ケータイ用語の基礎知識

第890回:Z-Wave とは

世界で使われる、スマートホーム用の無線規格

 「Z-Wave」は、デンマークの企業だったZensysによって開発されたIoT用の無線通信規格です。Zensys社は現在、米国Silicon Labs社の一部門です。

 Z-Wave対応製品は、欧州や米国を中心に、防犯センサーや家電コントロールなど、スマートホームシステムの用途で利用されています。

 日本ではKDDIがIoTスマートホームサービス「au HOME」で、Z-Wave対応製品を提供しています。「au HOME」では、IoTデバイスを組み合わせることで、自宅のドアの開閉を感知してスマートフォンに知らせたり、帰宅や外出に合わせて家電をON/OFFしたりできるサービスです。

低電力・長時間なIoT向け規格

 Z-Waveは、スマートホームやホームオートメーションに代表されるような、低電力・長時間運用を求められるデバイスに向けた通信技術として、2003年、最初のバージョンが開発されました。

 2005年には、Z-Waveの普及や、標準化、相互運用性の検証といった活動を行うコンソーシアム「Z-Wave Alliance」が結成されました。

 2019年1月現在、Z-Wave AllianceにはSILCON LABS、ファーウェイ、LG U+、NORTEK、ADT、ASSA ABLOY、NEXIA、JASCO、Leedarson Lighting、SmartThingsという主要10社をはじめ、フルメンバーやアフィリエイトメンバー、あわせて700社以上が加盟しています。こうしたことからも、Z-Waveはスマートホーム向けとして、有力なメッシュ型ネットワーク技術と言えます。

 Z-Waveの特徴は、オープンな規格であること、その物理規格が国際的な技術標準として国際電気通信連合(ITU)からも認められていることが挙げられます(規格番号『G.9959』)。

 Z-Wave Allianceが相互運用性の検証を行っていることや、国際標準になっていたりすることもあって、対象国向けに作られた製品同士であればメーカーが違っていても、Z-Wave対応製品同士はまず確実に繋がるでしょう。

日本では920MHz帯を使用

 通信する際には、いわゆるサブGHz帯、つまり1GHzを下回る周波数帯で、テレメーターやテレコントロール向けとなっている帯域を使うことになっています。

 周波数の低いサブGHz帯の電波は、2.4GHzに比べると、障害物があっても回り込んで遠くまで届きやすい性質を持っています。

 ただし弱点もいくつかあります。たとえば、サブGHz帯のテレコントロール向け帯域は、国によって少しずつ異なります。米国では915MHz、日本では920MHz、欧州各国では868MHz帯となっているのです。外国で発売された機器は、改修しなければ、あるいは最初から多地域対応でなければ、日本では使えないということになります。そうした中で、Z-Waveは、例外的と言えるほど、よく普及したサブGHzの通信規格であると言えるでしょう。

 メッシュネットワークを手軽に構築できることもZ-Waveの特長のひとつで、各機器間での通信は30m程度です。機器同士がリレー状に通信を中継することで、4回ホップ、150m四方まで通信範囲を拡げられます。

 仕様として、ネットワーク中の機器を増やすことは簡単にでき、最大232個まで増やせます。それも電池駆動の低電力装置でよいのですから、非常に楽です。

 おまけに、Z-Waveはレピーターなども安く販売されています。メッシュネットワークを簡単に構築できますから、Wi-Fiのようにアクセスポイントの取り回しに苦労することはあまりない仕組みで、ホームIoTとしては現状、ぴったりな規格と言えそうです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)