DATAで見るケータイ業界
総務省ガイドラインが端末販売に与えた影響を検証する
2016年11月11日 10:48
総務省のガイドラインで禁止された「端末ゼロ円販売」。販売価格が上昇したことで端末の買い控えが起きたと言われているが、実際のところはどうなのだろうか。通信キャリア各社の決算発表数値をもとに明らかにしたい。
上のグラフは、2014年度以降における通信キャリア各社の携帯端末販売台数を四半期毎に取りまとめたものである。直近の2016年度第2四半期(7~9月期)は1191.6万台となった。第2四半期の数字は、ここ2年間は1100万台をわずかに上回る状況であり、今期は90万台ほど上振れしたことになる。上期(4~9月期)でみても、前年より130万台も販売数は増えている。
中でもNTTドコモの販売数量の伸びが著しい。2年前は579.2万台、昨年は627.6万台、そして今年は728.5万台と、年を追う毎に増加していることが分かる。しかも、端末販売の伸びを支えているのは「新規契約」だ。
下のグラフは、NTTドコモの端末販売台数を、他社からの乗り換え(MNP)を含む「新規契約」と、それ以外の「機種変更」と「契約変更」(FOMAからXiなど通信方式の変更を伴うもの)で分類したものだ。機種変更・契約変更が毎期350万台程度の一定水準を維持する一方、新規契約は概ね右肩上がりで推移している。ガイドラインが端末販売に与えた影響について、NTTドコモの吉澤社長は決算会見で「第2四半期はほとんど計画通りで、ものすごく影響を受けたということはない」と述べており、好調さは実際の販売台数からも裏付けられた。
他社の動向はどうだろうか。ソフトバンクは、NTTドコモのような顕著な伸びはないものの堅調に推移している。上期(4~9月期)の数字をみると、2年前が485.8万台、昨年が466.8万台だったのに対して今年は490.4万台。ここ3年で最も台数が多かったことになる。
一方で販売台数に陰りが見えるのがKDDIだ。2年前は243.0万台、昨年が230.0万台だったが、今年は208.0万台まで減少した。上期の数字でも傾向は同様で、KDDIの田中社長は決算発表で「端末が売れないという状況につながっている」と端的に語っている。
既に国内人口を上回る契約数に達している携帯市場は、顧客を“取った・取られた”のゼロサムゲームの状態に陥っている。そのため、好調な動きを示す会社があれば、そうでない会社も出てきてしまう。とはいえ、市場全体を俯瞰すると、販売数は増加傾向にある。端末ゼロ円販売の禁止によって携帯端末が売れなくなるのではないかと危惧されていたが、今のところは大きな影響は出ていないと見てよいだろう。