定額を採用する国や地域もあるくらいだ。
さらに、GALAXY Note Edgeと組み合わせて利用する「Gear S」については、3G回線契約ができるものが発表されたが、NTTドコモとして、今回の発表会の段階では、特に新しい料金プランなどが提示されることはなく、既存のFOMA向けプランを契約して欲しいとのことだった。ケータイからスマートフォンへの移行に伴い、複数の回線を契約する人も増えてきているだろうが、ウェアラブル端末のために、もう1回線を契約するのはそれなりに敷居の高く、すぐに飛び付く人は少なさそうだ。せっかく3G回線が利用できて、今までにない新しい使い道ができそうな商品が発表されたのだから、期間限定でも構わないので、その製品を活かすような料金プランを提案しなければ、ユーザーはついてこないだろう。おそらく、こういった部分のフットワークのなさがNTTドコモの良くないところであり、製品を出してもうまく普及できないケースの要因のひとつになっているのではないだろうか。
端末ラインアップについては、全体的に見て、ハイエンドを中心に硬軟取り混ぜたバランスのいいバリエーションになっており、幅広いユーザーのニーズに応えられそうな印象だ。ハイエンドモデルの競争軸は、やはり、ディスプレイのサイズと解像度であり、自分が持ちやすいサイズ感とのバランスをどうするか、他機種とは異なる個性に何を求めるのかで選択が違ってきそうだ。各機種別では、GALAXY Note Edge SC-01Gのエッジスクリーン、GALAXY S5 ACTIVE SC-02Gのタフネス、ARROWS NX F-02GのWQHD対応液晶、AQUOS ZETA SH-01GのRICOH GRチューンのカメラとエモパー、Xperia Z3 SO-01GのISO12800高感度カメラ、Xperia Z3 Compact SO-02Gのコンパクトボディなどが評価ポイントになりそうだ。
今回発表されたモデルはすでに一部のモデルの販売が開始され、その他のモデルも各地のドコモスマートフォンラウンジなどで、順次、展示が開始されている。本誌でも今後、各機種の開発者インタビューやレビュー記事を掲載する予定なので、こちらもご覧いただき、店頭などでデモ機も試しつつ、「少し先の未来」を体験できそうな一台を選んでいただきたい。