DATAで見るケータイ業界

家計における携帯電話への支出額、4~6月期も顕著な変動は見られず

 携帯キャリア各社の新料金プラン導入で国民負担が年間約4300億円軽減される、とする総務省の発表がいろいろな意味で話題となっている。

 総務省によれば、6月に実施した利用者意識調査(アンケート)をもとに試算した結果だというが、実際のところどうなのだろうか。そこで今回は別の観点から現状を整理してみよう。

家計調査からは、携帯電話への支出額に顕著な変動は見られず

 検証に用いるのは、総務省統計局の「家計調査」だ。日々の収入や支出を専用の家計簿に記録してもらう調査手法で、対象は全国約9000世帯となっている。

 8月6日に公表された2021年4~6月期の品目別支出金額(総世帯)によれば、携帯電話通信料への支出は2万6138円(前年同期比254円減)、携帯電話機は1272円(同403円増)で、あわせて2万7410円(同149円増)だった。

 この数値は3ヶ月間の合計のため、3で割って月間支出に直すと、それぞれ8713円、424円となる。

 同様に、四半期の調査結果を月間支出に計算し直した結果をグラフ化してみると、携帯電話の通信料はおおむね8000円台後半、電話機への支出も合わせると9000円前後で安定的に推移していることが分かった。

1世帯あたり年間7200円の負担減、果たして現実のものとなるか?

 日本の総世帯数は約5950万(21年1月1日現在、住民基本台帳ベース)なので、仮に総務省の試算通り年間4300億円の負担軽減が実現すれば、1世帯あたり年間7227円も支出が減る計算となる。

 もちろん、通信料金が安くなったことで回線数を増やす動きも想定されるため、国民負担減と家計支出は完全にリンクするものではないが、それでもある程度の減少トレンドが出現してもおかしくない。果たして、家計調査からも読み取れるほど、本当に国民負担は軽減するのだろうか。今後も定点観測を続けていきたい。

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。 主に「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」サービスを展開。 所属アナリストとの意見交換も無償で随時受け付けている。 https://www.mca.co.jp/company/analyst/analystinfo/