法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

Galaxy S21 5Gはちょうどいいハイスペックと安定感を兼ね備えた定番モデル

 国内外でもっとも人気の高いスマートフォンのひとつと言われるサムスンの「Galaxy」シリーズ。最近は「Galaxy Z Fold2 5G」や「Galaxy Z Flip 5G」などの新しい形を実現した端末をリリースする一方、手頃な「Galaxy A」シリーズも国内市場に相次いで投入し、着実に国内市場での支持を拡大している。

 諸般の事情で、発売から少し時間が空いてしまったが、筆者も実機を購入したので、今回はGalaxyシリーズのフラッグシップモデルに位置付けられる「Galaxy S21 5G」を取り上げる。今やハイエンドモデルの定番的な存在とも言われるが、その仕上がりをチェックしてみよう。

転換期を迎えつつあるハイエンドモデル

 スマートフォンという存在が市場で認識され始めてから、すでに10年以上が経過したが、これまで国内外のモバイル市場は、各社の最新の技術を投入したハイエンドモデルを中心に拡大してきた。各携帯電話会社をはじめ、GoogleなどのOTTプレーヤーが提供するサービスの存在も大きいが、やはり、多くのユーザーが関心を寄せてきたのは、各社が開発した最新のハイエンドモデルだった。

 ところが、一昨年の電気通信事業法改正により、国内のモバイル市場、なかでも端末販売については、大きな曲り角を迎えている。

 かつては各社の販売奨励金や端末購入補助などによって、10万円を超える端末でもユーザーの実質負担は半分程度に抑えられていたが、端末購入時のサポートが約2万円に制限されたことで、各社のフラッグシップモデルは明らかに売れ行きが鈍化し、3~5万円程度のミッドレンジのモデルが売れ行きを伸ばしている。

 国内で半数近いシェアを持つアップルのiPhoneも売れ筋は手頃な価格のiPhone SEや旧機種のiPhone 11などに傾いており、iPhone 12 Proシリーズなどの上位モデルはかつてのような勢いが感じられない。

 それはAndroidプラットフォームを採用するGalaxyやAQUOS、Xperiaなどでも同様で、各社はここ数年、ラインアップを見直しながら、どのような端末を提案していくのかに苦労を重ねている。

取り扱いが分かれたGalaxy S21の大画面モデル

 今回、取り上げる「Galaxy S21 5G」は、サムスンのフラッグシップのひとつである「Galaxy S」シリーズの最新モデルだ。Galaxy Sシリーズと言えば、ハイスペックと高機能で市場を牽引してきた存在であり、例年秋頃に発売されるGalaxy Noteシリーズと並んで、Galaxyのフラッグシップとして、多くのユーザーに愛用されてきた。かく言う筆者も複数利用する端末のひとつとして、Galaxyを愛用し、昨年から今年にかけてもGalaxy S20+ 5G SCG02を使ってきた。

 Galaxy Sシリーズは当初、単一のモデルとして展開されてきたが、その後、画面サイズの違う2つのモデルが展開されるようになり、ここ5~6年はグローバル市場向けで、画面サイズや一部の仕様が違うバリエーションモデルが3つ以上、展開されてきた。

 ただし、これらのバリエーションはすべての市場に展開されるわけではなく、それぞれの国と地域に合わせたモデルが投入されている。特に、日本市場向けの場合、おサイフケータイやワンセグ(TVチューナー)の搭載が求められ、グローバル市場向けとは別立てで製造されることもあり、ここ数年のGalaxy Sシリーズではディスプレイサイズが違う2モデルが投入されてきた。

 昨年のGalaxy S20シリーズもこれに傚い、NTTドコモとauから「Galaxy S20 5G」と「Galaxy S20+ 5G」がそれぞれ発売されたが、グローバル向けモデル発表時、日本のメディア関係者(筆者も含まれるが……)の間で「Galaxy S20 Ultra 5G」の評価が非常に高かったため、auがグローバル向けモデルをベースに、最小限のローカライズを施した「Galaxy S20 Ultra 5G SCG03」を投入することになった。

 このモデルはおサイフケータイなどの日本仕様がなく、auが2019年に発売した「Galaxy Fold」、2020年に発売した「Galaxy Z Flip」などと同じように、ほぼグローバル向けモデルという仕様だった。

 そして、今年は1月にグローバル向けに、6.2インチディスプレイ搭載の「Galaxy S21 5G」、6.7インチディスプレイ搭載の「Galaxy S21+ 5G」、6.8インチディスプレイ搭載の「Galaxy S21 Ultra 5G」の3モデルが発表された。

 これらの3モデルの内、日本国内向けにはおサイフケータイなどの日本仕様を搭載したモデルが開発され、NTTドコモからは「Galaxy S21 5G SC-51B」と「Galaxy S21 Ultra 5G SC-52B」、auからは「Galaxy S21 5G SCG09」と「Galaxy S21+ 5G SCG10」が発売されることになった。つまり、「Galaxy S21」はNTTドコモとauから発売されるが、ディスプレイサイズの大きい2つのモデルはNTTドコモとauで分け合う形になったわけだ。

 ディスプレイの大きい2つのモデルがNTTドコモとauで分け合う形になった背景には、auは昨年の「Galaxy S20 Ultra 5G SCG03」の売れ行きが思ったほど、芳しくなかったことが関係していると推察される。

 同時に、Galaxyの主力であるGalaxy Sシリーズは、発売開始時こそ、ディスプレイサイズが大きいモデル(昨年で言えば、Galaxy S20+ 5G)が売れるものの、一年を通して見ると、標準サイズのモデルの方が売れるため、ディスプレイサイズの大きいモデルの取り扱いは増やしたくない(3モデルは扱えない)という考えもうかがえる。特に、現在のように、端末購入補助が制限され、ハイエンドモデルの売れ行きが芳しくない状況を鑑みれば、なおさらのことだろう。

 また、こうしたハイエンドモデルの扱いに対する方向性の変化は、Galaxyそのものの仕様にも影響している。今回はGalaxy S21 5Gを取り上げるが、従来モデルに比べ、スペックに若干の違いがあるものの、販売価格が少し抑えられている。NTTドコモとauでは価格に差があり、NTTドコモの「Galaxy S21 5G SC-51B」は9万9792円(ドコモオンラインショップ価格)、auの「Galaxy S21 5G SCG09」は11万8540円(au OnlineShop価格)となっている。auの価格がNTTドコモに比べ、2万円近く高いのは不満が残るが、昨今のハイエンドモデルに付けられている15万円前後のような価格帯ではないため、旧機種からのユーザーも買い換えやすそうだ。

 ちなみに、NTTドコモについては同じ仕様の「Galaxy S21 5G Olympic Games Edition SC-51B」を11万2464円で販売しており、どうせなら、記念モデルを買うというのも面白いかもしれない。従来のOlympic Games Editionに比べ、標準品との差分が外装や壁紙、ロック画面、アイコンなどに限られているが、ユーザー(オーナー)も限られているので、個性を主張したいユーザーにはおすすめだ。

カメラモジュールが目立つ背面デザイン

 まず、外観からチェックしてみよう。ボディは幅71.2mm、重さ171gにまとめられており、背面のエッジを少し丸めた形状は、あまり手の大きくないユーザーにも持ちやすい。この幅70mm前後のサイズ感は、iPhone 12などともほぼ同じで、現在のスマートフォンのサイズとしては、もっとも標準的なサイズと言えるのかもしれない。

NTTドコモ/サムスン「Galaxy S21 5G SC-51B」(写真)、au/サムスン「Galaxy S21 5G SCG09」、約151.7mm(高さ)×71.2mm(幅)×7.9mm(厚さ)、約171g(重さ)ファントム バイオレット(写真)、ファントム グレー、ファントム ホワイトをラインアップ

 ボディのデザインで目を引くのは、やはり、背面のカメラモジュールだろう。昨年のGalaxy Note 20 Ultraからカメラモジュールを盛り上げた形状のデザインを採用しているが、今回のGalaxy S21シリーズの統一したデザインとなっており、背面から見ると、同シリーズであることがすぐわかる。

Galaxy S21 5G(左)、Galaxy S20 5G(右)の背面。カメラモジュールを強調するデザインに仕上げられた

 ボディの仕様については、IPX5/8の防水、IP6Xの防塵に対応しており、安心して利用できる。ちなみに、Galaxyユーザーであれば、ご存知だろうが、純正のカバー類は、手帳タイプでウィンドウのある「Smart Clear Cover」、同じく手帳タイプでLEDが内蔵された「Smart LED View Cover」、耐衝撃性能とスタンドを備える「Protective Standing Cover」など、それぞれに個性のある製品がラインアップされているので、購入したユーザーは、一度、チェックしてみるといいだろう。

背面はカメラモジュールの部分を少し盛り上げた形状。おサイフケータイは背面中央右下(カメラモジュールの反対側)にロゴがプリントされており、この部分をリーダー/ライターにかざす
本体下部にはUSB Type-C外部接続端子を備える。右隣はピンで取り出すSIMカードスロット
左側面はボタン類がない。ディスプレイがフラットになったため、側面から見てもディスプレイは見えない
右側面は電源ボタン、シーソー式音量ボタンを備える。カメラモジュールは目立つが、突起はそれほどでもない

フルHD+対応になってしまった有機ELディスプレイ

 ディスプレイは6.2インチのフルHD+対応Dynamic AMOLED(有機EL)を搭載する。ディスプレイのガラスにはGalaxy史上、もっとも頑丈とされる米Corning製Gorilla Glass Victusが組み合わせられている。

 前述のように、今回のGalaxy S21 5Gの価格が抑えられた要因のひとつは、このディスプレイにある。対角サイズは従来のGalaxy S20 5Gと同じ6.2インチだが、従来モデルの解像度が3200×1440ドット表示のQuad HD+であるのに対し、Galaxy S21 5Gは2400×1080ドット表示のフルHD+となっており、解像度としては一段、低いものが採用されている。これはauが販売する「Galaxy S21+ 5G SCG10」も共通で、同じくフルHD+対応のものが採用されている。

 振り返ってみると、Galaxy S8の頃から継続して採用されてきたQuad HD+がフルHD+に切り替わったことになる。ただ、従来モデルも出荷時設定はフルHD+表示で、ユーザーが設定を切り替えると、Quad HD+で表示するという仕様になっていた。実際の見た目の違いについては、まったくないとは言えないものの、実用面ではそれほど大きな遜色はない。逆に、フルHD+化で解像度が低くなったことで、おそらく消費電力はやや抑えられるため、バッテリー駆動時間は少し長くなりそうだ。

 また、画面のなめらかさに大きく影響するリフレッシュレートについては、表示するコンテンツに合わせ、最大120Hzに自動的に調整する機能を持つ。出荷時設定では自動調整された「最適化」が選ばれており、「標準」に切り替えると、60Hz駆動に固定され、バッテリー消費を抑えることができる。

 ディスプレイに関連するところでは、有機ELディスプレイの特長を活かした「ダークモード」がサポートされており、日の出と日の入りに連動させたり、ユーザーによるカスタム設定も可能だ。ブルーライトをカットする「目の保護モード」なども設定できる。ポケットやカバンに入れているときの誤操作を防ぐ「誤操作を防止」、保護フィルムを貼っているときのタッチ感度を向上させる「タッチ感度」などの設定も可能だ。ちなみに、Galaxy S21シリーズは出荷時に実用可能な保護フィルムが貼られている。

通知パネル内の機能ボタンには「QRコードをスキャン」や「Wi-Fiテザリング」、「ワイヤレスバッテリー共有」なども用意されている

 生体認証は画面内に超音波式の指紋センサーを内蔵し、指紋認証が利用できる。指紋認証のレスポンスも良好で、すぐに画面ロックの解除ができるほか、「Galaxy Pass」を使うことで、Webサイトや各種サービスのログイン認証にも指紋認証が利用できる。

指紋認証は画面内に超音波式指紋センサーを内蔵
「Galaxy Pass」アプリを利用すれば、指紋認証をさまざまなサービスのログインなどに利用できる

 顔認証にも対応するが、昨今の状況を鑑みると、やはり、頻繁に操作する画面ロック解除は指紋認証の方が有用であり、外出時は指紋認証、自宅では顔認証といった使い分けが便利だ。ただし、顔認証については、よく似た顔でも解除されてしまう可能性があるので、その点は理解しておきたい。

顔認証にも対応するが、似ている人や写真などで画面ロックが解除されるリスクがある
顔認証でロックを解除したとき、すぐにホーム画面を表示するか、ロック画面を維持するかの設定が可能

ワイヤレス充電とワイヤレス給電に対応

 バッテリーは4000mAhの大容量バッテリーを搭載し、USB Type-C外部接続端子からの充電に加え、Qi規格準拠のワイヤレス充電にも対応する。本体内蔵のバッテリーを使い、Galaxy BudsやGalaxy Watchなどのワイヤレス充電対応機器や他のスマートフォンに給電できる「ワイヤレスバッテリー共有」にも対応する。端末本体のバッテリー残量によって、給電を制限することもできる。

通知パネルから「ワイヤレスバッテリー共有」を有効にして、充電を介すると、このように表示される
ワイヤレスバッテリー共有はGalaxy Buds Proなど、ワイヤレス充電対応機器を充電できる

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 888を採用し、8GBのRAM、256GBのROMを搭載するが、microSDメモリーカードには対応していないため、写真や動画、音楽などは本体内蔵のストレージのみに保存することになる。

 もっとも写真などについては、Googleフォトにアップロードできるほか、マイクロソフトのOneDriveにもバックアップできるため、それほど困ることはなさそうだ。ただ、動画については後述するように、8K動画の撮影に対応しているため、高解像度の動画を頻繁に撮影するユーザーは少し注意が必要だ。

 ちなみに、ドコモオンラインショップで購入した本体には、USB Type-C外部接続端子に接続するmicroSDメモリーカードリーダーが付属しており、機種変更時のデータ移行などに利用できた。ただし、NTTドコモが提供する「ドコモデータコピー」は外部接続端子に接続するカードリーダーには対応していないため、Googleが提供する「Files」などのアプリで、コピーする必要があった。

他機種からのデータ移行に便利なサムスン製「SmartSwitch」。Androidスマートフォンだけでなく、iPhoneなどからもほとんどのデータを移行できる

 ネットワークについては5G/4G LTE/3G W-CDMA方式に対応しており、NTTドコモとauのそれぞれのネットワークに合わせた仕様となっている。5GについてはSub6のみの対応で、ミリ波には対応しないが、当面、ミリ波はスタジアムや競技場などで、来場者に対して、コンテンツを配信するなど、特定用途に利用することを想定しているうえ、スマートフォンの一般的な利用で1Gbps以上のパフォーマンスを求める用途もないため、気にする必要はないだろう。

 SIMカードはキャリアモデルということもあり、SIMカードはnanoSIMカード1枚のみの装着が可能だ。FeliCaを利用したおサイフケータイにも対応する。ワンセグなどのテレビチューナー機能は搭載されないが、ワイドFMラジオは搭載される。

下部にピンを挿して取り出すSIMカードトレイ。nanoSIMカード1枚のみを装着。外部メモリーカードには非対応
FMラジオを搭載するが、USB外部接続端子にイヤホンを接続する必要がある。一般的なUSBケーブルではアンテナにならない

 プラットフォームはAndroid 11を採用し、Galaxyシリーズのユーザーインターフェイス「One UI 3.1」が実装されている。auの「Galaxy S21 5G SCG09」については、ホームアプリが「One UIホーム」のみだが、NTTドコモの「Galaxy S21 5G SC-51B」は「One UIホーム」のほかに、「docomo LIVE UX」と「Disney DX」を選ぶことができる。ユーザーによって好みもあるだろうが、個人的には「One UIホーム」で利用するのがおすすめだ。

 「One UIホーム」についてはカスタマイズも可能で、「ホーム画面のレイアウト」や各画面のグリッド、アプリ画面ボタンの表示/非表示、ホーム画面のレイアウトのロックなどが設定できる。

One UIのホーム画面。上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される
表示されたアプリ一案画面は左方向にスワイプすると、次の画面が表示される
ホーム画面はレイアウトやグリッド、動作などを細かくカスタマイズできる
標準ではホーム画面とアプリ画面を別々に表示するが、iPhoneや一部のAndroidスマートフォンのように、ホーム画面のみで表示することも可能

 さまざまな画面で右上の「ハンドル」を内側にスワイプして表示する「エッジパネル」も健在で、アプリだけでなく、連絡先や天気予報、ツール、リマインダーなども表示できる。日本語入力はAndroid標準の「Gboard」ではなく、独自の「Galaxyキーボード」が採用されており、カスタマイズも含め、非常に使いやすい。

ディスプレイの右上のハンドルを内側にスワイプして表示されるエッジパネル。頻繁に使うアプリを登録しておくと便利だ
エッジパネルはアプリだけでなく、連絡先や天気予報などを表示することも可能

超広角/広角/望遠のトリプルカメラを搭載

 カメラについては、背面左上のカメラモジュールに、超広角/広角/望遠の3つのカメラを搭載する。最上部から順に、1200万画素(1/2.5インチ)/F2.2の超広角カメラ(13mm)、1200万画素(1/1.7インチ)/F1.8の広角カメラ(26mm)、6400万画素(1/1.7インチ)/F2.0の望遠カメラ(29mm)で構成される。

背面のメインカメラはトリプルカメラの構成

 撮影モードは一般的な「写真」のほかに、最大8K/24fpsでの撮影が可能な「動画」、細かく設定ができる「プロ」、背景をぼかした「ポートレート」、動画と静止画を同時に撮影して組み合わせ表示をする「シングルテイク」などが搭載されている。基本的には、被写体をAIで認識するため、「写真」モードのまま、構えれば、人物なら「ポートレート」が選ばれ、夜景なら「ナイトモード」が選ばれるため、撮影モードを意識することなく、使うことができる。

撮影モードの「その他」には「プロ」や「ポートレート」などのほかに、「AR手描き」や「スローモーション」などのモードも用意される

 また、6400万画素望遠カメラでの撮影では、4つのピクセルを1つにまとめて使うビニングがサポートされているため、暗いところでの撮影にも強い。手持ちのままで夜景を撮ってもきれいに撮影できるが、ナイトモートでのズームは元々、望遠カメラが光学1.1倍、光学とデジタルを組み合わせたハイブリッド光学ズームが3倍、デジタルズームのみで30倍という仕様のため、3倍を超えると、画質が大きく変わってしまう。そのため、ズームについては日中など、明るいシーンでの撮影を中心に利用し、ナイトモードでは必要以上にズームしない使い方がベターだろう。

ファインダー内の木のアイコンをタップすると、右側(縦画面のときは下側)に倍率のアイコンが表示される
夜景を広角カメラで撮影。超広角カメラでも撮影したが、やや暗めになるので、広角の方が有用な印象

 動画については8K/24fpsでの撮影に対応するが、実際のところ、8Kで撮影しても表示する環境が限られている。そこで、Galaxy S21 5Gでは8Kで動画を撮影しておき、気に入ったシーンで33MPの静止画を切り出す方法をアピールしている。気になるシーンなら、8K動画で撮っておけば、あとで動画でも静止画でも使えるというわけだ。

 確かに、実用的な方法と言えるが、8K動画をたくさん撮影すれば、本体のストレージ容量を消費するうえ、今回のモデルはmicroSDメモリーカードに対応していないため、どこかのタイミングで、パソコンやクラウドストレージに退避させたり、削除する必要があるので、その点は気をつけたい。

 インカメラについては1000万画素(1/3.2インチ)/F2.2(26mm)のカメラモジュールを中央上のパンチホールに収めているが、他のスマートフォンのインカメラと違い、デュアルピクセルPDAFに対応しているため、しっかりとピントを合わせたセルフィーを撮影することができる。

インカメラはディスプレイ上部のパンチホールに内蔵
インカメラでセルフィー。オートフォーカスが効き、ポートレートで背景がボケるため、かなりくっきりした写真が撮影できる。本人の左後ろの人物がボケていないのはご愛敬(笑)

 もちろん、背景をぼかしたポートレート撮影、顔立ちや目の大きさを補正するフェイスエフェクトなども用意されており、セルフィーを頻繁に撮影するユーザーのニーズに応えている。

背景をぼかしたポートレートで撮影
モデル:葵木ひな(ボンボンファミン・プロダクション
広角で撮影。人物全体はくっきり撮影され、背景が自然にぼけている

 カメラ周りでもうひとつ他機種と違うのは、撮影した写真や動画を閲覧するアプリとして、独自の「ギャラリー」アプリが継続されている点だ。他製品ではGoogleフォトへの移行が進んでいるが、シングルテイクの再生などへの対応もあって、Galaxyでは「ギャラリー」アプリの搭載が継続しているようだ。

「ギャラリー」アプリではシングルテイクもこのように表示され、動画も同時に再生される

ちょうどいいハイスペックを目指した定番フラッグシップモデル

 スマートフォンを選ぶとき、これまではハイスペックなフラッグシップモデルが市場の中心的な存在だった。

 この背景には「ハイスペックなモデルを買っておけば、長く使えるはず」という意識が働いていたが、国内の市場環境を見ると、一昨年の電気通信事業法改正により、端末購入補助が適用されなくなり、売れ筋がミッドレンジに移行したとされる。その流れに合わせ、各社のラインアップもミッドレンジが増え、サムスンも「Galaxy A」シリーズなどを各社に供給し、市場でも好評を得ている。

 そんな中、フラッグシップである「Galaxy S」シリーズがどのように仕上がるのかが注目されたが、本稿でも説明したように、Galaxy S21 5Gは最先端&最高峰のハイスペックばかりを追うのではなく、「ちょうどいいハイスペック」をバランス良く実現したモデルに仕上げられている。

 チップセットなどは最高スペックを実現しているが、ディスプレイなどは表示のなめらかさやバッテリー消費、レスポンスにも影響するため、敢えてフルHD+対応のものを選んだということだろう。

 ユーザビリティの良さや全体的な動作などは、従来モデルに引き続き、安定しており、多くのユーザーが安心して利用することができるレベルに仕上げられている。価格もau向けは若干、高いものの、NTTドコモ向けは10万円を切っており、既存のGalaxyユーザーにも買い換えやすいレベルに抑えられていることも好印象だ。Galaxy S9/S10シリーズ以前のユーザーにとっては、ちょうどいい買い換えのタイミングと言えそうだ。Galaxyユーザーはもちろん、ハイスペックなフラッグシップをスマートに使いたいユーザーにおすすめできる一台だ。

今回発売された「Galaxy S21+ 5G」(左)、「Galaxy S21 5G」(中央)、「Galaxy S21 Ultra 5G」(右)の内、「Galaxy S21 5G」はちょうどいいハイスペックを追求したモデル。画面サイズを重視するなら「Galaxy S21+ 5G」、もっともハイスペックなモデルが欲しいなら「Galaxy S21 Ultra 5G」を狙いたい
「Galaxy S21+ 5G」(左)、「Galaxy S21 5G」(中央)、「Galaxy S21 Ultra 5G」(右)の背面。基本的なデザインは共通化されている