ケータイ用語の基礎知識

メッシュWi-Fiとは

網の目ネットワークをWi-Fi機器で構築した「メッシュWi-Fi」

 メッシュWi-Fiとは、Wi-Fiで構成されたメッシュネットワークのことです。

 「メッシュ」とは「網の目」のこと。

 親機(メインルーター)と子機(サテライトルーター)で構成される3台以上の通信機器で構成され、網の目状に通信経路を張り巡らせるネットワーク構造のことを「メッシュネットワーク」といいます。

 このメッシュネットワークを、Wi-Fi機器で構成したのが「メッシュWi-Fi」です。

サテライトルーターを複数設置して電波を張り巡らせる

 自宅でWi-Fiを使ってインターネット接続する場合、インターネットに接続したルーターを設置して、Wi-Fiインターネット環境を構成します。パソコンやスマートフォンでルーターのSSIDやセキュリティコードを設定することで、ルーターと通信を行うことができるようになります。

 Wi-Fiの電波は、ルーターから送信されます。たとえば、11g規格の2.4GHz帯では、最大出力で見通し距離およそ20m近くまで、最大スピードでの伝達が「理論上では」可能です。

 しかし現実では、それよりも遅いスピードでしか通信できません。また、端末とルーターの間にコンクリート壁など障害物があると、この距離はさらにグンと短くなります。部屋でスマートフォンやパソコンを使いたかったのに、Wi-Fiの電波が弱く、仕方なく電波の強い位置を探し回った……というような経験をした人は多いでしょう。

 Wi-Fiで使う周波数の高い電波は直進性が高く、また、障害物にも弱いことで知られています。たとえば機器とルーターの間に、いくつかの壁があるだけで電波が届きにくくなり、このような場所では、距離が数十m、数mと近い距離でも不安定になってしまうことがあります。

 だからといって、これを解決するのに、各部屋にインターネット回線を引いて、それぞれに専用のルーターを設置するというのは、現実的ではありません。このような問題を解決する方法が、メッシュWi-Fiです。

 メッシュWi-Fiでは、Wi-Fiエリアを構成するために、インターネットへの接続する「メインルーター」と途中経路となる「サテライトルーター」合わせて3台以上の機器で網の目状に構成します。

 メインルーターとサテライトルーターは通信し、それぞれ分担して電波を出して、さまざまな必要な場所に電波を行き渡らせ、大きなWi-Fiネットワークを構築します。

 端末にとっては、このメインルーターとサテライトルーターたちで構築されたメッシュWi-Fiのエリアは、メインルーターが作ったエリアであろうがサテライトルーターのエリアであろうが、同じに見え、どちらにつながっていても同じように接続/通信できます。

 なお、サテライトルーターは多く設置すればするほど、電波の網の目は細かくなり、端末にとっては電波の強い場所が多くなります。

 また、遠くに配置すればするほど、電波の受信可能範囲を広げることができます。たとえば、2~3階建ての家の場合、1階のリビングにメインルーターを置き、2~3階にそれぞれサテライトルーターを設置すれば2~3階のサテライトルーターの近くで、1階のリビングにいるのと同じように利用できます。また、2階の中で電波の通りにくい場所があれば、2階の中でサテライトルーターを増設すれば電波環境が改善します。

従来のWi-Fi中継機との違いは

 以前から「Wi-Fi中継機」という、Wi-Fiアクセスポイントの電波を中継して遠くへ飛ばすための機械は存在していました。しかし、これはあくまで親機の電波を中継して届くエリアを広げるもので、メッシュWi-Fiのサテライトルーターとは異なります。

 まず、端末が親機→中継機のエリア内へ移動したときの使い勝手が違います。

 Wi-Fi中継機の場合、親機と中継機のネットワークは「違うネットワーク」という構造のため、エリアをまたいで移動した場合、近い場所に電波の強い中継機があるのに、遠い親機の電波をつかんだままでつながりにくいといったことが起こりえます。この場合、快適に使うには、手動でネットワーク接続の切り替えをする必要があります。

 一方、これに対してメッシュWi-Fiでは、それ自体がメインルーターとサテライトルーター含めて「ひとつのネットワークエリア」となっています。このため、たとえばメインルーターの電波が強いところからサテライトルーターの電波が強い場所で移動した場合、ローミングでサテライトルーターの方に接続が自動的に切り替えられるので、中継機のような煩わしさはありません。

 また、中継器とメッシュWi-Fiを比べると、「混雑時の負荷を避けられる」というメリットもあります。

 中継器の場合は、たくさんの機器を接続すると、メインルーターに負荷がかかって速度が低下します。一方、メッシュWi-Fiなら「最も電波や通信の状態が良いサテライトルーター」を自動で検出して接続するので、メインルーターに負荷が集中することがありません。結果として、安定した通信を実現できます。

メーカーの違う機器同士の互換性はなし

 メッシュWi-Fiの規格としては公式なものとして「IEEE 802.11s」が定められていますが、製品としては、これを採用しているのは「Google Nest Wifi」くらいしかありません。

 システム的には、米クアルコム(Qualcomm)の「Wi-Fi SON」を採用しているメーカーが多いですが(BUFFALO、TP-LINKなど)、このOEMパートナー同士は互換性を持っていません。

 そのため「メッシュWi-Fi対応」を謳っているルーターでも、メーカーの違う製品同士で互換性はないと考えた方がいいでしょう。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)