石川温の「スマホ業界 Watch」
CESでクアルコム「Snapdragon」が存在感を発揮するスマホ以外の分野とは
2024年1月12日 09:20
今年もアメリカ・ラスベガスで世界最大級のテクノロジー展示会「CES 2024」が開催されている。5年以上前にはスマートフォン関連の展示もあったが、ここ最近は会場内で見つけ出すのもかなり困難な状況にある。
サムスン電子の新製品となる「Galaxy」も来週、サンノゼで発表会を開くとあって、CESでのプレスカンファレンスでは一切、触れられなかった。
スマートフォン関連の展示がないにも関わらず、存在感を発揮しているのがクアルコムだ。スマートフォン以外の製品に着実に影響力を広げているのだ。
いま、クアルコムがかなり注力しているのが自動車だ。EVのみならず、コネクテッドカーが増えるとなれば、当然、セルラー網に繋げる必要があり、クアルコムのモデムが必要になってくる。また、自動運転支援システムなどが普及すると、画像認識や経路推定などで高負荷な処理が必要となってくる。そこにクアルコムとしては自動車向けのプラットフォームを自動車メーカーに売り込んでいる状態だ。
今回、ソニー・ホンダモビリティが発表した電気自動車「AFEELA」アップデート版でのプレゼンでは、Snapdragon Ride Socが2つ、Snapdragon Ride AI Accelerator SoCが2つの計4つが搭載され、自動運転や自動運転支援システムに使われると明らかにされた。
もともとAFEELAは当初の段階から800TOPSの処理性能を持つと公表されていたが、実は200TOPSのSnapdragon Ride Socなどを4つ、組み合わせることで800TOPSを実現していたというわけだ。
川西社長は「既存の自動車メーカーがあまりやっていないことにチャレンジしていきたい」と語っており、今後、AFEELAが成功すれば、他のメーカーでもSnapdragonを積極的に採用していくという流れができてくるかも知れない。
ロボットにも搭載
一方、ロボットの世界にもクアルコムが進出している。
日本の企業であるプリファードロボティクスは昨年5月に自律移動ロボット「カチャカ」を発売。家やレストラン、歯科医院などで、ワゴンなどを運ぶロボットとして売り出している。
20kgのものを運べるため、料理や治療に使うための道具なども自動でスイスイ運んでくれるというわけだ。
ロボットには前後にカメラ、さらにはLiDARやToFセンサーが搭載され、室内を認識しているが、その処理に対して「SDM845(Snapdragon 845)」が使われているのだ。
プリファードロボティクスとしては、今後、カチャカをLLM(大規模言語モデル)に対応させ、今年の春ごろまでには何かしら製品化したいということであった。
では、こうしたものを運んでくれるロボットがLLMに対応するとどうなるのか。
たとえば、いま、ファミリーレストランでは猫を模した運搬ロボットが活躍しているが、テーブルに食事を持ってきた際、お客さんがテーブル番号や完了などのボタンをタッチしないと、ロボットは帰ってはいかない。しかし、LLMによる処理が可能となればお客さんが「バイバイ」とか「料理はもう取ったよ」といった、さまざまな言葉をかけるだけで帰ってくれるようになるという。
また、家の中では「おなか空いた」とカチャカに声をかければ、ロボットが「ユーザーは何か食べたがっているのだな」と判断し、お菓子などを持ってきてくれるようになる。
SDM845は数年前のSoCであるため、LLMを処理するのはやや物足りない感もあるが、新たなSoCにアップデートしたり、もしくはクラウドと連携したりするなどして実現していく方向を模索するようだ。
今回、CESではAI処理に対応したスマートフォンなどは発表されなかったが、2024年、確実に、Snapdragon 8 Gen3(2023年10月発表のスマホ向けの最新チップセット)を用いた、オンデバイスで処理を行うスマートフォンが登場するのは間違いないだろう。
今後、AIがスマートフォンのみならず、クルマやロボットに搭載されていく中、Snapdoragonの存在感はますます大きくなっていきそうだ。