ケータイ用語の基礎知識

第674回:APN とは

モバイル回線のインターネット接続に必要

 「APN」とは、スマートフォンなど携帯電話の回線を使ってデータ通信を行う機器において、インターネットのようなネットワークへ接続する際、必要となる設定です。

 APNという名前は英語で“アクセスポイント名”を意味する「Access Point Name」の略です。その名の通り、この設定によって、携帯電話回線から他のネットワークへの接続窓口となるゲートウェイを指定します。

 一般的に、NTTドコモやauなど大手携帯電話会社のスマートフォンには、あらかじめこのAPNが設定されています。そのため自動的に、その事業者のネットワークを経由してインターネットに接続できます。つまり、ユーザー側は、特に設定することなく利用できる、ということが普通なのです。

AndroidのAPN設定画面。利用する事業者から指定されたAPNやユーザ名、パスワード、認証方法などを設定する
利用するAPNを一覧から選択する。スマートフォンとSIMによっては、自動的にこれらの選択肢が設定されることもある

 一方、最近「格安SIM」などで話題のMNVOから販売されているSIMカードを使う場合、あるいは、海外渡航時にSIMロックフリーの携帯電話へ現地通信会社のSIMカードを装着して利用する場合などでは、ユーザー自身の手でAPNを設定することがあります。スマートフォンと通信事業者の組み合わせによってはSIMを入れ替えた時点で自動的にAPNを設定してくれるケースもあります。

 ちなみに、海外事業者のSIMカードやMVNOのSIMカードを利用する場合、APNを設定しなくても、音声通話やSMSだけを利用することは可能です。APNは、携帯電話の電話回線を利用して、そこに接続されている他のネットワークへのゲートウェイを指定するためのものだからです。

 もし、そうしたSIMカードを使う場合、スマートフォンの画面上にアンテナピクトは表示されている(圏内と示されている)のに、「3G」「H」「4G」「LTE」といった表記がない場合は、インターネット接続ができない状態、つまりネットワークが確立されていない可能性があります。そうしたときには、APN設定に誤りがないかどうか、まず疑ってみるといいでしょう。APNは各事業者によって決まった文字列となっていて、ユーザー名やパスワードなどの項目が1文字でも間違えていると、ネットワーク接続ができません。

 海外での利用の場合、たとえばプリペイドのSIMカードを購入したにもかかわらず、自動的に設定されたAPNがポストペイド用のAPNだった、などということもあります。この場合はAPNを確認し、正しいAPNに設定しなおす必要があります。

Androidの場合、iPhoneの場合

 Androidスマートフォンの場合、APNを手動設定するには、「設定」の「その他」-[モバイルネットワーク]-「アクセスポイント名」というメニューから行うことができます。

 アクセスポイントの名前はユーザー自身がわかりやすいものを自由につけます。そしてAPN(例:○○○.jp)、ユーザー名(例:ktai@○○○)、パスワード、認証タイプなどを登録します。この際、「APN」「ユーザー名」「パスワード」「認証タイプ」あたりが重要な項目となります。なお、事業者によってはSIMカード内に登録されている情報で認証するので、ユーザー名、パスワードなどの入力が不要な場合もあります。

 また、スマートフォンに挿入されたSIMカードの情報を使って自動的に設定される値もあり、これらは変更してはいけません。そうした情報の1つであるMCCは、モバイル国コード(Mobile Country Code)、MNCはモバイルネットワークコード(Mobile Network Code)の略で、日本なら「440」、そしてNTTドコモの発行したSIMカード(W-CDMA、LTE対応)を用いるMVNOであれば「10」が設定されるはずです。

 一方、SIMロックフリー版のiPhoneの場合、「設定」メニューの「一般」-「ネットワーク」-「モバイルデータ通信ネットワーク」からAPN情報を変更できますし、構成プロファイルというファイルを使ってAPN情報を設定することもできます。

 構成プロファイルとは、APNやメールアカウント、パスコード、Wi-Fi接続の設定など各種のパラメーターを、iPhoneやiPadへ手軽に適用できる設定ファイルのことです。国内のMVNO事業者のいくつかは、自社のSIMカードをiPhoneで使うための構成プロファイルを配布しているので、これをダウンロード、インストールすると、簡単な操作でiPhoneをMVNO SIMを使ってネットワークに接続できるようになります。

 ただし、たとえばiPhoneを使って公開されているプロファイルを使用するとしても、インターネット上に置かれているこのファイルをダウンロードする必要がありますので、なんらかの手段であらかじめインターネット接続を確保しておく必要があります。たとえばWi-Fiでのインターネットアクセスなどの手段を確保しておくべきでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)