DATAで見るケータイ業界
通信大手3社で2兆7500億円に達する設備投資額の推移から見える今後の行方
(2014/6/12 08:00)
携帯各社が競い合うように「つながりやすさ」をPRしているが、つながり具合を支えているのが携帯基地局をはじめとした通信インフラである。通信各社はインフラに対してどれほどの投資を行っているのだろうか。今回はモバイルだけでなく、光ファイバーなどの固定網も含めた通信サービス全体の設備投資状況について俯瞰し、その意味を考えていきたい。
日本の通信業界は、電力系事業者を除けば事実上NTT、KDDI、ソフトバンクという3つのグループに集約されている。各グループの設備投資のトレンドを端的にまとめると、低落傾向ながら1.5兆円規模の投資を続けるNTTグループ、5000億円を中心に前後しているKDDIグループ、増加傾向にあるソフトバンクグループとなる。2013年度の設備投資額は、3グループおよびそのほかの通信キャリアの投資額を合算すると2兆7500億円に達した。
今後の設備投資動向について、株式会社MCAでは総額として減少傾向になると予測している。しかし、設備投資の減少がイコール設備投資の手を緩めること、ではない点をまず指摘しておきたい。
もちろん、これまで各グループの設備投資を支えてきたモバイル、特にLTE基地局投資が一段落し、これまでの勢いが落ち着く点は間違いなく減少要因だろう。
しかし、設備投資の世界では、高価な専用ネットワーク機器ではなく安価な汎用機器を採用する動きが加速しており、投資コストが下がる流れとなっている。
また、携帯基地局でいえば次世代のLTE-Advancedに対する投資が2016年度から本格化する見通しだが、そこでの主役はスモールセルと呼ばれる小型タイプの基地局となる。
基地局というと巨大な鉄塔にアンテナを取り付ける大がかりなものをイメージする方も多いと思うが、小型タイプはビルの壁面や電柱にも取り付けられるほど小さな機器である。そのため建設コストが大幅に抑えられるのだ。機器が小さい分カバーエリアも狭くなるため、基地局の数自体は従来以上に多くしなければならないが、1局あたりの建設コストが大幅に下がるため、トータルでみると投資額が抑制できるのだ。
このように、単純な設備投資額や携帯基地局数の推移だけでは各社のインフラの実力が見えにくくなっている。数字の大きさに踊らされることなく、数字の中身をつぶさに検証することがより一層重要になると言えるだろう。