ケータイ用語の基礎知識
第868回:クラウドSIMとは
2018年8月7日 06:00
「クラウドSIM」とは、ソフトウェアによって仮想化されたSIMカードの一種です。その名の通り、本来はプラスチックのSIMカードに入っている回線契約や、通信に必要な固有番号情報などの内容が、クラウドサーバー上にあり、必要に応じて端末にSIM情報をダウンロードし、使えるようにします。
これにより、端末が国や地域によってSIM情報を書き換えられるようになります。サービスを提供する事業者にとっては、回線契約情報などを複数のデバイスで使い回せるようになります。
通常のWi-Fiルーターやスマートフォンは、海外で使用する場合、一般的に高額な海外ローミング料を支払う必要があります。それを避けるためには、渡航先の国や地域で通信事業者からSIMカードを購入して利用することもよくあります。この場合、現地ユーザーと同じ金額感で通信できます。
クラウドSIM対応のWi-Fiルーターやスマートフォンでは、渡航先を知らせるための通信をするためだけのSIMカードが装着されています。ユーザーの滞在する国・地域を識別し、クラウドサーバーに位置情報を送るのです。
クラウド上の「SIMサーバー」は、各地での通信に必要なSIM情報を保有しています。ユーザーの手元にあるルーターなどのデバイスからのリクエストに応じて、加入者情報などを送り、Wi-Fiルーターやスマートフォンにコピーして、現地SIMの情報で通信できるようにします。
このため、クラウドSIM対応の機器では、どの国・地域に行っても、SIMカードを差し替えることなく現地の料金に近い形で通信できるわけです。
その金額は、まったく同じというわけにはいきませんが、それでも、国際ローミングと比べると安価な料金で通信網を使うことができるのです。
既に利用されているクラウドSIM
クラウドSIMを利用している機器は日本でも既に提供されています。
たとえばワイモバイルで扱われているモバイルWi-Fiルーター「Pocket WiFi 701UC」がuCloudlink社の技術を採用する、クラウドSIM対応機種です。海外渡航時は、1日90円で月7GBまで高速通信を利用できる「海外データ定額」を利用可能です。これなどは現地の事業者のプランとまでは行きませんがかなり安いデータプランと言えるでしょう。
MAYA SYSTEMも、同じくuCloudlink社の技術で、クラウドSIMのWi-Fiルーターやスマートフォンを手がけています。たとえばルーターの場合、世界100カ国以上でLTEで通信できるとされており、350MB、500MB、1GBといった容量で利用可能です。