ワクワク感を刺激するauの夏モデル

法林岳之
1963年神奈川県出身。携帯電話をはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるWindows 7」「できるポケット Xperiaをスマートに使いこなす 基本&活用ワザ150」「できるポケット+ GALAXY S」「できるポケット iPhone 4をスマートに使いこなす基本&活用ワザ200」(インプレスジャパン)など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。Impress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。


 5月17日、auは2011年夏モデルとして、スマートフォン6機種、フィーチャーフォン6機種を中心とした新ラインアップを発表した。昨年の「IS03」を機に、本格的にスマートフォンを展開し始め、今年2月には国内初のWiMAX搭載スマートフォンも発表するなど、積極的にラインアップとサービスの拡充を進めるauだが、今回はiidaブランドのスマートフォンも投入するなど、さらに幅広いユーザー層にスマートフォンを拡大しようという構えだ。

 発表会の内容については、本誌レポート記事を参照していただきたいが、ここではタッチ&トライで端末の印象なども交えながら、全体の概要と捉え方などについて、考えてみよう。

「auらしさ=ワクワク感」を取り戻す

 読者のみなさんは「au」について、どんなイメージを持っているだろうか。実際にauを使っているユーザー、以前使っていたユーザー、使ったことがない人、興味を持っている人など、それぞれの立場によって、評価が違うかもしれないが、業界トップシェアのNTTドコモ、三番手から猛追するソフトバンクとは、違ったイメージを持っているだろう。今回の発表会の冒頭、壇上に上がったKDDIの田中孝司代表取締役社長は、前回の発表会に続き、「auらしさとは?」という問いかけを掲げ、それに対する答えが「ワクワク感」ではないかとしていたが、業界の流れを振り返ってみると、「EZフラット(現在のダブル定額)」によるパケット定額制の導入、gpsOneを活かした「EZナビウォーク」と「EZ助手席ナビ」、着うたを広めた「LISMO」、数々のヒット商品を生み出した「au design project」など、エポックメイクなサービスやプロダクトを提供し、ユーザーの支持を拡げてきた印象が強い。しかし、ここ数年、そのイメージは少しずつ薄れ、auのスマートフォンへの慎重な取り組みとも相まって、昨年あたりはユーザーからもかなり厳しい意見が聞かれるようになってしまった。

KDDIの田中社長
auのサービスをスマートフォンに

 そして、そのワクワク感を取り戻すべく、昨年10月には「IS03」をはじめとしたスマートフォン4機種を投入し、一気にスマートフォンへのシフトを強めようとしている。今年2月には国内初のWiMAX搭載スマートフォン「htc EVO WiMAX ISW11HT」、Android 3.0採用のタブレット端末「Motorola XOOM」を発表するなど、一段と積極的な姿勢を見せている。ユーザーの反応も当初は「IS03はいいけど、Androidのバージョンアップは大丈夫か?」といった意見が聞かれ、やや疑心暗鬼になる一面もうかがえたが、たいへん好調な売れ行きを記録し、同社の2010年度のスマートフォンの販売台数は109万台に達している。ユーザーが危惧していたメジャーバージョンアップもIS03が4月に実施され、REGZA Phone IS04のAndroid 2.2へのバージョンアップも6月に開始されることがアナウンスされた。当初、EZwebのEメール/Cメール送信などに非対応だったSIRIUSα IS06もバージョンアップで各サービスに対応しており、着実にユーザーが利用しやすい環境を整えている。

 また、サービス面についてもNTTドコモがほとんどのフィーチャーフォンのサービスを移行できていないのに対し、auはフィーチャーフォンで人気を得ていたEZナビウォーク、EZ助手席ナビ、EZニュースフラッシュEX、LISMOなどのサービスをいち早くスマートフォンに対応させており、今年1月からはスマートフォン向けを中心にした「LISMO WAVE」の提供も開始している。IS03発表時に「禁断のアプリ」と称された「Skype au」も提供され、主要3社のスマートフォンでは提供サービスがもっとも充実した環境となっている。

 ただ、こうした一連の動きは、昨年秋までの遅れを取り戻すためのものであり、今までにない新しい「ワクワク感」を演出する状況には至っていない。そこで、今回の発表会において、田中社長は「選べるラインアップ」「充実のネットワーク」「とびっきりのコンテンツ・アプリ」という3つのテーマを掲げ、これらを組み合わせることで、「ワクワク感」を創り出していきたいとしていた。auらしさを取り戻す次のステップを始めようという構えだ。

 

個性派揃いの「選べるラインアップ」

 さて、今回発表された内容について、ラインアップから順にチェックしてみよう。端末のバリエーションでは、スマートフォン6機種、フィーチャーフォン6機種、フォトフレーム1機種、データ通信端末2機種という構成だ。2010年秋冬モデル発表時は、スマートフォンが4機種に対し、フィーチャーフォンが17機種もラインアップされていたが、2010年秋冬モデルと2011年春モデルのフィーチャーフォンは一部が継続販売されるため、夏モデルのフィーチャーフォンはグッと絞り込まれている。スマートフォンについては、4機種から6機種に増えたが、春モデルとして登場した「htc EVO WiMAX ISW11HT」は販売中であるため、実際には7機種前後が店頭に並ぶことになりそうだ。

 それぞれ個別のラインアップを見てみると、スマートフォンのラインアップが非常に個性的だ。これまで国内で登場したスマートフォンは、フルタッチスタイルのストレートボディを採用するものが圧倒的に多く、外見も「スマートフォン然」としたものばかりだった。しかし、今回のauのスマートフォンは一般的なストレートボディが4機種に対し、スライド式のキーボードを備えたモデルが2機種ラインアップされており、その内の1機種はフィーチャーフォンのようなスライド式ボディにテンキーを備えるというユニークなデザインを採用している。スマートフォンだから“フルタッチのストレートボディ”、あるいは“横スライド式のフルキーボードモデル”という固定観念を打ち破り、今までにない新しいスタイルを打ち出している。

 デザインも個性的なモデルが多く、iidaやau design projectでおなじみの深澤直人氏デザインによる「INFOBAR A01」をはじめ、タフネススマートフォン「G'zOne IS11CA」、au初のXperiaとなる「Xperia acro IS11S」など、一目でそれとわかるモデルが並ぶ。プラットフォームはAndroid 2.3で統一されており、NTTドコモの2011年夏モデル同様、今後、auから提供されるサービスはAndroid 2.3がベースになってくることが予想される。

 一方、フィーチャーフォンについては、新たに投入される6機種の内、折りたたみデザインが4機種、スライド式と二軸回転式が1機種ずつという構成で、全機種が防水対応となっている。機能的に成熟していることもあり、スマートフォンほどの個性はないが、それでもカシオ端末ではおなじみのアデリーペンギンをフィーチャーした「CA007」、スライド式ボディを採用した東芝製端末「T007」など、au端末では常に高い人気を得ていたモデルの流れを継承する機種がラインアップされている。ちなみに、今回のフィーチャーフォンの6機種中、簡単ケータイK010を除く5機種はWIN HIGH SPEED対応となっていることからもわかるように、1GHz SnapDragon(QSD8650)を搭載したKCP3.2を採用している。

フィーチャーフォンにもSkype au

 フィーチャーフォンでもうひとつ注目すべきは、このWIN HIGH SPEED対応の5機種にはBREWアプリ「Skype au」が提供されることだ。2010年秋冬モデル発表時に予告されていたが、フィーチャーフォンにもSkype auが展開されたことで、無料で通話やチャットが利用できる範囲がさらに拡大することになる。

 一方、「充実のネットワーク」については、今年6月末以降に公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」の提供が開始されることが発表された。公衆無線LANサービスについては、NTTドコモがspモードのオプションサービスやMzone、ソフトバンクがソフトバンクWi-Fiスポットとしてサービスを提供してきたのに対し、これまでのauは端末にWi-Fiの機能を搭載するものの、自社による公衆無線LANサービスは提供せず、あまり積極的に取り組んでこなかった。しかし、スマートフォンへのシフトを強めたこともあり、新たに公衆無線LANサービスを提供することになったようだ。KDDIとしては、昨年、公衆無線LANサービス「Wi2 300」を提供するワイヤ・アンド・ワイヤレスの第三者割当増資を引き受け、グループ傘下に収めたが、同サービスをベースに、au Wi-Fi SPOTサービスを構築するわけだが、今回の計画では2011年度末までに約10万スポットで利用できるようにするという。

 この計画で驚かされるのがこの「約10万スポット」というアクセスポイントの数だ。ソフトバンクテレコムが提供するBBモバイルポイントが約4200カ所(2011年4月現在)、NTTコミュニケーションズのHOTSPOTが約4000カ所ということを考えると、この10万スポットがいかにとんでもない数なのかがわかるだろう。この点について、会見ではワイヤ・アンド・ワイヤレスのエリアをベースにしながら、新たにバックボーンにUQコミュニケーションズのWiMAXを使ったアクセスポイントを設置することで、この10万スポットという数を達成すると答えている。

今年度末までに10万スポットを目指すau Wi-Fi接続ツール

 とは言うものの、アクセスポイントを設置するためのカフェやレストランといった物理的なスペースをどうするのかという問題も残る。たとえば、通信事業者では、かつてウィルコムが約16万局が稼働しているとアピールしたが、それに近いレベルで場所を確保しなければならないわけだ。他の業種の店舗などで考えると、コンビニエンスストアでは最大手のセブン-イレブンで約1万3000店、ガソリンスタンドでは最大手のENEOSも同じく約1万2000店、JR東日本の駅数が1705駅といった具合いで、10万に届くような場所を確保するのは、なかなか難しい。震災以降、節電で話題になった自動販売機となると、清涼飲料水やコーヒー類などの飲料系だけで約259万台があるため、こういったレベルで普及しているものに対して、アクセスポイントを設置するくらいの取り組みをしなければならないわけだ。そうした点を踏まえると、今後、auがどういった手法で10万スポットを構築するのかはわからないが、ユーザーとしても興味深いところだ。ちなみに、このau Wi-Fi SPOTへのアクセスについては、専用アプリ「au Wi-Fi接続ツール」が用意されており、IDやパスワード入力など、面倒な設定をすることなく、簡単にau Wi-Fi SPOTへアクセスできるようにする。

 この他には、LISMOブランドを冠した新サービス「LISMO unlimited」、ソーシャルサービス「Facebook」との協力関係構築とソーシャルアドレス帳「jibe」との連動など、コンテンツやサービス面も新しい取り組みが発表された。なかでもFacebookについては、国内では他社に先駆けて連携することになるため、今後、どのように他のサービスと連動させていくのか、Facebookが普及していくのかなども含め、注目される。

聴き放題サービスの「LISMO Unlimited」jibeもリニューアル

 

スマートフォンとフィーチャーフォンを6機種ずつラインアップ

 さて、ここからは今回発表されたスマートフォンとフィーチャーフォンについて、タッチ&トライコーナーで試用した印象なども含め、それぞれの印象などを紹介しよう。ただし、機種数が多いため、筆者の持った印象のみを手短にお伝えすることをご了解いただきたい。また、タッチ&トライコーナーで要された端末は最終的な製品ではなく、実際に発売される製品とは仕様や印象に違いがあるかもしれない点はお断りしておく。各端末の詳しいスペックなどについては、本誌の発表会レポート記事も合わせて、ご覧いただきたい。


iida「INFOBAR A01」(シャープ)

 2003年に発売された初代「INFOBAR」のデザインを継承するスマートフォン。Android採用端末に必ず装備されるMENUキー、HOMEキー、BACKキーの3つをディスプレイ下に並べ、ディスプレイ周囲の枠を際立たせることにより、オリジナルモデルのデザインをうまくスマートフォンのスタイルの昇華させている。背面は2007年発売のINFOBAR 2のように、ラウンドしたフォルムに仕上げられている。手にフィットする感触と独特の存在感は他のスマートフォンではちょっと味わえない印象だ。また、非常にユニークなのが「iida UI」と呼ばれるユーザーインターフェイス。アプリやウィジェットをタイル状に並べ、縦方向にスクロールできる帯状のスタイルを実現する。その動きも非常になめらかで、触っていることが楽しくなる仕上がりだ。ソフトウェアは基本的にシャープ製のIS12SHなどと同じものを採用しているため、Wi-Fiの簡易登録はAOSSとWPSをサポートし、公衆無線LANへの自動ログイン、メール添付に適した画像編集などの機能も備える。ボディのデザインを優先したこともあり、ストラップホールがないなど、気になる点はあるが、スペック的にもトップクラスであり、この夏の各社のスマートフォンの中でも、もっとも注目すべき1台と言えるだろう。

AQUOS PHONE IS12SH(シャープ)

 シャープが各社向けの夏モデルからスマートフォンの共通ブランドネームとして採用した「AQUOS PHONE」の名を冠したモデル。4.2インチの3D液晶に、800万画素ツインカメラを搭載し、3D映像を存分に楽しむことができる。3D液晶はNTTドコモ向けのものと同じで、従来の3D液晶では端末を顔の前に持ってきて、立体視ができるポイントを探していたのに対し、今回は端末を顔の前に持ってくれば、すぐに立体視ができる印象で、自然に3Dコンテンツを楽しむことができる。ボディサイズはIS03に比べ、ディスプレイサイズが大きくなったこともあり、ひと回り大きくなったように見えるが、実際には幅で1mm、高さで9mmしか違わない。Wi-Fi周りや画像編集の対応はINFOBAR A01と同じで、はじめてのユーザーでも使いやすい環境を整えている。チップセットはMSM8655(SnapDragon)だが、クロック周波数が1.4GHzのものを採用しており、現在のスマートフォンではもっともハイスペックなモデルのうちの1台ということになる。実際の操作感も非常に快適に利用できるレベルに仕上がっている。

AQUOS PHONE IS11SH(シャープ)

 テンキーを装備したスライド式ボディのスマートフォン。スマートフォンのオープンな環境をフィーチャーフォンのデザインで実現したモデルだ。端末を閉じた状態では他のスマートフォン同様、タッチ操作が可能で、スライドボディを開けば、テンキーで文字入力などができる。それぞれの状態も機能と連動しており、たとえば文字入力では、端末を閉じた状態だと文字パレットが表示され、端末を開くと文字パレットの表示が消え、テンキーから文字入力ができるようになる。手に持ったサイズ感は少し幅広のスライド式ボディのフィーチャーフォンと変わらないレベル。auのシャープ製端末で言えば、2008年に登場したW64SHに近い印象だ。スペック的にはAQUOS PHONE IS12SHとほぼ同等で、ディスプレイサイズがひと回り小さい3.7インチではあるもの、3D液晶を搭載しており、チップセットも同じく1.4GHz CPUのMSM8655を採用する。操作のレスポンスも良く、同じようにストレスなく使うことができる。Wi-Fiの簡易登録や画像編集の対応はINFOBAR A01と同じで、はじめてのユーザーでも使いやすい環境を整えている。フィーチャーフォンからスマートフォンに乗り換えたいが、メールなどで文字入力の頻度が高いユーザーなら、体験してみて欲しいモデルだ。

REGZA Phone IS11T(富士通東芝)

 2010年秋冬モデルで登場したREGZA Phone IS04のバリエーションに位置付けられるモデル。今回、公開されたのはモックアップのみだった。NTTドコモのOptimus chat L-04CやソフトバンクのGALAPAGOS 005SHなどと同じように、タッチパネル対応のディスプレイに加え、フルキーボードを装備する。今回はデモが見られなかったが、東芝が薄型テレビのREGZA(レグザ)などで展開する「レグザAppsコネクト(REGZA Apps Connect)」に対応し、REGZAやレコーダーに録り貯めている番組の視聴などに対応する。重量が190gとなかなかのヘビー級であるところが気になる。

Xperia acro IS11S(ソニー・エリクソン)

 今年1月に米ラスベガスで開催された2011 International CESで発表された「Xperia arc」をベースに、赤外線通信やワンセグ、おサイフケータイという日本仕様を追加したモデル。ボディデザインは、基本的にNTTドコモ向けのXperia acro SO-02Cと同じで、日本仕様のハードウェアを追加したこともあり、背面がフラットに仕上げられたが、オリジナルカラーのRubyは美しいグラデーションで高級感を演出している。日本仕様に関するところでは、ワンセグの録画機能がないこと、ワンセグ音声をBluetoothで出力できないなど、やや気になる点も残される。同じくソフトウェア面では、Wi-Fiの簡易登録、公衆無線LANの自動ログインに対応しておらず、メールに適した画像編集などの機能も備えない。810万画素カメラは裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R for mobile」を採用するが、最大サイズで撮影した画像を編集するには、別途、アプリを入手する必要がある。auのサービスへの対応についても発売当初はEZwebのEメール、au oneマーケットなどが利用できず、9月下旬以降のアップデートで対応する予定となっているため、既存のフィーチャーフォンなどから機種変更するときは注意が必要だ。

G'zOne IS11CA(NECカシオ)

 auの人気シリーズ「G'zOne」のDNAを継承したタフネススマートフォン。今年4月から米Verizon向けに投入された「G'z COMMANDO」をベースにしたモデルで、IPX5/8相当の防水、IP5X相当の防じんに加え、米国防総省の規格であるMILスペックの耐衝撃性能も持つ。北米モデルをベースにしているが、おサイフケータイと赤外線通信にも対応しており、国際ローミングはカシオブランドの端末としては初めてグローバルパスポートCDMA/GSMの両対応となっている。2010年秋冬モデルのG'zOne TYPE-Xにも搭載されているセンサーアプリ群「G'zGEAR」も搭載されており、ホーム画面に設定可能なウィジェットがプリセットされている。ソフトウェアではWi-Fiの簡易設定がWPSとらくらく無線スタートをサポートしているものの、公衆無線LANの自動ログインは標準で搭載されておらず、au Wi-Fi SPOTの専用アプリを利用することになる。メールに適した画像編集機能も用意されていない。ボディはタフネスモデルのわりに、極端に大きいわけではなく、男性の手であれば、十分に持って、操作ができるレベルに仕上げられている。ただ、防水モデルでありながら、卓上ホルダに対応していないのは、G'zOneシリーズの系譜から考えても非常に残念な仕様だ。デザイン的なインパクトや圧倒的な存在感は、今までに国内に登場したどのスマートフォンよりも力強く、印象的なモデルだ。G'zOneシリーズを愛して止まないユーザーはもちろん、アウトドア指向のユーザー、他人とは違う強い個性を重視するユーザーにおすすめのモデルだ。


【フィーチャーフォン】

S007(ソニー・エリクソン)

 キー面に31個のLEDを配することより、鮮やかなキーイルミネーションを実現したモデル。裏面照射型CMOSセンサー「Exmor R for mobile」による1620万画素カメラを搭載する。ボディは二軸回転式を採用し、スリムで持ちやすいボディに仕上げられている。形状はまったく異なるが、内容的には2010年冬モデルとして発表されたCyber-shotケータイ S006を二軸回転式ボディに進化させたモデルと捉えるとわかりやすい。撮影機能も基本的にはCyber-shotと同等のものが搭載される。カラーバリエーションのウィンクピンクなどはかなり女性を強く意識したモデルの印象だが、カメラの優れたフィーチャーフォンを求めるユーザーにおすすめの端末だ。

T007(富士通東芝)

 2010年秋冬モデルとして登場した「T006」の流れを受け継いだスライド式ボディを採用した防水モデル。イルミネーションによる演出などで、華やかなイメージのあったT006に対し、メタリックなパーツを採用し、ソリッドなイメージを演出するなど、どちらかと言えば、男性的なイメージに仕上げられている。筆者は試聴するチャンスがなかったが、個人の耳に合わせて、イヤホンから聞こえる音楽の音質を選べるというサウンドフィッターは、なかなかユニークな取り組みだ。スマートフォンにもぜひ活かして欲しい機能のひとつだ。

CA007(NECカシオ)

 カシオ計算機製端末で人気を得てきたアデリーペンギンをフィーチャーした折りたたみデザインの防水モデル。待受画面でくり広げられるエピソードでユーザーを楽しませてきたアデリーペンギンを使った「アトリエペンギン」というアプリがセットされており、釣りをしたり、イベントでメールパーツをゲットしたりするなど、ミニゲームのように楽しむことができる。端末を開きやすいように側面に凹みが付けられていたり、隣り合うキーで凹凸が変わるように編み込み状にレイアウトされたイントレチャートキーを採用するなど、カシオ製端末のモノ作り思想「Heart Craft」が随所に活かされている。ちなみに、このイントレチャートキーはCA001などでも採用されていたものだが、筆者のように指の太いユーザーでも押しやすい。アデリーペンギンの楽しい世界に加え、使いやすさを重視したいユーザーに体験して欲しい端末だ。

T008(富士通東芝)

 トップパネルに埋め込まれたLEDでイルミネーションを演出する防水モデル。50種類以上のパターンが用意されたスパークリングイルミに加え、時刻などをLEDの点灯で表示するお知らせLEDの機能も搭載されている。スリムなボディを実現するため、シートキーを採用するが、独立したキートップによって構成されており、意外に打ちやすい。メール機能を重視する女性ユーザーに適した端末と言えそうだ。

K009(京セラ)

 トップパネルに金属パネルを採用し、質感の高いボディを実現した防水モデル。金属パネルながらも先端部付近にはLEDが埋め込まれており、着信などのイベントに合わせ、浮かび上がるように文字が表示される。おそらく京セラ製端末としては、初のKCP3.X採用モデルになる。京セラ製端末ではおなじみの「すぐ文字」が利用可能で、そのままTwitterなどにメッセージを投稿することもできる。質感や仕上がりの良さを重視したい大人のユーザー向けのモデルと言えそうだ。

簡単ケータイ K010(京セラ)

 2010年秋冬モデルの簡単ケータイ K008の後継モデル。おなじみの「でか」機能を搭載するが、全体的なデザインはK008よりも周囲に少し丸みが付けられ、女性にも持ちやすいデザインに仕上げられている。簡単ケータイとしては初めてカメラが515万画素を搭載するほか、防水・防じんにも対応する。意外に便利なのが「毎日歩数通知」で、1日1回、最初に歩数計を利用したとき、あるいは充電を開始したときに、あらかじめ登録しておいたメールアドレスにメールを送ることができる。離れて住む両親などに持ってもらえれば、ケータイを使っているかどうかで、毎日の活動状況をある程度、把握できる。

 

それぞれに個性が際立ったラインアップ

 昨年来、国内の携帯電話市場はスマートフォンが急速に勢いを増し、販売でも話題性でもスマートフォンが中心になりつつある。その一方で、フィーチャーフォンは徐々に存在感が薄れ、各社の会見などでは一般メディアから「フィーチャーフォンと逆転するのはいつか?」「フィーチャーフォンはやめないのか?」といった質問も飛ぶことがあるくらいだ。しかし、冷静になって考えてみると、まだ市場の大多数のユーザーはフィーチャーフォンを利用しているわけで、すべてのユーザーがスマートフォンに移行するわけでもない。たとえば、本誌を愛読してくれているようなアクティブなユーザーは、スマートフォンをすでに使っているか、強い関心を持っているだろうが、少し周囲を見回すと、ごく普通にフィーチャーフォンを使っている人も多い。そう考えると、携帯電話事業者や端末メーカーにとっては、スマートフォンとフィーチャーフォンをどのようにラインアップするのかが非常に重要なテーマになってくるはずだ。

 auの場合、昨年のIS03の発表以来、急速にスマートフォンへのシフトを強めている。今回の発表でも今夏のモデルでもっともインパクトが強い「INFOBAR A01」、他に類を見ない圧倒的な存在感を持つ「G'zOne IS11CA」、auユーザー待望のXperiaシリーズとなる「Xperia acro IS11S」など、個性的なモデルをズラリと揃えている。ユーザーにとっては、2010年秋冬モデルのとき以上に迷ってしまうほどのラインアップだ。

 しかし、ラインアップが充実しているのはスマートフォンだけでなく、フィーチャーフォンも確実にキャラクターの立った個性的なモデルをラインアップしている。モデル数こそ、従来よりグッと抑えているが、各機種ともauの人気モデルのDNAを受け継ぎ、しっかりとした個性を持った魅力的なモデルがラインアップされている。ちょっと言い方が適切ではないかもしれないが、auのフィーチャーフォンは「キャラが立ってる」という印象だ。しかもフィーチャーフォン向けに「Skype au」のBREWアプリを提供するなど、フィーチャーフォンとしての新しい楽しみも提供されているのも評価できるポイントだ。

 本誌を愛読してくれている読者のみなさんの中には、これからスマートフォンに移行するかどうかを迷っていたり、「まだまだフィーチャーフォンで頑張るぞ」と考えている人もいるかもしれない。auの2011年夏モデルは、そんなユーザーの幅広いニーズ、迷えるニーズにもきちんと応えられるように、スマートフォン、フィーチャーフォンともに充実したモデルをラインアップしてきている。もちろん、ユーザーによって、反応はさまざまだろうが、どちらを選んでも後悔することがないように、うまくラインアップを揃えてきたというのが率直な印象だ。

 今回発表された端末は、東京・原宿のKDDIデザイニングスタジオ、愛知・名古屋のau NAGOYAで展示が開始されているそうだ。6月から順次、販売が開始される予定だが、本誌ではインタビュー記事やレビュー記事なども掲載される予定なので、それらをご覧いただき、「選べるラインアップ」のどちらを選ぶか、どのモデルを選ぶのかをじっくりと悩んでいただきたい。

 



(法林岳之)

2011/5/20 21:14