DATAで見るケータイ業界

グラフで比較するキャリア決算(1)

キャリア3社の契約純増数、各社の好不調トレンドに変化の兆し

 通信キャリア3社の決算が11月6日までに出揃った。今回から「グラフで比較するキャリア決算」と題し、主要数値ごとに3社の状況を比べてみたい。1回目は通信契約の純増数に焦点をあてる。

 2017年度第2四半期(2017年7~9月期)における各社の契約数増減は、KDDIが55.6万増、NTTドコモが24.7万増、ソフトバンクが13.9万増となった。

ソフトバンク、通信サービス全体での契約数が約2年ぶりに純増反転

 ソフトバンクの契約数(移動通信サービス全体)が四半期ベースで純増を記録したのは約2年ぶりのことだ。同社の契約数は、PHSや通信モジュール等の解約の影響を受け、2015年度第3四半期に減少に転じたあとは一貫して純減となっていた。

 主要回線が33.6万の大幅増を記録した主因は「Y!mobileが堅調な勢いを維持したほか、従来型携帯電話からの乗り換えを促進するキャンペーンが奏功」(同社広報)した点だという。実際、スマートフォンの累計契約数の純増(従来型携帯電話からの機種変更も含む)は80.8万件だったという。また通信モジュール等の下げ幅を2万減にとどめた点も純増に寄与している。

 なお、今年7月にサービスが開始された「おうちのでんわ」(9月末で10.5万契約)も主要回線に計上された点も要因の一つであることは指摘したい。

NTTドコモは増加ペースにブレーキ、KDDIは緩やかながら回復の兆し

 一方で契約数の伸び悩み傾向が鮮明なのがNTTドコモだ。これまで四半期ごとに最低でも50万は増加していたが、2四半期連続で20万程度の増加にとどまった。

 同社の契約数は、ドコモブランド(自社)、ドコモ網を用いたMVNO、モジュールの3本柱から構成され、最近はMVNOとモジュールに追い風が吹いて契約数全体を底上げしていた。しかしここにきて、競合他社のサブブランドのあおりもあってMVNO市場の勢いが弱くなっており、ドコモの純増ペースにブレーキがかかってしまった。

 KDDIは、全体の純増数が毎四半期50万以上で安定的に推移しているが、法人向けの通信モジュールなどが支えている構図に変化はない。個人向けの契約数動向を示す「パーソナル」の純増数は13.1万増で、前年同期比1.3万増だった。2016年度第3四半期に3.6万増まで落ち込んだが、緩やかながら回復の兆しが見えてきた。

「Apple Watch Series 3」は契約数に含まれるのか?

 契約数の動向で、気になるのが「Apple Watch Series 3」の取扱いだ。本モデルはセルラー機能が搭載されており、通信サービスを契約すれば通信・通話が可能になる。

 各社広報に確認したところ、通信サービス契約があった場合、全社とも契約数に計上されているという。

 通信契約数の動向を俯瞰する際は、通信モジュールや新型デバイスなどの動きにも考慮が必要と言えそうだ。

MCA 天野徳明

IT専門の調査・コンサルティング会社として、1993年に設立。「個別プロジェクトの受託」「調査レポート」「コンサルティング」などクオリティの高いサービス提供を行う。