ケータイ用語の基礎知識

第675回:FLAC とは

ハイレゾ楽曲配信でよく使われるデータフォーマット

 「FLAC」は、MP3などと同じ楽曲ファイルのフォーマット(形式)の1つで、最もよく使われている楽曲ロスレス圧縮方式の1つです。

 FLACという名称は、英語で「フリーのロスレス音声コーデック」を意味する「Free Lossless Audio Codec」の略から来ています。その名の通り、ライセンスフリーで使うことができるコーデックで、フォーマットも公開されています。

 オープンソースの楽曲配信だけでなく、多くのハイレゾ楽曲データ配信サイトでも、このFLAC形式が採用されています。再生側もパソコンをはじめとした多くの再生アプリが出回っており、2014年現在では、スマートフォンでもこのFLAC形式の楽曲データを再生することができるようになっています。たとえば、auのスマートフォン「HTC J butterfly HTL23」や「isai LGL22」、NTTドコモの「G2 L-01F」「Xperia Z2 SO-03F」などでは、標準の楽曲プレーヤーで楽しめます。また、Android向けアプリでは「Poweramp」、iPhoneでは「FLAC Player」「ONKYO HF Player」などFLAC再生に対応したアプリをインストールすることで利用することもできます。

ロスレス、フリー、ストリーミング対応

 FLACは、その名の中に「ロスレス」という単語が含まれています。このことからもわかるとおり、MP3などどは違い、楽曲をFLAC形式へ変換する際、音質は劣化しません。MP3のような形式の場合、人の耳では、違いのわかりにくい部分を省略することでデータ量を減らしています。一方、FLACは、もとに戻せる方法(可逆圧縮)によってデータ量を減らしており、再生時には音質、つまり音の情報量を減らさないようになっているわけです。

 MP3ではできるだけ音質に影響を与えない部分を省く形になっていますが、この情報量の差が音質の差となって現れます。たとえば、CDの音楽をMP3に変換して聞くと、ドラムの音がシャリシャリというように聞こえることがあります。そのため、CDよりも高音質なハイレゾ楽曲配信サイトなどでは、FLAC形式のデータで配信することが一般的となっているのです。

 ちなみに、FLAC形式のデータは、サンプリング周波数/量子化ビットでそのクオリティがほぼわかるため、多くの場合、「○○kHz/△△ビット」というような表記がされます。MP3のようにビットレート(bps)で表記されることはあまりありません。

 なお、FLACは音楽ファイル用に作られた形式ですので、zipのようなファイル圧縮とは異なります。ストリーミングに利用できるよう、演算(コンピューターが処理する計算)は、一般的なデジタルデータの圧縮よりも計算量が少なくできるようになっています。それでいてエラースキップが可能なフォーマットとなっています。エラースキップとは、データが壊れていた場合その部分のみを判別しスキップして、正常な部分は正しいデータに変換することをいいます。これで、たとえばFLAC形式で音楽をストリーミングしている場合、途中、データがおかしくなっていても、その部分だけ音が飛んで、続きからは音が正しく鳴るようにできるわけです。また、FLACにはエラー耐性もあり、多少のエラーであれば、それを修復して正しい音を再生することも可能になっています。

 FLACには、MP3と同じく曲情報をタグとして埋め込めます。タグとは、楽曲データに付加される情報のことで、楽曲名、奏者、作曲者、録音日、アルバム名などを指します。タグには画像を使用することもでき、アルバムアートなどを埋め込むことも可能です。

 このほか、スキップや逆再生など好きな方向、速度でデータ再生しやすい構造になっています。これは、楽曲のプレイバック再生だけでなく、たとえば、楽曲データの編集アプリなどを作る場合には、便利な仕様と言えるでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)