法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

LG初「Android One X5」はハイスペックのニーズに応える

 ワイモバイルが積極的にラインアップを展開するAndroid Oneシリーズ。その最新モデルとなる「Android One X5」が発売された。

ワイモバイル/LGエレクトロニクス「Android One X5」、約153mm(高さ)×72mm(幅)×7.9mm(厚さ)、約158g(重量)、ミスティックホワイト(写真)、モロッカンブルーをラインアップ

 LGエレクトロニクスとしては初のAndroid Oneになる同モデル。その実機を試用することができたので、レポートをお送りしよう。

新興国向けから拡大したAndroid Oneシリーズ

 Googleが中心となって開発されているAndroidプラットフォームは、世界各国の端末メーカーが採用し、Googleが定めた一定のルールに基づいて搭載されている。

 かつてはメーカーによるカスタマイズや、携帯電話会社の独自アプリの影響などにより、プラットフォームのバージョンアップが進まない状況だった。

 そのため、ユーザーは最新のAndroidプラットフォームを利用するために、Googleが各端末メーカーと共に開発したリファレンスモデルの「Nexus」シリーズを選んだり、グローバル市場に展開する端末メーカーや製品を選ぶ傾向もあった。しかし、こうした状況は徐々に改善され、最近では国内でもいち早くプラットフォームのバージョンアップやセキュリティパッチを含むアップデートが提供されるようになりつつある。

 こうした中、Googleは2014年頃からインドやバングラデシュ、フィリピン、インドネシアなどの新興国や開発途上国向けを中心に、低価格でシンプルな構成の「Android One」と銘打たれたシリーズを展開してきた。

 その背景には既存の低価格端末がGoogleの求める仕様を満たしておらず、アップデートが行われないまま、使い続けられることがあった。Googleが提供する最新のサービスが利用できないばかりか、セキュリティ面でのリスクが続いており、こうした状況を解消したかったという考えがあったのだ。

新興国向けのAndroid One、2016年から日本でも

 この流れを受け、日本では2016年7月にワイモバイルからシャープ製「Android One 507SH」が初のAndroid One端末として発売された。

 日本は新興国や発展途上国と市場環境が異なるものの、Googleの最新サービス対応や最新プラットフォームの展開という課題は同じ状況にあった。ワイモバイルが積極的に扱ってきたNexusシリーズが終了することもあり、Android One投入に結び付いたようだ。

Android One 507SH

 初代モデルのAndroid One 507SHは当時の最新版であるAndroid 6.0を搭載して出荷され、発売から24カ月間に最低1回のOSバージョンアップ保証、発売から3年間のセキュリティアップデートが提供されることがアナウンスされた。ちなみに、発売から2年半が経過した現在もセキュリティアップデートが提供され、プラットフォームもAndroid 8.0に更新されている。

 Android One 507SHは、割引後の実質価格が2万円程度に抑えられたこともあり、好調な売れ行きを記録し、これに気をよくしたワイモバイルとGoogleは、2017年以降、国内でAndroid Oneをシリーズ化し、Android One SとAndroid One Xの2つのラインアップを展開し始める。

 当初は国内市場におけるミッドレンジからエントリー向けのモデルでスタートしたが、その後、ミッドハイに位置付けられるモデルもラインアップに加わり、今やワイモバイルにとって、iPhoneと並ぶ主力商品に成長している。

日本国内で発売されたAndroid One
発売機種名メーカー
2016年7月Android One 507SHシャープ
2017年2月Android One S1シャープ
2017年3月Android One S2京セラ
2017年6月Android One X1シャープ
2017年12月Android One X2HTC
2018年1月Android One X3京セラ
2018年1月Android One S3シャープ
2018年2月Android One S4京セラ
2018年6月Android One X4シャープ
2018年12月Android One X5LGエレクトロニクス
2018年12月Android One S5シャープ

 こうしたAndroid Oneをシリーズ展開する動きは海外でも顕著だ。2018年にはLGエレクトロニクスやモトローラ、シャオミ、ノキアなどのメーカーもAndroid Oneに参入し、各国に端末を供給し始めている。当初の新興国や発展途上国向けといった枠組を超え、今や普及価格帯からハイエンドまで、幅広いモデルが投入されている。

 今回発売された「Android One X5」は、LGエレクトロニクスとして、初の国内向けのAndroid Oneシリーズということになる。ベースモデルは昨年のIFA 2018でグローバル向けに発表された「LG G7 One」だが、おサイフケータイに対応するなど、日本仕様を取り込んだ国内向けモデルとして開発されている。

 ワイモバイルのオンラインストア価格は8万3484円になっており、端末購入に伴う月額割引「1512円×24回」を差し引くと、実質価格は4万7196円となり、Android Oneシリーズとしてはもっとも高い価格帯に位置付けられる。

6.1インチQHD+対応FullVisionディスプレイ搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。これまでワイモバイルが販売してきたAndroid Oneシリーズは、いずれも5~5.5インチクラスのディスプレイを搭載し、上下にベゼル(額縁)のあるスタンダードなデザインのモデルが展開されてきた。

背面には指紋認証センサー、メインカメラを備える。LGのロゴマークの下におサイフケータイのマークがプリントされている

 Android One X5では、最近のハイエンドモデルやフラッグシップモデルと同じような、本体前面のほとんどをディスプレイが覆うデザインを採用する。

 ディスプレイは国内向けAndroid Oneでもっとも大きい6.1インチだが、ボディ幅は72mmに抑えられており、手にしたときにもあまり大きさを感じさせない。

 ディスプレイは3120×1440ドット表示が可能なQHD+を採用しており、縦横比は19.5:9と縦長で、画面の最大輝度は1000nitとかなり明るい。ワイモバイルのAndroid Oneシリーズでは最高クラスのスペックであり、自らグループ内で液晶パネルを製造するLGの強みを活かしている印象だ。

左側面には分割式の音量ボタン、Googleアシスタントボタンを備える
右側面は電源ボタンのみ

 背面は樹脂製パーツを採用し、指紋などが付きにくい独特の触感の仕上げが施されている。

 ボディはIPX5/IPX6対応防水、IP6X対応防塵に対応するほか、MIL規格(MIL-STD-810G)の14項目もクリアしており、耐衝撃性能も備える。長く安心して利用できる仕上がりと言えるだろう。

上部にはピンで取り出すタイプのSIMトレイを備える
下部にはUSB Type-C外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子を備える

ハイスペックなAndroid One

 チップセットは米Qualcomm製Snapdragon 835(MSM8998)を採用し、4GB RAMと32GB ROMを搭載する。

 Snapdragon 835は同じLGエレクトロニクス製で言えば、V30+ L-01K(NTTドコモ)やisai V30 LGV35(au)、他社ではGalaxy S8/S8+、AQUOS R、Xperia XZ1、Zenfon 4 Pro、HTC U11(ソフトバンク)など、2017年のフラッグシップモデルに搭載されたチップセット。Android Oneシリーズとしてはもっともハイスペックに位置付けられる。

SIMトレイにはnanoSIMカード、microSDメモリーカードを装着可能

 バッテリーは3000mAhの大容量バッテリーを搭載し、本体下部のUSB Type-C外部接続端子にACアダプタを接続することで、約120分でフル充電することができる。

おサイフケータイ対応

 また、前述のように、Android One X5はグローバル向けモデルをベースにしながら、おサイフケータイに対応する。

[おサイフケータイ]アプリを起動すると、各対応サービスが表示される

 ワイモバイルとLGエレクトロニクスのWebページには対応サービスが記載されていないが、[おサイフケータイ]アプリを見る限り、他機種と同じように、楽天edyやWAON、QUICPay、nanacoなどが利用可能で、モバイルSuicaについてもJR東日本のWebページで対応機種に挙げられているので、安心して利用できる。

Android 9 Pieを搭載

 プラットフォームはAndroid Oneシリーズということもあり、最新のAndroid 9 Pieが出荷時にインストールされている。他のAndroid Oneシリーズ同様、発売から最低1回のOSのアップデート、3年間のセキュリティアップデートが確約されており、発売直後の昨年12月20日にはセキュリティアップデートが公開されている。

ホーム画面は他のAndroid Oneシリーズ端末と同様のレイアウト。画面下段に検索ボックスのウィジェットが設定される。ワイモバイルのアプリは右中段のフォルダにまとめられている
上方向にスワイプすると、使ったアプリの一覧画面(タスク画面)が表示される
アプリの一覧画面。アプリが増えてきたときは最上段の検索ボックスから検索も可能

 ユーザーインターフェイスはAndroid 9 Pieの標準仕様を採用。ホーム画面から上方向にスワイプすると、タスク切り替え画面が表示され、画面の半分以上にスワイプすると、アプリ一覧が表示される。

 他機種のレビューでも指摘しているが、この画面半分以上までスワイプしないと、アプリ一覧が表示されない操作は非常に使いにくいため、今後のアップデートで改善されないようであれば、好みに応じて、他のホームアプリのインストールなどを検討するのも手だろう。

カスタマイズ可能な通知パネルは[バッテリーセーバー]などもワンタッチで設定可能
左側面の押して、すぐにGoogleアシスタントで情報を検索することが可能

 本体左側面の音量ボタンの下には「Googleアシスタントボタン」が備えられている。このボタンを1回、押すと、Googleアシスタントをワンタッチで起動でき、2回、押すと、Googleレンズを起動することができる。

Googleレンズは被写体に関する情報を検索できる。ウイスキーの瓶に向けてみると、「類似の商品」として情報が検索された

 あらためて説明するまでもないが、Googleアシスタントはさまざまな情報を音声などで検索できるもので、「東京駅までのルートを教えて」というように、経路検索などの機能も使うことができる。

 Googleレンズはカメラを使うことで、ファインダーに映し出された対象物の情報を検索できる機能で、植物や動物、名所、ランドマークなどを調べることもできる。いずれもアプリとして、個別に起動できるが、ワンタッチで起動できるのは便利だ。

 セキュリティについては背面に指紋センサーが搭載される。画面オフの状態から端末を手に持ち、背面に登録した指を当てれば、自動的に画面がオンに切り替わり、ロックも解除される。指紋センサーの位置も片手で持ったとき、ちょうど指先が当たる位置にあり、操作しやすい。

背面の指紋センサーに指紋を登録しておけば、画面オフの状態からすぐに利用できる

9つのカテゴリーから自動的にシーンを選択するAIカメラ

 Googleの最新プラットフォームが利用でき、一定期間のセキュリティアップデートも保証されているAndroid One。しかし、初期のモデルでは将来的なアップデートのため、Googleの標準仕様に準拠する必要があり、メーカー独自のアプリやカスタマイズができないなどのデメリットも存在した。

 なかでもカメラについては、各社独自のユーザーインターフェイスや機能を搭載しようとしても標準のカメラアプリが対応できないなどの制約があった。こうした制約も最新のAndroid Oneシリーズで解消されており、アップデートに支障のない範囲で、各社独自のカスタマイズが実装されている。

AIカメラを起動すると、被写体を認識し、情報を表示。最適な設定で撮影が可能。左側の「食べ物」だけでなく、「Whisky」「アルコール飲料」と表示されたのは少し意外だった
カメラの設定画面。手ぶれ補正やボイスシャッターなどの設定も切り替えが可能

 今回のAndroid One X5では“AIカメラ”が搭載されており、あらかじめ用意されている9つのカテゴリーから最適なモードを自動的に選択し、それぞれのシーンに合わせた設定で撮影できるようにしている。

 具体的には「AI」「人物」「ペット」「食べ物」「街」「日出」「夕焼け」「風景」「花」の9種類が登録されている。[カメラ]アプリのユーザーインターフェイスも独自のものが採用されており、カメラの画面で静止画と動画のどちらも撮影でき、GoogleレンズとAIカメラもワンタッチで切り替えられるようにしている。

 カメラのスペックとしては外側のメインカメラに1600万画素CMOSイメージセンサー、内側のインカメラに800万画素CMOSイメージセンサーを採用する。

スーパーブライドモードは「オート」「マニュアル」「OFF」の設定が可能
カメラの撮影モードは通常の撮影だけでなく、スローモーションやタイムラプスにも対応。AR Stickersはその場所にARで描かれたキャラクターをいっしょに映し出すことが可能

 メインカメラについては暗いところでも明るく撮影できる「スーパーブライドカメラ」が搭載されており、「オート」「マニュアル」「OFF」のいずれかに設定しておくことができる。

 インカメラについては美肌補正(ビューティーモード)やフィルタなどのエフェクトに加え、ポートレートに切り替えることで、背景のボケ味をスライダーで調整できる機能も搭載されており、背景を写したいとき、隠したいときに使い分けることができる。

 自分撮りについてはインカメラを起動した状態で、手のひらを写るようにして、手のひらを握ると、3秒後にシャッターが切れるジェスチャーショットもサポートされる。

いつもの薄暗いバーで撮影。暗いところでもハッキリとした写真を撮影できる
メインカメラを使い、HDRで撮影。背景のボケ味は自然
モデル:るびぃ(ボンボンファミンプロダクション)

HDR10対応、サウンドの大音量再生も

 エンターテインメント機能としては、前述のように、6.1インチのFullViewディスプレイを搭載しているため、さまざまな映像コンテンツを迫力ある画面で楽しめる。

 ディスプレイはHDR10対応で、Netflixなどで配信されるHDR対応コンテンツを楽しむことが可能だ。

 サウンドは大音量での再生が可能な「BOOMBOX SPEAKER」を搭載し、ヘッドフォン利用時にHi-Fi QUAD DACによる高音質再生を実現している。

 DTS:X 3D SOUNDにも対応し、多彩なエンターテインメントを楽しみたいユーザーのニーズに応える環境を整えている。このあたりは家庭用テレビなどを手がけるLGエレクトロニクスならではのこだわりだろう。

Android Oneシリーズでハイスペックを求めるユーザーに

 最新のプラットフォームを搭載し、Googleの多彩なサービスをシンプルなユーザーインターフェイスで利用できるだけでなく、OSのバージョンアップやセキュリティアップデートの提供が一定期間、約束されている安心感が評価され、国内で着実に支持を拡げてきたAndroid Oneシリーズ。

 これまではどちらかと言えば、ミッドレンジまでのモデルが中心だったが、LGエレクトロニクスの国内向け初のAndroid Oneとして登場した「Android One X5」は、シリーズでもっともハイスペックなモデルに仕上げられている。

 ディスプレイはシリーズ最大クラス、チップセットは2017年のハイエンドモデルと同等であり、幅広い用途に活用したいユーザーのニーズにもしっかりと応えられる仕様と言えるだろう。

 ただし、その分、販売価格はシリーズでもっとも高く、他社のフラッグシップなどに近い価格帯となってしまった。もし、購入を検討しているのであれば、現在、総務省で議論が進められている分離プランへの完全移行の前に、月額割引がある状態で購入して、少しでも負担を減らしたいところだ。

 ちなみに、Android One X5を購入したユーザーに対し、Googleポイントを3000円分プレゼントするキャンペーンが3月31日まで実施されているので、購入したユーザーはこちらも忘れずに応募しておきたい。

 また、Android Oneシリーズとしての悩みどころは、拡大してきたシリーズをきちんとユーザーに売り分けていけるかどうかだろう。

 ワイモバイルとGoogleは初代モデルが高評価だったこともあり、Android Oneシリーズのラインアップを拡大してきたが、ややモデル数が増えすぎてしまった感は否めない。

 冒頭でも触れたように、スペックの違いなどにより、「Android One S」と「Android One X」という2つのシリーズに分かれているものの、ワイモバイルのオンラインショップで販売されているAndroid Oneの現行機種は6機種もあり、その他にアウトレットという扱いで4機種も販売されている。

 各社の新製品を追いかけているユーザーならともかく、あまりそういったことを意識していないユーザーにとって、メーカー名もモデルの差異もわからない中、どのモデルを選べばいいのかが判断しにくい状況になりつつある。

 今回取り上げた「Android One X5」はスペックを求めるユーザーのニーズに応える仕様で、おサイフケータイにも対応していることから、これまでもスマートフォンを利用してきたユーザーの機種変更にも適したモデルに仕上げられている。ぜひ一度、店頭で実機を手に取り、その仕上がりをチェックしていただきたい。

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法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone XS/XS Max/XR超入門」、「できるゼロからはじめるiPad超入門 Apple Pencil&新iPad/Pro/mini 4対応」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂3版」、「できるポケット docomo HUAWEI P20 Pro基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるWindows 10 改訂4版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。