高い水準で登場したAndroidの試用版ATOK

2010年12月3日 06:00
(太田亮三)

 Android端末における日本語入力環境は、SimejiをはじめとしたWnn系のバリエーションに支えられ、ユーザーが好みに応じて自由に選べる環境が整っている。最近では、Xperiaに搭載の「POBox Touch」が最新版でSimejiのマッシュルーム機能と連携するなど、プリインストールの日本語入力環境も柔軟な姿勢を見せている。

 そんな中、ジャストシステムから9月に開発が発表されたAndroid版ATOK「ATOK for Android」は、当初はiPhone向け製品の発表に紛れる形だったものの、先日試用版が無料で公開され、大きな注目を集めている。iPhone向けとして提供された「ATOK」は、OSの日本語入力を置き換えるというコンセプトは見送られ、メモアプリとして登場したが、Android版のATOKはあらゆる文字入力の場面で利用できる。

 予測変換の精度や、変換範囲の変更といった細かな使い勝手、入力方式や文字種を変更するソフトウェアキーの配置、変換候補エリアの大きさや表示拡大操作など、いずれも使い勝手が練られている印象で、文字入力中の“ちょっとめんどくさい操作”をなるべく解消しようする姿勢が窺える。

 筆者はひらがな・漢字の入力ではフリック入力を中心に使っているが、入力中はキーから離れた位置にガイドが表示され、さらにフリックの方向に合わせてガイド表示上でもマークが移動する点。入力が正しく行えているかどうかが非常に分かりやすい。ただ、フリックの感度への慣れは個人差が出る部分だと思われるので、カスタマイズできるとありがたいところ。現状では、次々に文字を入力するのにはやや反応速度が遅いと感じている。

 また、使っていて不便さが目立つのは、変換中の文字が青色で表示される点。文字入力フォームが白なら問題はないが、グレーやブラックを基調としたアプリでは、変換中の文字が非常に見づらくなってしまう。変換中の文字色をカスタマイズできるようにするか、フォントに少し影をつけて輪郭を強調させる、あるいは入力フォームの背景色に依存しない、独自の背景色を設定するなどしてほしいところだ。

フリック入力のガイド表示がお気に入り背景がグレーの入力フォームでは変換中の文字が見づらい。端末の液晶画面上ではこの画像よりもさらに見づらい印象だ

 将来的な対応として要望したいのは、ソーシャルIMEなどと呼ばれる変換の概念への対応だろうか。AI変換といった基本コンセプトを否定することにつながりかねず、プライバシーへの配慮などもあり、実現は難しいかもしれないが……。ソーシャルIME機能や、パソコン向けの「Google 日本語入力」で実現されている“みんながよく変換している候補”というのは一長一短なのだが、慣れてしまうと手放せなくなるのも事実だ。

 いろいろと細かな指摘になってしまったが、現在の「ATOK for Android」はあくまで試用版。気に入った点、改善してほしい点は積極的にフィードバックしていきたいところだ。スマートフォンのアプリらしく、機動的に、継続的にアップデートされることを望みたい。