法林岳之の「週刊モバイルCATCH UP」

「LG Q Stylus」の専用スタイラスペンは手書きにも操作にも使えて便利

 画面をタッチしながら操作するスマートフォンだが、必ずしも指先でタッチしなければならないわけではない。専用スタイラスペンを採用することで、手軽に手書きを楽しめるモデルとして、LGエレクトロニクス製「LG Q Style」が楽天モバイルから発売された。実機を試すことができたので、レポートをお送りしよう。

LGエレクトロニクス「LG Q Stylus」、約160mm(高さ)×78mm(幅)×8.5mm(厚さ)、約172g(重量)、モロッカンブルー(写真)、ラベンダーをラインアップ

始まりは「ペン」だった?

 現在のスマートフォンは画面をタッチして操作する。かつてのケータイではテンキー(ダイヤルキー)や方向キーを押して、操作していた。

 ボタンがタッチパネルに置き換わった格好だが、実はスマートフォンの操作の原型は、今から20年以上前、各社から登場したPDA(Personal Digital Assistant)にあると言われている。筆者と同じ世代、少し近い世代の読者なら覚えているだろう。

2003年に発売されたシャープの「ザウルス SL-C750/SL-C760」
2001年発売の「Palm m105」

 1990年代~2000年代初頭には「ザウルス」(シャープ)や「Palm」(Palm)、など、数多くのPDAが登場し、市場をにぎわせていた。当時のケータイは「話す道具」だったのに対し、PDAは電子的な手帳として生まれ、ビジネスパーソンなどに支持されていた。

 その後、ケータイにPDA的な機能が取り込まれ、メールやコンテンツサービスの拡大と共に、PDAの市場は縮小してしまったが、当時のPDAはスタイラスペンで操作する機種が多かった。当時のタッチパネルが指先の微妙なタッチ操作に十分、対応できなかった面もあるが、PDAが電子的な手帳から進化したこともあり、「ペンで書く」という操作に対する期待も大きかった。

 そして、進化を遂げたスマートフォンをはじめとする今日のデジタルツールを見てみると、意外なほど、ペンを備えた機種はそれほど多くない。スマートフォンで言えば、サムスンの「Galaxy Note」シリーズ、パソコンでは「Surface」シリーズが人気を得ているが、いずれもある程度、上の価格帯の商品であり、どちらかと言えば、ビジネスユースや学生などに人気が高いとされている。「メモを取る」用途についても画面に表示されたキーボードをタッチして入力したり、記録したいモノをカメラで撮ることで、電子メモにするといった使われ方をしている。

 今回発売された「LG Q Stylus」は、スタイラスペンが付属し、手書きでメモなどを取ることができるスマートフォンになる。ペンが付属するというと、Galaxy Noteシリーズの対抗馬として捉えられそうだが、価格は4万円前後に抑えられており、コストパフォーマンスに優れたモデルとして仕上げられている。

 付属のスタイラスペンで手書き入力でメモを取ることができるが、実はスタイラスペンで画面上のアイコンやメニュー、キーボードなどを確実にタップできることから、シニア世代以上もターゲットユーザー層として捉えている。LGエレクトロニクスは各国向けにスタイラスペンが付属したモデルを供給してきた実績があり、一部の国と地域では実働世代が自分の親にプレゼントする「親孝行スマホ」のキャンペーンなどが実施され、着実にユーザー層を拡大してきたという。

 国内向けに展開される「LG Q Stylus」は昨年11月22日の発表当時、楽天モバイルでの取り扱いが発表されたが、その後、ワイモバイルでもジャパネットたかた限定販売という形で販売されることが明らかになった。普段、同社のテレビショッピングを見ている方なら、ご存知だろうが、ジャパネットたかたはかつてのイー・モバイル時代から、パソコンやタブレットにバンドルする形で、モバイルWi-Fiルーターを数多く販売してきた実績がある。最近ではワイモバイルのスマートフォンを販売し、好調な売れ行きを記録しているという。シニア層のユーザーへ販売する手法のひとつとして注目される。

6.2インチフルHD+対応液晶ディスプレイ搭載

 まず、外観からチェックしてみよう。ボディは前面のほとんどをディスプレイが覆うデザインを採用し、厚さ約8.5mmの比較的スリムな形状に仕上げている。ディスプレイサイズが大きいこともあり、ボディ幅は約78mmとややワイドだが、左手にボディを持ち、右手に専用スタイラスペンを持って操作するには、ちょうどいいサイズ感と言えるだろう。ボディが小さくなってしまうと、画面サイズも狭くなったり、ペンでの操作感が失われてしまうからだ。

左側面には分割式の音量ボタンを備える。背面のカメラ部は突起がなく、フラットな仕上げ
右側面は電源キーのみを備える。やや大きめのボディだが、持ちやすく、扱いやすい

 本体前面には約6.2インチフルHD+(2160×1060ドット)対応のFullVision液晶ディスプレイを搭載する。ディスプレイの左右だけでなく、上下のベゼル(額縁)もスリムに仕上げられており、最近の他社製端末のようなノッチ(切り欠き)もなく、クセのないスタンダードな画面となっている。縦横比は18:9で、一般的な端末に比べ、画面が縦長になるが、縦に持ったときはWebページやSNSなどが見やすく、横向きに持ったときは映像コンテンツなども視聴しやすい。液晶パネルも色再現性に優れ、視認性も良好だ。

 本体背面には指紋センサーが備えられており、指紋認証によるセキュリティロックを欠けることができる。指紋センサーの用途は指紋認証のみで、シャッターキーなどに利用できないのはやや残念な印象も残る。指紋センサーの位置は自然で、タッチしやすい。

背面にカメラ、指紋センサーなどを備える。写真ではわかりにくいが、ヘアライン仕上げが施されている

 本体下部にはUSB Type-C外部接続端子、3.5mmイヤホンマイク端子に加え、前述の専用スタイラスペンが格納されている。スタイラスペンは外部接続端子側の隙間に爪の先をかけて、取り出すような印象で、プッシュ式で取り出せる多機種に比べると、ちょっと慣れが必要かもしれない。

下部には3.5mmイヤホンマイク端子、USB Type-C外部接続端子を備える。右側の四角い部分には専用スタイラスペンが格納されている

 また、ボディはIPX5/8対応の防水、IP6X対応の防塵、14項目のMIL規格(MIL-STD-810G)クリアによる耐衝撃をサポートする。この価格帯の商品でも防水防塵は増えてきているが、耐衝撃にも対応しているのは長く端末を使いたいユーザーにとってもうれしい要素だろう。

 ちなみに、日本仕様についてはおサイフケータイには対応しないものの、ワンセグのチューナーは搭載されており、いつでもテレビを視聴することができる。ワンセグについては受信感度を高めるため、同梱されるアンテナケーブルの接続が必要とされているが、一般的なステレオイヤホンを3.5mmイヤホンマイク端子に接続しても同様の効果が得られた。

 チップセットは米Qualcomm製SDM450、メモリーはRAM 3GBとROM 32GBを搭載し、最大400GBのmicroSDXCメモリーカードを装着することができる。SIMカードはnanoSIMカードを1枚のみ、装着する仕様となっている。通信方式と対応するバンドについてはLGエレクトロニクスのスペックを確認していただきたいが、今回、楽天モバイルのSIMカードで試したところ、音声通話はVoLTEでの接続が確認できた。au系ネットワークについてはUQmobileのSIMカードで試したところ、APNは個別に設定が必要だったものの、こちらも問題なく、利用できた。

NTTドコモ網のAPN一覧には楽天モバイルのほか、spモードも登録されている
au網のAPNはauの「LTE NET for DATA」、au網利用の楽天モバイルが登録済み
ソフトバンク網のAPNはひとつのみ。ソフトバンク、ワイモバイルのいずれのSIMカードを挿しても同じ

 バッテリーは3300mAhの大容量バッテリーを搭載し、USB Type-C外部接続端子での急速充電にも対応する。LG Q Stylusをモバイルバッテリーとして利用し、他の端末などに給電できる「おすそわけ充電」も搭載される。他のスマートフォンに給電するシーンはそれほど多くないかもしれないが、Bluetoothヘッドセットやウェアラブル端末など、スマートフォンの周辺機器を充電したいときなどには便利に使えそうだ。

 プラットフォームは出荷時にAndroid 8.1.0が搭載されており、ホーム画面のユーザーインターフェイスはこれまでのLGエレクトロニクス製端末の標準的なものが採用されている。ホーム画面はホームにすべてのアプリを表示するスタイル、ホームとアプリ一覧を別画面で表示するタイプ、「easyホーム」と呼ばれる大きな文字とアイコンで表示するスタイルの3つから選ぶことができる。これらの内、「ホーム/アプリ一覧」ではアプリ一覧のアイコンを表示するか、Android標準と同じように上方向のスワイプで表示できるかを設定できるようにしている。

ホーム画面は標準的な構成で、上方向にスワイプすると、アプリ一覧が表示される
ホーム選択画面で、出荷時設定の「ホーム/アプリ一覧」画面はアプリ一覧アイコン(ボタン)を表示するカスタマイズも可能
ホーム画面を「easyホーム」に設定。中段のアイコンをタップすると、よく使う連絡先などを登録可能。シニアをはじめ、スマートフォンの初心者に適したホーム

手書きもカメラも充実

 LG Q Stylusの特徴は本体下部に格納された専用スタイラスペンになる。前述のように、デジタルツールのペンと言えば、Galaxy NoteシリーズやSurfaceシリーズのペンが思い浮かべられるが、これらはいずれもワコムのペンタブレットに採用されている電磁誘導式をベースにしたもので、ペンそのものに電源(電池)が必要で、ディスプレイ側にも別のしくみが必要になる。

 これに対し、LG Q Stylusは一般的な静電容量式のタッチパネルに、スタイラスペンを組み合わせることで、手書き入力などを実現している。書き味としては電磁誘導式のタッチペンに一歩、譲るものの、ちょっとしたメモを取るには十分のレスポンスであり、実用性は十分に確保されている。

専用スタイラスペンを取り出すと、専用メニューと保存されているメモのサムネイルが表示される。
ペンの設定画面ではペン取り出し時の起動アプリ、ペンの置き忘れ防止などを設定可能。専用スタイラスペンの専用メニュー最下段の設定アイコンからも起動できる。

 電磁誘導式のタッチペンを採用したスマートフォンが基本的に付属のペンのみで手書き入力ができるのに対し、LG Q Stylusは専用スタイラスペンだけでなく、市販のタッチペンなどでも操作でき、いざとなれば、自らの爪先で手書き入力をすることもできる。専用スタイラスペンのペン先は細いため、手書き入力だけでなく、画面内のアイコンやメニューなどもタッチしやすい。たとえば、ソフトウェアキーボードで文字を入力するとき、指先が乾いていたりして、今ひとつうまくタッチできないような場合でも専用スタイラスペンでタッチすれば、確実に操作できるうえ、指紋などで画面も汚れにくい。

 LG Q Stylusでは本体下部から専用スタイラスペンを抜くと、ペン操作のメニューとして、「Pop Memo」「カラーリングブック」「スクラッチアート」「Qメモ+」「Pop Lens」のアプリ一覧で表示される。

書いたメモを付箋のようにホーム画面に貼っておける「Pop Memo」
塗り絵が楽しめる「カラーリングブック」。サンプルの絵も登録されている

 「Pop Memo」は付箋のようにホーム画面に貼り付けておくことができるメモで、備忘録やお買い物リストなどに便利そうだ。「カラーリングブック」はその名の通り、塗り絵アプリで、出荷時に設定されているイラストに色を塗って、絵を完成させていく。子どもといっしょに楽しむのに適したアプリだ。

 「スクラッチアート」は黒い背景にペンの色鮮やかな軌跡で描くツールで、メッセージアートなどを描くのにも使えそうだ。「Qメモ+」は写真やスクリーンショットなどに書き込んだり、デコレーションを加えられるツールで、幅広い用途に役立つ。

手書きメモやテキストなどを書いたり、画像に手書きで書き加えられる「Qメモ+」

 「Pop Lens」はウィンドウ表示の拡大鏡ツールで、Webページの一部を拡大したいときなどに便利だ。また、画面オフの状態から専用スタイラスペンを引き抜くと、「画面OFFメモ」を起動できる。とっさに何かをメモしなければならないときなどに便利な機能で、慣れてくると、この画面OFFメモの利用頻度がもっとも高くなりそうだ。

Webページなどの細かい部分をルーペのように拡大表示できる「Pop Lens」

 カメラについては、背面に1600万画素メインカメラ、前面のディスプレイの左上部分に800万画素サブカメラを搭載する。手ぶれ補正は動画と静止画の両方に対応し、HDR撮影、ボイスシャッターなどの機能も備える。

カメラアプリの画面。右側のFacebookのアイコンをタップすると、すぐに投稿が可能。静止画も動画もこの画面から撮影可能

 メインカメラの撮影モードとしては「食べ物」や「パノラマ」などが用意されているが、SNSなどに便利なモードとして、正方形の写真を撮影できる「スナップショット」、4枚の写真を1枚でまとめる「グリッドショット」、2枚の写真を上下に合成する「マッチショット」、他の写真の構図をガイドに撮影できる「ガイドショット」も用意されている。通常、これらの写真は別途、カメラアプリや画像編集アプリが必要だったが、標準でサポートされているのはSNSでの利用が多いユーザーにとって、うれしい点と言えそうだ。

暗いバーで撮影した写真。カクテルの色合いも十分だが、やや背後のランプに助けられた印象。

 また、メインカメラについては「Qレンズ」という機能も用意されており、ファインダー内に映し出された被写体に合致するものをネット上から検索したり、QRコードを認識させることができる。

 サブカメラについても背景のぼかし具合いを調整できる「ポートレート」、肌の明暗などを調整できる「美肌モード」が用意されている。SNSで背景に余計なものを写さないようにしたり、逆に旅先などで背景もしっかりと捉えた自分撮りをしたいときなどに有効な機能であり、実用性も高い。

手書き入力+αで便利に活用できる一台

 現在、国内外で販売されているスマートフォンは、基本的に画面に指先で触れて操作するスタイルが一般的だ。しかし、スマートフォンの祖先であるPDAや電子手帳が手書き入力やペン操作をサポートしていたように、専用スタイラスペンには手書き入力や確実な操作、細かい操作への対応など、指先でのタッチ操作とは違ったポテンシャルもある。

 LG Q Stylusはまさにそこに着眼したモデルであり、大画面と専用スタイラスペンによって、メモを取ることはもちろん、撮った写真に手書きでメッセージを書き加えたり、専用スタイラスペンで画面上のアイコンやキーボードを確実にタッチして操作ができ、誰でも手軽に「手書き入力+α」の環境を活用することができる。4万円前後と幅広いユーザーが手にしやすい価格に設定されていることもアドバンテージだ。海外での「親孝行スマホ」キャンペーンでの成功からもわかるように、シニア世代以上のユーザーにとってもフィットしやすいモデルと言えそうだ。

法林 岳之

1963年神奈川県出身。携帯電話・スマートフォンをはじめ、パソコン関連の解説記事や製品試用レポートなどを執筆。「できるゼロからはじめるiPhone XS/XS Max/XR超入門」、「できるゼロからはじめるiPad超入門 Apple Pencil&新iPad/Pro/mini 4対応」、「できるゼロからはじめるAndroidスマートフォン超入門 改訂3版」、「できるポケット docomo HUAWEI P20 Pro基本&活用ワザ 完全ガイド」、「できるゼロからはじめるAndroidタブレット超入門」、「できるWindows 10 改訂4版」(インプレス)など、著書も多数。ホームページはこちらImpress Watch Videoで「法林岳之のケータイしようぜ!!」も配信中。